■「朝イチ会議」が会社をダメにする
業務改善コンサルタントとして様々な企業に携わる中で、もっとも多く遭遇する非効率な習慣が「月曜朝イチ30分会議」です。これは単なる時間の無駄を超えて、社員のモチベーション管理において致命的な問題を引き起こしています。
毎日、あるいは毎週の進捗管理を朝イチに設定している会社は非常に多いのですが、これを好む社員はほとんどいません。朝という時間は本来、クリエイティブなことに集中できる貴重な時間帯です。その時間に、文字に起こした内容を読みながら口で報告するという、言ってしまえばルーチンワークを差し込むのは、1日のスタートとして非常に無駄なリソースの使い方になってしまいます。
ミーティングが必要であれば、昼過ぎの13時頃、ある程度からだも頭も慣れてきたタイミングで進捗確認を行うか、夕方の業務締めのタイミングで「今日はここまで進んだので、明日はこれをやります」という報告に変更することをお勧めしています。
実際にこの時間変更を実施した企業では、社員のモチベーションが明らかに向上しました。朝は基本的に眠くて疲れているので、みんなで集まって「今日の仕事はこれです」と発表しても、生き生きする人はあまりいません。昼の時間に集まることで、前向きな雑談が生まれたり、午前中に起きたことを共有したりと、生産的な会話ができるようになります。
■「アジェンダなし会議」という時間泥棒
もう一つよくある非効率な習慣が、社内で議題が発生したときに「とりあえず会議をしましょう」と提案する人が多いことです。
30分の打ち合わせでも、3人集めれば会社としては90分の工数を使っていることになります。
こうした会議の多くは、アジェンダ(議題)が明確でないまま始まります。「この話が振られたけど、鈴木さんはどう思いますか」といった曖昧な質問から入るミーティングは、まったく議論が進みません。
朝イチ会議がなぜやめられないかというと、主にマネジメントする側の都合が大きいと考えられます。朝にしっかり部下やメンバーの顔を見て、「これから仕事をします」と宣言してもらうという習慣に依存しているマネジメント層の安心材料として機能しているんです。
しかし、マネジメント側にとっては緊張感がない一方的な会議で、部下に指摘をしていると「仕事をしている感」も出ますから、やめにくい構造になっているのです。
■「ダメな会社」で目にする“3つの光景”
多くの企業を見てきた経験から、「この会社は厳しいかもしれない」と感じる特徴がいくつかあります。
第一印象として最も顕著なのが、挨拶がないことです。パソコンを見ながらボソボソと返事をしたり、気づいたら出社して座っていたりという状態です。特にチームリーダーや管理職がこれをやってしまうと、それが全体に伝播(でんぱ)してしまいます。IT系の会社では、業務の特性上、大きな声を出すような文化がないこともありますが、管理職レベルの人がお通夜のような雰囲気を作ってしまっているケースを何度も目にしました。
二つ目は、上層部がコソコソ話を見えるところでしていることです。
三つ目は基本的なことですが、デスクが汚いことです。メモ帳がいっぱい散らばっていたり、ボールペンが何本もいろんな方向を向いていたり、誰かからもらったお土産がずっと置いてあって賞味期限が切れているような状態です。
逆に、業績が良い会社や上手くいっている会社では、全体を通して整理整頓されていて、物が少ないという特徴があります。本当に小学校のときに習うような基本的なことですが、この本質は大人になっても変わりません。
タスクの糸に絡まってしまっている人の机は決まって汚く、逆に本当に優秀な人はほとんど仕事をせずに人に任せてしまうことができます。その一歩手前の「とにかく頑張る」ことでバリューを出そうとしている層が最も非効率になりやすいんです。
■挨拶のない職場に未来はない
ダメな会社の空気を変えるために、私が実際に行っているのは率先垂範です。コンサルタントなので専用のデスクはありませんが、必ず全員が揃ったタイミングで全員に見えるようにお借りしているデスクの周りを拭くようにしています。
また、必ず挨拶をして入ることを徹底しています。
新入社員の方が会議での発言回数が少なかったりすると、辞めてしまうかもしれないというセンサーが働きます。これには二つの可能性があって、一つはモチベーションの問題、もう一つは業務理解ができていないという問題です。
前者の場合は、その人のスキルより一回り大きなミッションを与えて、一緒にサポートしながら達成感を味わってもらいます。後者の場合は、現在の仕事について詳しく話し合う時間を設けます。
■「ランチ会」で社員のモチベーションは上がらない
最近の傾向として、パワハラを恐れてマネジメント層が部下に話しかけにくくなっているという問題があります。飲み会に誘いにくい、気軽に声をかけにくいといった声をよく聞きます。
確かにマネジメント層が部下に対して気を遣いすぎている場面は見受けられます。しかし、1対1の会議でたまに敬語とタメ口を織り交ぜることで、適度な距離感を保つことは可能です。ずっとタメ口だと空気が悪くなりますが、適度な使い分けで関係性を築くことができます。
重要なのは、まず基本的な業務理解とモチベーション向上をしっかりと図ることです。
■職場づくりは泥臭い
結局のところ、多くの企業で問題となるのは「足場が見えていない」ことです。コンサルティングの仕事は、キラキラした成功事例を見せる仕事だと思われがちですが、実際は皆がやりたがらない現状の洗い出しを行う、非常に泥臭い仕事です。
本当は見たくないところをあえて見せてあげることが、真の改善につながります。他社の成功事例を参考にするのは最後の段階です。まずは自社の現状を徹底的に把握し、そこから一歩ずつ改善していく。
月曜朝イチの30分会議をやめる、アジェンダのない会議をなくす、基本的な挨拶や整理整頓を徹底する。これらの基本的なことから始めることで、社員が逃げない会社を作ることができるのです。
----------
谷川 輝(たにかわ・ひかる)
業務改善コンサルタント
株式会社BitBiz代表。起業家だった父の影響もあり、1日の行動をすべて付箋に書き出すなど、幼少期から「サボ力」につながる思考・行動力を養う。大学卒業後は社労士法人で数百人規模の組織改善に携わり、上場企業の労務デューデリジェンス業務を経験。入社3年目にデジタル化の新規事業を立案し、労務デューデリをWEB上で完結させるシステムを独自に開発。
----------
(業務改善コンサルタント 谷川 輝 構成=ライター・いからしひろき)