※本稿は、伊藤由美『選んではいけない男、選んではいけない女 銀座のママの実践的「恋愛・結婚論」』(ワニブックスPLUS新書)の一部を再編集したものです。
■「妻への感謝」は人間力の証し
2025年、メジャーリーガーの大谷翔平選手が全米野球記者協会ニューヨーク支部主催の夕食会で、真美子夫人に対して「美しい妻(my beautiful wife)へ、いつもにそばにいて支えてくれてありがとう」と感謝のメッセージを動画で伝えたことが話題になりました。ご記憶されている方も多いかと思います。
クラブ由美のご常連のお客さまのなかに、某大手生命保険会社のトップ営業マンの方がいらっしゃいます。そのお客さまは元々、明るくて誠実で、仕事ができて、男性としての品がある“人間力”にあふれた魅力的な方なのですが、さらに素敵だと思った出来事があります。
お店で飲みながら、ふと奥様の話題になったときに、その方が「妻は僕にとって人生で最大の宝です」と素直に、堂々とおっしゃられたんですね。その言葉を聞いて、「ああ、素敵な方だな。奥様もお幸せだろうな」と微笑ましく、心がほんわかとあたたかくなったことを覚えています。
■妻を“ディスりがち”な男性が多いが…
日本の場合、男性が女性(とくに妻や母)に対して、本人に面と向かって褒めたり、公の場で感謝の気持ちを表したりすることは、あまりないかもしれません。とくに年配の男性ほどご自身の奥様のことを謙遜の意味もあって、「ウチの愚妻が」「ウチの山の神が」などと言うように思えます。
また、奥様のことが話題に上ると「ウチのは気が利かなくて」「ウチのは文句ばっかりで」「鬼のように怖くて」と、奥様のことをけなしたり、ディスったりする人も少なくありません。
たいがいは本心ではなく、ただ「人前で妻を褒めるなんて恥ずかしい」からと照れ隠しでそういう言い方になってしまうのでしょう(もちろん、心の底から愚痴っている人もいますが)。だからこそ、人前で胸を張って「妻は宝物」と言い切れる男性。照れずに堂々と「自分が仕事を頑張れるのは妻のおかげ」と言える男性って素敵ですよね。
そう言われれば、お相手だって嬉しいですし、幸せを感じ、パートナーへの思いもより一層強くなるでしょう。夫婦の絆も強くなります。
大谷選手がそうであるように、そういう男性は女性だけでなく男性にも慕われ、支持される人であることが多いもの。自分が妻や彼女に選んだ人は間違いのない人だった。自分を夫や彼氏に選んでくれた人は素晴らしい人だった。
人前で堂々とそう言える。その人への感謝を照れずに言葉にできる。これって円満で信頼し合える人間関係づくりにとって、すごく大事なことだと思うのです。
■自己肯定を爆上げさせた“褒めフレーズ”
ですからパートナー(結婚相手)には、自分のいいところをちゃんと認めて、素直に“褒めてくれる人”をオススメします。
こんな話があります。知り合いに、自分の真面目すぎる性格が嫌いという女性がいました。学生の頃からずっと「堅苦しい」「生真面目」「おもしろくない」などと言われ、それでも変えられない自分は「本当につまらない人間だ」と思い込んでいたのだそうです。
そんな彼女のコンプレックスを取り払ってくれたのが、就職してから知り合った職場の先輩(彼女の今のご主人)の、「○○さん(彼女)の、真面目でしっかりしていて何事にも手を抜かない姿勢、すごく尊敬してるんだ。みんな結構テキトーだからさ。ウチのチームが回ってるのは、○○さんのおかげだよ」というひと言でした。
皮肉でもなく茶化すでもなく、自分のことを正当に評価して、褒めてくれた――。彼女は思ったそうです。自分はこのままでもいいんだ。コンプレックスだと思っていた性格を「いいところ」「尊敬できるところ」だと見てくれる人がいるんだ。無理しておチャラけたり、周囲のバカ話に話を合わせたりしなくてもいいんだ、と。
不思議なものでそれ以降の彼女は、以前よりもずっと明るく、前向きに、社交的になって人生を楽しめるようになったのだとか。彼のひと言で、彼女の自己肯定感がグンと高くなったのですね。
■ネガティブなところも遠慮なく指摘してくれた
だからといって彼は、彼女を褒めるだけ、評価するだけではなく、「あの言い方は冷たい印象を与えるから注意したほうがいいよ。相手だけじゃなくて、○○さん自身にもマイナスになるから」などと、気になった点や「こうしたほうがいいんじゃないか」と思うところも、遠慮せずに指摘してくれたのだそうです。
やがて2人は交際し、結婚――。彼女が先輩であるその男性を信頼し、惹かれていったのは、きっと自然なことだったと思います。人生を共に歩むお相手が「自分の自己肯定感を高めてくれる人」ならこんなに素晴らしいことはありませんよね。
■素直に「素敵」と思ったら声に出すべき
人は自身のことを褒められたり、きちんと評価されたりすると、自然に「自分は大丈夫」「もっとできる」というポジティブな気持ちになるもの。逆に、お相手の自己肯定感をたたき落とすような人もいるんですね。ちょっとしたミスや勘違いをあげつらって指摘してきたり、何かにつけて「だから君はダメなんだよ」「何もわかってないんだから」と否定ばかりしたり。
頼りになる人だと思っていたのが、付き合い始めたら「常に自分が優位に立っていたい」タイプだったという失敗例は少なくありません。こういう「モラハラ予備軍」をパートナーに選んでしまうと、後々、とんでもなく大変な思いをすることになってしまいます。
自分でも気づかない、ずっと欠点だと思っていた「自分のいいところ」に目が届き、評価し、褒めてくれる。そんなパートナーと出会えたら幸せですよね。
もちろん、自分もお相手の「いいところ」を素直に褒めてあげましょう。「のろけちゃって」と冷やかされたって、気にしない、気にしない。自分が選んだ人なのだから、堂々と、臆面もなく「素敵」と言えばいいんです。
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伊藤 由美(いとう・ゆみ)
銀座「クラブ由美」オーナー
東京生まれの名古屋育ち。18歳で単身上京。1983年4月、23歳でオーナーママとして「クラブ由美」を開店。以来、“銀座の超一流クラブ”として政治家や財界人など名だたるVIPたちからの絶大な支持を得て現在に至る。「一般社団法人 銀座社交料飲協会」の常任理事を務める。
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(銀座「クラブ由美」オーナー 伊藤 由美)