ダイエットを成功に導くためのコツはあるのか。フィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一さんは「データを重視する人は最初に『なりたい体』の目標を定め、しっかり計画を立ててから行動を開始するのがおすすめだ」という――。

※本稿は、中野ジェームズ修一『成功も挫折も人格がすべて 痩せる!パーソナリティトレーニング』(小学館クリエイティブ)の一部を再編集したものです。
■「データ優位型」の失敗パターン
トレーニングの成功には、「自分の体質・体型に合った運動」と「人格やライフスタイルを加味した運動」が不可欠です。以下の項目に当てはまるものが多い方は、「データ優位型」かもしれません。
本記事を参考にトレーニングを見直してみるのがおすすめです。
● 誰とでもよく話をする

● 話をするときは相手の目を真っすぐ見る

● 動作や行動がきびきびと能率的である

● 会話中に「なぜ?」という疑問がよく思い浮かぶ

● 物事や状況を正確に判断できる

● 会話をする際、あまり感情的にならない

● 判断する際、情報を集めたうえで、多角的に判断する

● 自分の感情を交えず合理的に判断できる

● 旅行などの前にはしっかり計画を立てる

● 物事を現実的に見て、冷静に判断する
【データ優位型によくある継続失敗パターン】

▼ 目標を定めずやみくもにトレーニングを始めてしまう

▼ 計画どおりに減量や筋力アップが進まない

▼ そもそも自分に合った目標や計画の立て方がわからない
【データ優位型におすすめの継続成功スタンス】

運動も食も数値を基に「カスタマイズ」緻密なプランニングで着実に変身!
■成功への第一歩は「数値化」
知性的で落ち着いた性格のデータ優位型。トラブルに直面しても、感情に振り回されず、多角的な視点をもって冷静に行動したり、公平な判断を下したりできます。また、現実的な見通しを立てて、主体的に物事に取り組みます。職種でいうと、経理職など、緻密さと冷静さが求められるポジションで力を発揮します。一方で、「損得勘定が働く」といったシビアな一面もあります。「人に対し不信感を抱きやすい」という懐疑的な傾向が強いのもデータ優位型の特徴。
実は私のパーソナルトレーニングを希望される方は、データ優位型の人が多いのですが、彼らは私がトレーニングの内容を説明しても、なんでもかんでも鵜呑みにはしません。少しでも疑問に思うことがあれば、うなずかなかったり、首をかしげたりという反応を示し、「この運動がよいという根拠はなんですか?」「このトレーニングにはどんな意味があるんですか?」とすかさず質問を投げかけます。

さらに自分の質問に対し、納得した答えが得られないと、なかなかトレーニングをやろうとしません。それだけに、「なるほど!」と腹落ちしてもらえると、こちらも嬉しくなります。
体づくりにおいては論理的に考えたい合理主義。「どのように進めるか?」「何をするのか?」を決める際はデータや論文などのエビデンスを重視します。自分に合った目標や計画の立て方さえわかれば、最もトレーニングが成功するタイプと言えます。
■「なりたい体」の目標を定め、計画を立てる
データ優位型の人は最初に「なりたい体」の目標を定め、しっかり計画を立ててから行動を開始すると、ダイエットやトレーニングが成功します。体重・体脂肪をどのくらい落としたいのか? 目指す体型に近づくためには、どこの筋肉を鍛えればいいのか? そして、何をどのぐらい食べればいいのか? これらを論理的に考え、実現までの道筋が見えてくると、がぜん、モチベーションが高まります。
そして、目標やトレーニングプランを立てる際、肝となるのは「数値(データ)」です。押さえておきたい数値は二つ。できるだけ詳細な体の数値と、自分の体に即した有酸素運動による消費カロリーです。同じ有酸素運動を行っても、筋肉量のあるなしや性別が異なれば、消費されるカロリーは当然異なります。故に、合理主義のデータ優位型は多少手間でも、カロリー計算などから自分に合った方法とペースを見つけるほうが納得感をもって取り組めます。

