ニュースでたまに見かける新幹線の「運転見合わせ」。線路の途中で停まっている新幹線の空撮などを見ながら「中にいる人は大変だなあ」と思っていたのですが、つい先日まさにその中の人になってしまいました。
2025年6月の取材帰り、東北新幹線の運転見合わせに遭遇。那須塩原駅から東京駅まで本来なら約1時間10分で到着するところ、約6時間にわたって乗車することになりました。
車内で起こっていたこと、運転再開までの流れ、また特に夏の暑い時期に絶対に気をつけたいことなど、実際に乗り合わせたからこそわかったことをご紹介します。
【何が起こっていたの?】
取材帰りに私が乗った新幹線は12時3分発「なすの274号」。こちらは定刻通りに那須塩原駅に到着したのですが、乗り込んだあと「この先で回送列車が停まっているため運転を見合わせている、再開の目処は立っていない」とのアナウンスがありました。
待てど暮せど動かないどころか、何度も「運転再開の目処は立っていません」とくり返され、最終的には「在来線は動いているのでそちらをご利用になれるお客様は…」と乗り換えがうながされるように。
その後、この先の駅と駅の間で途中停車している新幹線「はやぶさ」の乗客を救済することが決まったとアナウンスがあり、ようやく動き出したのは2時間以上経ってからのことでした。
【皆の協力がすごすぎる】
停車している「はやぶさ」に乗車しているのは約700名。スムーズな移動のために、まずは「なすの」に乗っている乗客のうち、可能な人はできるだけ1番後ろの車両の座席へ移動して詰めて座ってほしいと発車前にアナウンスがありました。
それに従って、続々と移動する乗客たち。誘導するJR職員の方々もものすごく丁寧で、無事に車内の座席づめは完了。互いの協力あってこそのスムーズさに、日本人ってやっぱりすごいなあ、と思った瞬間です。
「なすの」はしばらく進んだのち「はやぶさ」の横に停車、1号車から渡し板をとおって乗客の方々がこちらへ移ってきました。おそらくニュースなどで最も可視化されていた場面です。
車内では、1両ごとに座れる人員を確認し、職員が順番に奥の車両へ誘導していました。少なくとも私が見ていた範囲では大きなトラブルもなかったですし、これだけの乗客を混乱なしに移動させる手際にシンプルに感銘を受けました。
こうして「なすの」は午後16時半すぎに宇都宮駅に到着し、「はやぶさ」の乗客はここで降車。その先も「なすの」は各駅で一時停車をくり返しつつ、東京駅に着いたのは18時半でした。
【車内での過ごし方】
ここからは完全に個人の考えになりますのでご参考までに。先述のとおり、12時に新幹線に乗り込み、東京駅に到着したのは18時半。この間、軽食や飲み物の支給などは一切ありませんでした。
私の乗った新幹線は駅で停車していたので、動き出すまでのあいだに自販機へ飲み物を買いに行く時間はありました。ただ乗っている車両近くに売店はなかったので(そもそも那須塩原駅のホームにないのかも?)食べ物の調達はできず。手荷物にあったお菓子で空腹を紛らわせました。
またこの日は気温も6月とは思えないほど高くなっていたのですが、新幹線内は空調が効いているのが幸い。それでもじんわりと暑かったので、少なくとも水分が確保できたのは良かったです。
なお宇都宮駅のホームには売店があったようで、通路を挟んで隣にいた会社員グループの皆さんがおつまみやビールを買ってきて盛り上がっていました(笑)。ここまで来たら楽しむ方向にシフトしよう、という開き直りもたしかに気を紛らわせるために必要かも。
ちなみに在来線に乗り換えたほうが良かったか?と言われると、個人的にはノー。乗りなれない在来線で3時間以上、座れるかもわからないのに旅帰りの荷物を持って真夏に移動するのはかなりキツそう。ただ目的地までの距離や荷物の多さなど、状況によっては全然アリだと思います。
正直6時間は相当長かったですしかなり疲弊しましたが、座りっぱなしを避けるためにも時折トイレへ立ったり、ホームへ降りて飲み物を買ったりするだけでも気分転換になっていました。お手洗いや電源もちゃんと使えて、こうした「運転見合わせ」の類の中ではだいぶ快適だったほうかもしれません。
【予測も予防もできないけれど】
これが平日の日中ではなく、週末や夏休みだったらもっと大事になっていたと思います。暑さも本格化してきていて、混雑している車中でもし何時間も待つことになったら……想像するだけでも、今回はまだマシだったんだと実感するくらい。かといって、こうしたトラブルの予測は不可能です。
その上で備えられることがあるとしたら「夏場の移動は水分や塩分補給できるものを携帯しておく」こと、同様のケースに遭遇したら「チャンスがあれば迷わず買い足す」ことでしょうか。私は途中停車したタイミングで何度もペットボトルの飲み物を買い足しました。飲み切る前でも、です。
特に小さなお子さまが一緒だと、突然のどが渇いたり、お腹が空いたりという訴えがあるかもしれません。大人でさえ疲れる状況下で、我慢は難しいです。
予定の変更、移動経路の確認、旅先や仕事先への連絡、スマホの充電……いざというときの心配事はつきませんが、特に夏場に1番気をつけるべきは、体に異変がないように過ごすことだと思います。楽しい夏のおでかけ前に、持っていける最低限の備えは何か、ぜひ検討してみてくださいね。
執筆・撮影:森本マリ
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