※本稿は、伊藤由美『選んではいけない男、選んではいけない女 銀座のママの実践的「恋愛・結婚論」』(ワニブックスPLUS新書)の一部を再編集したものです。
■友人は「その人を映し出す鏡」
人の内面は、日常のちょっとした態度や立ち居振る舞いに現れます。
いくら言葉で取り繕っても、人前では隠していても、ふとしたときに本当の姿、本質、本性がにじみ出てくるものなんですね。とくに長い人生を共にすることになるパートナーを選ぶときは、後々「え、こんな人だったっけ?」とならないように、交際している間にお相手の「本当の姿」を知っておきたいもの。
ここでは私の経験も含めて、お相手の「本当の姿=本性」が見えてくるポイントをいくつか挙げてみましょう。
ひとつめのポイントは、「友人を見れば、その人がわかる」ということ。この方は信頼できる人なのかしら―。出会った方の“人となり”を見極めるポイントのひとつとして、私は「その方の友人はどんな人か」「どんな人と付き合っているか」も重要視しています。なぜなら、友人は「その人を映し出す鏡」だと思うからです。「類は友を呼ぶ」と言われるように、人は無意識のうちに「自分と同じタイプ」「自分とつり合うタイプ」と付き合おうとするもの。
ですから、結婚を考えているお相手のことをより深く知りたければ、まだ見ていない普段の素顔を知りたければ、友人関係に着目するのもひとつの手です。
■本性を知りたければ、友人を知るべし
クラブ由美で、中国古典が好きなお客さまからお聞きしたのですが、儒教の教えのなかにも、「其の人を知らざれば、其の友を見よ」「(その人をよく知りたければ、その人の友人を見なさい)」という言葉があるそうです。
例えば、友人がみな、やさしくて周囲に気遣いできるような人たちなら、お相手も同じような性格の可能性が高い。逆に「非常識」「モラルがない」「品がない」「不誠実」といった「え、こんな人と友だちなの」と引いてしまうようなタイプばかりなら、お相手も本質的には彼らと似た者同士の可能性がある――。
もちろん、それでお相手の本性をすべて把握できるわけではありません。なかには環境や状況などのせいで友だちが選べず、仕方なく付き合っているケースもあるかもしれません。なので「必ずそうだ」とは言い切れないのですが、友人関係からはそうした推測もできるということです。
結婚を考え始めたら、一度、お相手の友だちを紹介してもらうことをオススメします。「本性を見極めるための身辺調査」などと肩ひじを張らなくても大丈夫。違った角度から「自分には見せていない姿」に触れることは、それだけでもお相手をより深く知る機会になるのですから。
■食事中は人の本性が現れやすい
「食」は人間の3大欲求のひとつ。
いっしょに食事をしてわかるのは「食べものの好き嫌い」だけではありません。例えば「食べ方」のクセ。実は「相手の食べ方が許せない」という理由で夫婦間がギクシャクする、トラブルになるケースが思った以上に多いのです。
クチャクチャと音を立てて食べる(クチャラーと言うそうですね)とか。箸の持ち方が劇的におかしいとか。肘をついたまま食べるとか口に食べものを入れたまま話すとか。お皿を置いたまま、口を近づけて食べる(犬食い)とか。頬が膨らむほど口いっぱいにほおばって食べる(リス食い)とか。
お相手のこうした食べ方を「全然平気」という人ならいいのですが、気になってしまう人だと、「この先、毎日この食べ方を見ることになるのか――」となって、結婚を考え直す原因にもなりかねません。
さらに「お里が知れる」というように「食べ方」には親の躾しつけや家庭環境がうかがい知れるという側面もあります。お相手の行儀の悪い食べ方は、「どんな教育をされてきたの?」「ご両親はどんな人?」という不安の元凶になることもあるのです。
必ずしも「食べ方がなっていない、イコール、躾に問題あり」ではないのですが、そう感じてしまっても仕方のないことなのですね。
■平気で料理に文句をつける人はNG
また、飲食店で自分だけ先にメニューを見て注文を決め、その後で「どうする?」とこちらにメニューを渡してくる。自分はもう決めてしまったものだから、こちらには「まだ? もう決まった?」と急かしてくる――。2人でシェアしようと思って注文した料理を、こちらに何も聞かず、ひとりで全部平らげてしまう。
細かいことですが、どちらも自分本位な人に見られる食事での振る舞いのひとつです。こういうところにも、人となりは見え隠れするものなのです。