■月1回程度のペースでの「InBody」計測が理想的
まず体の数値ですが、体重だけでなく基礎代謝量や筋肉量、体脂肪率、内臓脂肪量などを計ります。以上は家庭用の体組成計でも計測できますが、いちばんのおすすめは、「InBody(インボディ)」という、より精度の高い体成分分析装置での計測です。「InBody」を使えば、例えば部位ごとの筋肉量・腕や脚の筋肉量の左右差などもわかりますし、おおよそのたんぱく質量やミネラル量、骨格筋量も計測可能です。
そして体重、体脂肪量や筋肉量の適正値の目安も出るので、トレーニングの目標も立てやすい。月1回程度のペースで計測し、経過観察を行うと、モチベーションも上がります。「InBody」を導入するフィットネスジムは全国にあります。ネットで検索できますので、通いやすいジムに計測器があるかどうか調べてみてください。
もちろん、「InBody」での計測が難しいという人は、家庭用の体組成計でも大丈夫です。この場合、計測する時間を毎回同じにすると、計測値のブレが少なくなります。特に朝起きてトイレをすませてから計測することをおすすめします。
■有酸素運動による消費カロリーはMETsで計算を
続いて、有酸素運動による消費カロリーですが、こちらはMETs(代謝当量:Metabolic equivalents)を基準に計算します。METsとは体の活動強度を示す単位です。
数値が大きいほど活動強度は高くなり、消費カロリーも高くなります。また、消費カロリーを算出するときに、計算式に体重を当てはめるため、自分の体に準じた数値が出せます。計算式は次のとおりです。
数値(METs)×※1(時間)×体重(kg)×1.05=1時間の消費エネルギー

※30分の場合、時間の1を0.5で計算
METs表(次ページの図表1)を見ながら、体重80kgの方を例に計算してみましょう。例えば、早歩きウォーキング(4.3METs)は約361kcal。ウォーキングを交えながらのランニング(6METs)なら504kcalが運動を1時間継続して行ったときの消費カロリーです。同じウォーキングでも、時速約8kmのきびきびウォーキングだと活動強度は8METsになり、消費カロリーはランニングとほぼ同等になります。このようにMETsの値が高いほど、体重が重いほど、同じ時間、運動したとしても消費エネルギーは高くなります。
■体重80kgの人が5カ月で10kgの体脂肪を落とすなら…
運動での消費カロリーが計算できると、具体的なダイエットプランを立てやすくなります。体重80kgの人が5カ月で10kgの体脂肪を落とすことを目標にしたとして、ここで現実的なプランを考えてみます。体脂肪を1g燃やすために必要なエネルギー量は7.2kcalです。体脂肪を1kg消費しようと思ったら、約7200kcal分体を動かす必要がある、と考えます。
1カ月で2kgを落とすとなると、最初の1カ月は今までよりも1万4400kcalのエネルギー消費が必要になります。さらに1日分の消費エネルギーを計算すると480kcal(30日で計算)になります。
これはジョギングだけで消費しようとすると約50分はかかる計算です。「さすがに1日30分が限界だなぁ」と思ったら、半分の240kcalは食事でマイナスすればよい、というプランが立ちます。トレーニングを継続していくうちに体重が減っていけば、同じジョギングでも消費カロリーは減っていきますし、走れる距離が伸びたり、別の運動にチャレンジしたくなったりしたときも、計算式に当てはめる数字を修正すれば簡単に計算できます。
■「早歩き」と「きびきびウォーキング」はこんなに違う
ただし、データ優位型は計算どおりにダイエットやトレーニングの結果が得られないと、急速にモチベーションが下がってしまう人もいます。頭でっかちになって自分の立てたプランに固執したり、数値に振り回されたりしないよう注意。思うように体重が落ちなくても、目標値を変更したり、軌道修正したりして、新たな気持ちでスタートすればOKです。
「ロボットじゃないんだから、計算どおりにはいかないよな」と割り切って、その都度、プランの内容を調整しながら取り組んでいきましょう。

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中野 ジェームズ 修一(なかの・じぇーむず・しゅういち)

フィジカルトレーナー

1971年生まれ。フィジカルトレーナー。米国スポーツ医学会認定運動生理学士。
アディダス契約アドバイザリー。日本では数少ない、メンタルとフィジカルの両面を指導できるスポーツトレーナー。トップアスリートや一般の個人契約者の、やる気を高めながら肉体改造を行うパーソナルトレーナーとして数多くのクライアントを持つ。現在は大学駅伝チームのトレーナーも務めつつ、講演会なども全国で精力的に行っている。おもな著書に、『下半身に筋肉をつけると「太らない」「疲れない」』(だいわ文庫)、『青トレ 青学駅伝チームのコアトレーニング&ストレッチ』(徳間書店)、『血管を強くする 循環系ストレッチ』(サンマーク出版)などがある。

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(フィジカルトレーナー 中野 ジェームズ 修一)
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