【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。
今回ピックアップするのは、ディズニー&ピクサー最新作『星つなぎのエリオ』(2025年8月1日公開)です。
では、物語から。
【物語】
大好きな両親を亡くしおばさんの家で暮らしているエリオは、好きなことに真っ直ぐで前向きな男の子。ですが、周囲に理解されず、友だちもできず、ひとりぼっちです。
でもそんな彼が心の支えにしているのは空に輝く星! 星々の世界に自分の居場所があると信じているのです。
宇宙と交信したい、迎えに来て欲しいと輝く星空にお願いしていたら、なんとエリオは星の代表が集うコミュニバースに招かれ……?
【孤独だけど超元気な主人公がよき】
大ヒットしたディズニー&ピクサー映画『リメンバー・ミー』のスタッフが新たに作り上げたのは、孤独な男の子とエイリアンの友情物語。とにかくエリオのキャラがよかったです。
彼の魅力は孤独でもクサらず、自分の居場所を求めて行動に移すところ。宇宙との交信を求めるメッセージを砂浜に描き、その中に大の字になって「僕に気づいて~」と夜空に向かって大アピールするんですよ。
大人でさえ誰かに気づいてほしい、と思ってもなかなか行動できないことってあるけれど、エリオはガンガン行きます。孤独なのに超ポジティブなんです!
【エイリアン少年の声・佐藤大空さん】
エリオと仲よくなるのはエイリアンの少年・グロードン。実はグロードンの見た目が賛否両論で……。たしかに肌がちょっとヌルっとしていて、口を開くとネバネバしていて、体型がイモムシみたいなので、最初は少しギョッとしました。
でもそんなグロードンのルックスの弱点を補っているのが日本語吹替版で声を担当した子役・佐藤大空(たすく)さん! 声変わり前の少年ボイスでグロードンのやさしい性格を表現しているのです。滑舌がちょっぴり危なっかしいところもご愛嬌って感じ。
エリオと仲よくなれたことが嬉しくてしかたのないグロードンは、エリオの風変わりなところをおもしろがってくれて、エリオが何を言っても受け止めてくれる本当にいい子なんです。ふたりの友情が育まれていくストーリーは本当に心がポッカポカになります。
【松山ケンイチの底力、野呂佳代の巧さ】
本作の日本語版の声優たちはUSオーディションの厳しい審査を突破したメンバーゆえに、全員キャラにピッタリ。
主役のエリオを演じた川原瑛都さんもグロードン役の佐藤さんに負けない孤独だけど前向きなエリオを絶妙な芝居で披露。今や名バイプレイヤーとして売れっ子の俳優・野呂佳代さんはエリオを助けるコンピューターのウゥゥゥゥ。言われないと野呂さんだとわからないくらいなりきっていました。
そしてラスボス・グライゴンを演じた松山ケンイチさんはやっぱりすごかった。以前、『怪盗グルーのミニオン大脱走』(2017)の日本語版で、悪役バルタザール・ブラッドを演じたときも完全に松山ケンイチを消していて素晴らしかったのですが、今回もいい! 悪の権化としての恐ろしさから一転、最後に見せる新たな一面には胸アツになりました。
ちなみにコミュニバースのメンバーで平和を愛するオーヴァの声を担当するのは渡辺直美さん。USオリジナルの作品と日本語版の両方でオーヴァを演じています。
【ストーリーがある作品を思い出す…?】
とても楽しく見ることができたのですが、難を言えばストーリーと設定に『リロ&ステッチ』を思い出すんです。主人公が風変わりで友だちができないけどエイリアンと友情を深める展開、両親がいないという設定など……。スティッチはヤンチャですが、グロードンはやさしさの塊というキャラで正反対。
そして舞台がハワイと宇宙という違いが映画に変化をもたらせていますが、あまりに似ていて私は少し気になりました。
とはいえ、エリオが宇宙へ行ってからのキラキラと輝く美しい映像は見応えありますし、「エリオは宇宙へ行ったままなのか、地球に戻ってくるのか?」というラストに向けての物語もぐいぐい引っ張ってくれます。
エリオが宇宙冒険を経て成長をしていく姿、ぜひ劇場で見てくださいね!
執筆:斎藤 香(c)pouch
Photo:(C)2025 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
『星つなぎのエリオ』
2025年8月1日(金)より、全国ロードショー
監督:マデリン・シャラフィアン、エイドリアン・モリーナ
日本版声優:川原瑛都(エリオ)、清野菜名(オルガ)、佐藤大空(グロードン)、松山ケンイチ(グライゴン)、野呂佳代(ウゥゥゥゥ)、渡辺直美(オーヴァ)、マユリカ・中谷(メルマック)、関智一(ヘリックス)、沢城みゆき(クエスタ)、安原義人(テグメン)、子安武人(ユニバーサル・ユーザー・マニュアル) ほか
制作:メアリー・アリス・ドラム
製作総指揮:ピート・ドクター
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン ©2025 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
日本版エンドソング:「リボン」 Performed by BUMP OF CHICKEN
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