秋の味覚がスーパーにも出回る季節。旬のおいしい食べ物を楽しみにしている人も多い。
糖尿病専門医であり、昭和医科大学医学部の山岸昌一教授は「おいしいからと、糖質量の多い秋の味覚をバクバク食べていると、高血糖が続き、短期間で内臓脂肪が蓄積し、肥満リスクを高める」という――。
■糖質の過剰摂取は肥満や肌の老化に
ようやく暑さがひと段落して、スーパーに並ぶ食材が秋らしくなってきました。旬の食べ物は、味もおいしく、食べられる期間が短いため、つい食べ過ぎてしまう人も多いでしょう。「食欲の秋だから仕方ない」といって、思いのまま食べていると、健康や美容面に悪影響を及ぼす可能性があります。
健康な体を維持するカギの一つが、血糖値のコントロールです。私たちの体は、炭水化物や甘い食べ物などから糖質を摂取すると、血液中のブドウ糖の濃度、つまり血糖値が急上昇します。すると、すい臓から血糖値を下げるホルモンのインスリンが分泌され、血糖値を正常に戻します。
しかし、糖質を過剰に摂取すると、血液中に糖が余ってしまい、それが中性脂肪となって体に蓄積。体重が増えて太る、肝臓に脂肪がたまる脂肪肝になるほか、ひいては糖尿病などの生活習慣病のリスクを高めます。
また、余った糖は体内でタンパク質と結びつき、「AGE(エージーイー)」といわれる老化物質を生成。AGEは、血管や骨、脳など、あらゆる臓器を老化させます。肌のシワやたるみ、くすみなども進行させて、老け顔を助長させてしまう恐ろしい物質なのです。

■「芋栗南京(いもくりなんきん)」は食べ過ぎに注意
秋においしくなる食材の中で特に注意したいのが、糖質の含有量が多く、摂取量もつい増えてしまう食べ物です。
例えば、秋の味覚のひとつ、ぎんなんの糖質量は、可食部100gあたり約33.4gと、数字では多いですが、100gも食べられません。ぎんなん1粒は3g程度で、糖質量は約1.0g。5粒程度食べても、糖質の摂取量は5gです。
つい食べてしまう要注意食材は、イモ類、栗、カボチャの3つ。ホクホクしておいしいサツマイモの糖質量は100gあたり31.0g。焼き芋だと水分が抜けて成分が凝縮されるため、糖質量が増えて36.7gに。大きめの焼き芋は250g以上あるため、1本食べると、一度に70g以上の糖質を摂取することになります。
栗は100g(5~6個程度)あたり32.8g、カボチャは100g(12分の1カットを3切れ程度)あたり17.0gといずれも糖質量は高め。カボチャの煮物は、砂糖を使っているため、さらに糖の摂取量が多くなります。
これらの3つの食べ物は、モンブランやスイートポテトなど、おいしいスイーツとして食べる人も多いと思いますが、WHOは、「できれば、1日の遊離糖類を全摂取カロリーの5%未満、約25g未満」にすることを推奨しています。
遊離糖類とは、おやつや調味料、ドリンクなども含んだ、主食や果物以外のすべての糖類のこと。
つまり、量を気にせず秋の味覚のスイーツを食べていると、明らかに遊離糖類の過剰摂取にもつながるというわけです。
とはいえ、食べ物で秋を満喫したい気持ちもわかります。それなら調理法を工夫しましょう。イモやカボチャを食べるときは、皮ごと調理を。皮には食物繊維が豊富なため、血糖値が上がりにくくなります。味付けも控えめにし、量はほどほどに。
■果物の糖はブドウ糖の10倍老化物質を発生させる
もう一つ、秋の味覚で注意したいのが果物です。「果物はいくら食べても血糖値は上がらない」と聞いたことはありませんか。そもそも血糖値とは、前述したように血液中のブドウ糖の濃度のことを表します。
果物には、ブドウ糖よりも果糖が多く含まれています。そのため果糖の豊富な果物を食べてもブドウ糖の濃度、つまり血糖値はあまり上がりません。果糖は、血糖値には影響が少ないものの、小腸から肝臓にすばやく吸収されてしまうのが特徴で、とりすぎるとあっという間に脂肪肝になり、内臓脂肪をため込む原因になります。

果糖は構造的にタンパク質とくっつきやすく、ブドウ糖と比べて10倍AGEを発生しやすいこともわかっています。また、冷やすと甘みが強くなるのが特徴。冷蔵庫で冷やすとおいしい秋のフルーツのブドウやリンゴ、ナシ、洋ナシ、カキなどは果糖がたっぷり含まれています。
果物の1日の摂取カロリーの目安は80kcal。ですが、日本人女性はその3倍くらい食べている印象を受けます。1日に食べてもいい果物の量の目安は、みかんなら約2個、バナナなら1本、リンゴなら3分の2個です。
秋のフルーツも食べる量に注意が必要です。ブドウは、1日約5粒ずつくらいにわけて食べるなど、一気にたくさん食べないように注意しましょう。
血糖値を急上昇させず、AGEを増やさない秋の優秀食材は、きのこ類。食物繊維が豊富で血糖値に影響せず、カロリーも低いのでヘルシー。冬になるにつれておいしくなるゴボウも、食物繊維がたっぷりでおすすめです。1日に食べる量に気を付けながら、秋の味覚をおいしく健康的にいただきましょう。


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山岸 昌一(やまぎし・しょういち)

内科医・医学博士

昭和医科大学医学部教授。「AGE」に関する研究でアメリカ心臓病協会最優秀賞、日本糖尿病学会賞、日本抗加齢医学界賞を受賞。著書多数。

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(内科医・医学博士 山岸 昌一 構成・文=釼持陽子)
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