ほかにも、お店で「うわ、マズッ」「○○のほうが美味しいよ」「この値段でこの味はないでしょ」「このくらいの料理ならオレのほうが上手くつくれる」――と、文句ばかり言うタイプも、いっしょに食事をする相手としては考えもの。
味にうるさいのはいいけれど、文句ばかり並べ立てられたら、料理はマズくなるし、食事の時間も楽しくなくなってしまいますよね。結婚したら、お相手と毎日向かい合って食事をすることになります。食卓での会話は夫婦のコミュニケーションの大事な機会になるのです。
2人だけで食事に行くことで、そうした会話での間合いやテンポが合うか、ふと沈黙が訪れたらどうなるか、といった相性を知ることもできるでしょう。いっしょに食卓を囲む時間を楽しめるか、ストレスを感じてしまうか。
もちろん、お相手だけの話ではありません。逆もしかりで、こちらの食べ方やマナーをお相手が不快に感じていることだって十分にあり得ます。お相手の食べ方を気にするだけでなく、同時に自身の食事マナーも見直す機会にするといいでしょう。
■「運転すると性格が変わる」は間違い
車の運転も、その人の性格が如実に現れる“リトマス試験紙”のひとつです。
この考え方は万国共通で、欧米には「A man drives as he lives.(運転はその人の人柄)」という交通標語があるのだとか。よく「あの人、普段は温厚なのに、ハンドルを握るとガラリと性格が変わる」などと言いますが、それは間違い。
正しくは、運転すると「性格が変わる」のではなく「その人の本性が現れる」のです。
車のなかは非常にプライベート感が高い、いわば「自分の部屋」に近い空間。だからこそ、そこでの振る舞いは“裸の自分”が出てしまうのですね。人は誰しも、表舞台では気取っていても、猫をかぶっていても、自分の部屋にいるときは“本当の姿”になるものです。
■ヤバい運転は“100年の恋”も冷ます
順調に交際していたのに、ドライブデートをしてから彼氏の性格に不安を抱き、結局お別れしてしまった女性を知っています。
ドライブ中、前の車が少しでもモタつくと、イライラして「何やってんだよ、ノロいな」「早く出ろよ、バカ」などと汚い言葉で罵ったり。ちょっとした渋滞でも、すぐに不機嫌になったり。「怖い」と言っても、やたらとスピードを出したり。信号では周囲の車を出し抜こうとばかり、アクセルをふかして急発進したり。急いでいないのに、無理な割り込みや追い越しを繰り返したり――。
助手席に私を乗せているのに、どうして安全運転してくれないのだろう。この人はハンドルを握ったら周囲のことなど見えなくなって、自分の感情をただひたすらむき出しにする人なんだ。そう思ったら、一気に興ざめし、100年の恋も冷めてしまったのだとか。
私に言わせれば「そういう人とは別れて正解」です。
■運転中の態度は、結婚後の態度でもある
運転マナーというのは、その人の「心の余裕」の現れです。
些細なことへのイラつきや無理な割り込み、煽るような運転態度などは、結局のところ心の余裕のなさから生まれるものなのです。とくに助手席に“大切な誰か”を乗せているときでも、自分本位で荒っぽい運転をするようなタイプは、その人を「大切に思っていない」と思われても仕方ありません。
また、周囲の車や歩行者に危険や不安を感じさせていることに気づかないのですから、圧倒的に「周囲の人への配慮や気配り」が欠如している人とも言えます。心に余裕もなく、自己中で、周囲に気配りもできない。車の運転で見えてきたパートナーの性格がこれでは、結婚しても先が思いやられるでしょう。
安全運転を心がけ、歩行者に配慮するという運転マナーの基本は、他者を尊重し、社会全体に安全をもたらすための「思いやり」と言えます。そして運転するときの振る舞いは、将来の結婚生活における「あなたへの態度」に通じると言っても過言ではないのです。
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伊藤 由美(いとう・ゆみ)
銀座「クラブ由美」オーナー
東京生まれの名古屋育ち。18歳で単身上京。1983年4月、23歳でオーナーママとして「クラブ由美」を開店。以来、“銀座の超一流クラブ”として政治家や財界人など名だたるVIPたちからの絶大な支持を得て現在に至る。「一般社団法人 銀座社交料飲協会」の常任理事を務める。
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(銀座「クラブ由美」オーナー 伊藤 由美)