結果を出す営業マンとダメな営業マンは何が違うのか。営業セミナー講師の乾哲也さんは「仕事のデキない営業マンは、商品のメリットを語ることや、顧客目線に立つことをセールストークの軸にしてしまっている。
結果が出せる一流の営業マンは、まったく別の観点からセールストークを組み立てている」という――。(第1回)
※本稿は、乾哲也『できる営業マンのすごい言語化 「なんとなく」を納得に変える』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■営業マンにおける「三流」とはなにか
本稿が目指すのはトップセールスに到達できる、言わば一流の営業マンです。
読者の中には、「えー、そんな。とてもとても」と思う方もいるかもしれません。それが謙遜でも、現在の自己評価でも、これからは一緒に一流を目指して行きましょう。この記事を読んでいる間だけでもかまいません。
「でもね」と私は、今、確信しています。読後のあなたが、本気で一流の営業マンを目指していることを。私は常々、「三流はね、営業の入り口なんですよ」とお伝えしています。言い方は悪いですが、新人も経歴数年の人も、ほとんどの営業マンは三流の中を横移動している状態です。
もちろん、誰もが現状に甘んじることなく、自身のレベルアップに励んでいることは間違いありません。
悩んでいても営業の場に踏み止まっている。その事実こそが、その証明です。けれども三流の壁は、なかなか突き破ることができません。なぜなら、何が三流かをほとんどの人が知らないからです。
そこで、まずどのような営業マンが「三流」なのか、そしてその天井を破ることができた「二流」とは何が異なるのかを見てみましょう。
■「メリットを話す」のが三流の特徴
三流の特徴は「商品やサービスのメリットを話す」です。
「え⁉」っと思ったかもしれません。実際、セミナーでこう話すと、「それの何がいけないの?」「何が足りないの?」と聞かれます。それが営業トークのすべてと考えている営業さんがたくさんいるからです。
そして、「よりくわしく話す」ことや、「より一生懸命に話す」ことが改善だと努力している人もいます。けれどもそれだけでは「三流の営業マン」のまま、変わることはありません。なぜなら結果として「まったく売れない」からです。

入社1年目の新人に多い間違いなのですが、その課題が何かを説明します。
三流が商品やサービスのメリットを話す理由は、商材の良さが伝わればより多くの人が購入してくれるという考えです。自分では信念と思っているかもしれませんが、これは大きな勘違いを犯してしまっています。
「お客さまのために」と熱心にトークを考えても、そこには商材と自分の視点しかないのです。つまり、自分本位の営業になっているのですね。「こんなに良い」と確信しているのも、「お客さまに知って欲しい」と願っているのも、自分から自分を見つめただけの自己中心的なものでしかないのです。
■二流は「顧客目線」で語りかける
では二流の特徴を見てみましょう。まず良い点です。経験も増え、それに照らし合わせて営業の教本などで勉強をしている人も多いので、さすがに自分本位からは脱却しています。けれども、この勉強に落とし穴があるのです。そこにはこう書いてあります。
・「主語をIからYOUに変えなさい」

・「顧客を中心に顧客主語で考えなさい」
学んだら即実践です。
お客さまに「○○さんだったら」「○○さんには」のトークを展開します。実はこれには「売れるタネ」がちゃんと仕込まれていて、一定の効果が期待できます。勉強した甲斐はあるのです。
営業のトークは、相手と対面して行われますから、いきなりモノやサービスの話を始めても会話は成立します。そのため、先の三流のトークでは、自分本位の熱意に加え、「この製品の良さは」と、商材が主体であったため、どんなに素晴らしい良さを伝えても、お客さまからすれば他人事になってしまうのです。
脳科学的に解明されていることですが、人は目の前の人が自分に向けた提案を話していても、自分の名前で「○○さん」と呼びかけられないと、その話を自分ごと化できないのです。
ですから「主語をYOUに」「顧客主語での思考」には、お客さまの注意関心を引き出す「売れるタネ」があります。
■「購買意欲」を高めなければ一流ではない
では、二流であっても営業としては合格なのかと言えば、「うーん」が付きますがギリギリ合格です。この「うーん」の理由は、次の点です。
・自分本位ではないものの相手本位の提案になっている。

・お客さまの「購買意欲」を高める効果は発揮されていない。

・お客さまの購入・契約を成立に至る勇気の背中を押しているわけではない。

たしかに「売れた」のですが、それは相手本位の結果です。お客さまの「たまたま」の人柄や気分、こちらからは不明な諸条件によるものかもしれません。そうした結果はくり返しませんし、リピートも望めず、自身の営業力を爆発的に伸ばすことはないでしょう。ゆえに二流なのです。
■「あの人から買ってよかった」という感動が重要
では、一流は何が違うのでしょうか?
もちろん、自分本位や相手本位とはもはや無縁です。一流は、常に効果本位で考えます。営業をビジネスとして行っているのです。効果本位の営業とは、次のことを可能にします。
・お客さまに対して効果的なトークを作ることができる。

・購入に至る決断を促すための「購買意欲」を高めることができる。
つまり、“すごい言語化”の型を理解し、お客さまの「購買意欲」を高めるトークを作り、実践すれば、誰もが「一流の営業」を目指すことができるのです。
スタート時点の「三流」にありがちな自分本位のトークで空振りの営業をすることはなくなります。
三流の壁も難なく突破できるでしょう。「二流」が陥りがちな、相手本位も実は相手に良かれと思ってのことです。
けれども、相手のことを考えるあまり「嫌われたくない」「むしろ好かれたい」がブレーキとなり、相手の購買意欲にトークが届きませんでした。効果本位は、この勘違いからの脱却も果たします。購買意欲は感情です。感情は自ら感じて動く、つまり感動によってのみ影響を受けます。
「一流の営業」とは、顧客に感動を与え購買意欲を高めることです。一流の仕事が、顧客から「あの人から買って良かった」と評価されるのは、購買意欲の高まりと決断に至る感動体験への賛辞なのです。

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乾 哲也(いぬい・てつや)

営業セミナー講師

1985年生まれ。大阪府出身。「購買意欲」の概念を取り入れた即決メソッドは、これまでに300社以上の企業研修、1,000人を超える営業職への個別コンサルティングに導入され、いずれも高い評価を得ている。著書に『できる営業マンのすごい言語化 「なんとなく」を納得に変える』(KADOKAWA)がある。
TikTok:@eigyou.inui

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(営業セミナー講師 乾 哲也)
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