※本稿は、菅澤孝平『親の過干渉こそ最強の大学受験対策である。』(日刊現代)の一部を再編集したものです。
■親世代とは大きく変わった「大学のレベル感」
数十年前は、高学歴といえば国公立は旧帝国大学、つまり東京大学・京都大学・名古屋大学・東北大学・北海道大学・大阪大学・九州大学、私立は早慶、つまり早稲田大学と慶應義塾大学と決まっていました。
しかし、現在のレベル感は当時から変わっているところがあります。
大きく変わっているのは私立大学です。
といっても、早稲田大学なら政治経済学部、中央大学は法学部と、大学の中での花形となる学部は変わりありません。
各大学内の学部の優劣が変わらないのは、社会的に意義ある賞を受賞した人、大きく活躍している人、そういった知名度のある人の出身大学および学部が変わらないためです。
歴史は揺らがないわけです。また、特に目立って新しい花形となるような学部もここ数十年では出現していません。
では何が変わったのかというと、学校の序列です。
例えば親世代が現役のころだと、早慶の次は「MARCH(マーチ)」でした。早慶の滑り止めとして、明治大学=M・青山学院大学=A・立教大学=R・中央大学=C・法政大学=Hを受けた人もたくさんいらっしゃるでしょう。
しかし、今ではMARCHという言葉は使われていません。これはすでに認知が広がりつつありますが、代わりに登場したのが「GMARCH(ジーマーチ)」という言葉。学習院大学=Gが加わり、新たに6大学が横並びで見られるようになったのです。
■早慶の次は、「GMARCH」→「SMART」へ
「早慶上智」という言葉もありましたが、今、上智大学はどちらかというとGMARCH寄り。上智大学は英語の入試形態が独特で受けにくく、外れていったのです。
そして、昨今評価が上がっているのが東京理科大学。偏差値は、20年前が最高55~57程度だったのに対して、2024年現在は最高62.5~64程度まで上がっています。
ここまで人気が高まった主たる要因は、化学・物理・生物学の分野で顕著な研究成果を上げてきた昨今の実績ゆえ。日経BPコンサルティングが発表した「大学ブランド・イメージ調査2020-2021」では14位にランクインし、大手企業への就職率は早慶に並ぶ勢いです。
また、GMARCHにも次のようにレベルに差が出ています。
○難易度上位グループ
明治大学、青山学院大学、立教大学
○難易度下位グループ
中央大学、法政大学、学習院大学
こうした背景から、昨今は「SMART(スマート)(上智大学・明治大学・青山学院大学・立教大学・東京理科大学)」という言葉も生まれました。
新しい言葉が全てというわけではありませんが、少なくとも当時の感覚で大学を判断するのは間違いであるのは事実。
■物理学科は「東京理科大学>慶應義塾大学」
専門ごとに序列が変わるようになったのも、ここ10年ほどで生じた大きな変化です。
その際たるものが、物理学科でしょう。なんと物理学科の偏差値は、慶應義塾大学よりも東京理科大学のほうが上なのです。
理由は、慶應義塾大学は総合大学であるため教養科目の割合が多く専門性が少し乏しいこと、学費が高いことがネックになっているため。そして慶應義塾大学には“慶應”というブランド力、つまり「ブランド就職」を狙う人も一定層集まるため、堅実に物理学を志したい人は東京理科大学を志望しがちといった背景もあります。
また医学部は、慶應義塾大学に続くのは東京慈恵会医科大学、順天堂大学です。なぜなら、GMARCHに医学部がないため。偏差値は、東京医科歯科大学が70、日本大学医学部が65。学部にこだわりのある子は、世の中でいういい大学ランキングとは別軸で捉え直さねばなりません。
■偏差値は高くないが「就職率は高い」大学
ちなみに、2000年代は「偏差値の高い大学=就職しやすい大学」でした。
しかし、2020年を過ぎたころから、創価大学や千葉工業大学など偏差値はそこまで高くないものの「就職率は高い」とアピールする大学がちらほら出てきて、今なお増加傾向にある印象。
国際基督教大学のような、グローバル化やリベラルアーツ教育に力を入れている学校も就職で有利に働くように。まさに独自の路線が功を奏したと言えます。
エリアとの相関もあるようで、実践女子大学は2014年に渋谷キャンパスが開設されて以降、学生の社会への関心が高まったために就職率が上がったとも言われています。
かなえたい未来が漠然とでもある子は、就職のことも考えた上で大学を選択しましょう。
そのためにもまずは、子どもがどんな道へ進みたいと思っているのか、どんなことに尖っている人間になりたいのか、腹を割って話せるようになる必要があります。
■「やりたいことが定まっていない」人は…
大学で学びたいことや将来の夢、興味のある学部が定まっている場合は、対象となる学部・学科の偏差値を踏まえてレベルを測ればいいのですが、困るのは「特にやりたいことも行きたいところもない」と言われたときでしょう。
そんなときは、せめて名前の通った大学に行かせたいと思うのが親心だろうと思います。
名がある大学に行ければどこでもいいのであれば、偏差値の低い学部・学科を選ぶのも手です。早稲田大学も政治経済学部となると70近い偏差値が必要ですが、人間科学部なら62.5程度、教育学部や理学科地球科学専修も62程度と比較的入りやすいと思います。
この発想は、受験校に広がりを持たせたいときにも有用かもしれません。一つレベルの高い大学に挑戦したいと思ったら、激戦にならなそうな学部・学科はどこかと偏差値を確認すると、意外と「上位」と言われる大学を狙えることがあります。参考にしてみてください。
また昨今、人気が上がっているリベラル系の学部を選ぶのもおすすめです。
慶應義塾大学のSFC(湘南藤沢キャンパス)を筆頭に、上智大学総合グローバル学部、早稲田大学国際教養学部などもありますし、同志社大学グローバル・リベラルアーツ副専攻のようにどの学部でも受けられるプログラムを用意する大学も出ています。
大学受験の段階で、何をしたいか決まっていなくても問題ありません。
まずは入学し大学生活を送りながら自分を見つめ、何を追究するか・どんな道に進むのがいいかを考えるのもアリでしょう。
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菅澤 孝平(すがさわ・こうへい)
シンゲキ代表取締役社長
千葉県鎌ケ谷市出身。高校時代に偏差値32を経験。担任の先生と二人三脚で受験勉強をし、明治大学に逆転合格。その時の経験をもとに、誰かの挑戦に「伴走」したいという思いから、明治大学政治経済学部在学中にオンライン塾事業を始める。2021年シンゲキを創業。著書に『3カ月で志望大学に合格できる鬼管理』(幻冬舎)がある。
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(シンゲキ代表取締役社長 菅澤 孝平)