お金が貯まる人と貯まらない人はどこが違うのか。ファイナンシャルプランナーの岩切健一郎さんは「お金が貯まらない人には共通点がある。
例えば、財布がパンパンに膨らんでいる人は要注意だ」という――。
■「お金が貯まらない人」の財布によく入っているモノ
お金が貯まらない人は、財布の内側を1秒見ただけである程度わかります。
みなさんも自分の財布を確認してみてください。「アレ」があると要注意です。
お金が貯まらないズボラな人の財布にある「アレ」とは、レシートです。
レシートが“化石”化しています。
「いつか家計簿をつけよう」「いつかレシート整理して支出を見直そう」と思いつつ、忙しさにかまけて気づいたら1カ月前のレシートを入れっぱなし。それより前のレシートも一応取ってあるけれど、いまさら見返すのも面倒。
結局「来月からでいっか」を繰り返して早3年。
心当たりがある人は要注意です。そんな状態ではお金は貯まっていきません。
■「気分屋」はお金にも嫌われてしまう
気分屋という言葉があります。
その時の気分や感情で行動や発言がコロコロ変わる人のことです。気分屋は人間関係でいい顔をされることはありませんが、実はお金にもいい顔をされないのです。
例えばレジに並んだ際の決済手段、その時の気分で決めていませんか?
現金・カード・QRコードなど。決済手段を気分で変えている人はお金が貯まりません。
決済手段が増えることで、支出を管理する難易度が上がるからです。
現金は○万円、カードは×万円、QRコードは△万円……と決済手段が増えるほど、今月いくら使っているかが見えづらくなります。
またその時の気分やテンションでポイント欲しさに新しいカードを何枚も作り、使いこなせずに財布がカードでパンパンになっている人もいます。
これらが当てはまる人は、お金が貯まりません。
よっぽど収入が多いか、すごい倹約家でなければ、支出を管理せずにお金を貯めるのは不可能です。
逆に、お金が貯まる人の財布は薄くシンプルで、決済手段も最小限で一貫しています。
毎月の支出額も把握している人が圧倒的に多いです。
カードを複数枚使いこなすポイ活(※)の達人のような人もいますが、そんな人は例外だと思ってください。

※:買い物などでポイントを貯めたり、貯めたポイントを活用したりすること。
■FPが「クレジットカード」を勧める3つの理由
正直に言うと、私も以前は財布が膨らんでいる側の人間でした。
何にいくら使ったのかがわからず、月末に引き落とし額を見ては冷や汗。家計簿を始めても三日坊主。レシートは「あとで入力するから」と言い訳しながらどんどん溜まる。
そんな私をあるアイテムが救いました。
それは1枚のクレジットカードです。
クレカは危ない、と思われがちですが、家計簿が続かないズボラな人ほどクレカを使ったほうが安全です。
その理由は3つあります。
1つ目は、明細が自動で残るので、家計簿をつけなくてもお金の流れが時間順に可視化されるからです。
お金を貯めるために大切なことは、自分が何にいくら使っているかを把握し、無駄をみつけて、対策を立てること。
本来は家計簿がその役目を果たしますが、そもそも家計簿が続かないとそれもできません。

クレジットカードなら明細を家計簿代わりにできるので、自動で簡単に支出を把握できます。
2つ目は、紙のレシート管理が不要になるからです。
レシートを持ち歩かないだけで財布は薄くなり、意思決定もシンプルになります。
「いつかやらなければ」と自分にプレッシャーをかける必要もありません。
3つ目は、無駄遣いの抑制が効くことです。
アプリ等で明細が確認できるので、自分が現時点でいくら使っているか把握ができます。また使うときも記録される前提で消費を考えることになるので、数字が残るプレッシャーで衝動買いが減ります。
記録と点検を自動化してくれるクレジットカードは、ズボラな人にこそ相性抜群なのです。
■大切なのは「ルール」を決めること
具体的にクレジットカードをどう活用するか。
ここを間違えると、クレジットカードは支出を加速させるツールにもなってしまうので、要注意です。
まずは、毎月使ってもいい金額を決めます。
手取りを把握して、使ってもいい上限額を設定します。
ここで決める上限額は手取りいっぱいの金額ではありません。貯金や家賃などを引いて、カード決済で使ってもいい上限額です。「貯金するために、カード決済は○○万円が上限」といった具合に決めましょう。
老後まで見据えるのであれば、本来はライフプランを組んで貯金額を設定するとより安心ではありますが、今回はクレジットカードの使い方に絞ってお伝えするので割愛させてください。
使うクレジットカードの枚数も注意が必要です。
基本的には1枚。多くても2枚です。
レシートが管理できない人が、より複雑なクレジットカードを複数枚使いこなすのは至難の技です。シンプルに1枚か2枚にしましょう。
マイルやポイント還元も大切ですが、そのために管理できなくなったら本末転倒です。まずは管理できることが最優先事項です。
決済手段も気分でその都度変えずに、クレジットカードに一元化します。

現金しか使えない支払い以外は、極力クレジットカードだけで決済して、月の支出をクレジットカードに集めます。
■LINEの隣に配置したほうがいい「アプリ」とは
次に、アプリと配置です。
今月の支出を把握するために、クレジットカードのアプリを取得します。
クレカを使う目的はあくまでも管理のためですので、今使っている金額を確認できるアプリを入れるのは必須です。
現時点でいくら使っているかは、2日に1回は確認することをおススメします。
常に自分の経済状況を把握するのです。
それでも確認がおろそかになってしまう人は、アプリを入れただけで終わらないように、もう一工夫しましょう。
そのクレジットカードのアプリを一番使うアプリ(例えばLINEやSNS)の隣に置きます。一番使うアプリをタップする際に、目に入るようにして、目に入ったらついでにクレジットカードのアプリもタップする癖を付けます。
残高を確認するのを習慣化するのです。
そして、月に1度はカードの明細を確認します。
「今月は外食が多かった」「コンビニでこんなについで買いしてたのか」「カフェ代が月に1万円かかっていたなんて」いろんな発見があるはずです。

月の使っていい上限額に対してそれを守れたか、守れなかったかも確認します。
もし上限額をはみ出していた場合は、来月の支出でどのように調整するか考えましょう。
この確認を繰り返すことで、支出に対して自覚的になり、調整ができるようになってきます。
最後に、クレジットカード利用における注意点も案内します。
分割払いやリボ払いは原則NGです。これが一番大切です。
■「お金が貯まる人」が常に持ち歩いているアイテム
理由は単純で、クレジットカードは支払い能力以上のものを購入できてしまうからです。
翌月の手取りで払える分しか買ってはいけません。
クレジットカードは「手元にないお金を先に借りる道具」ではなく、「安全かつ記録が残る支払いツール」として使うのが鉄則です。
欲しいものは分割で買うのではなく、先に予算を確保して、貯めてから買うようにしましょう。
もし使い過ぎが不安なら、カードアプリで利用限度額を自分で低めに設定する方法もあります。ある一定の金額を超えたら通知が来るように設定してもいいでしょう。
ズボラだからこそクレジットカードという「仕組み化」で管理するのが、一番楽です。
家計簿を完璧につけなくても大丈夫です。「クレジットカードの明細把握」で、管理は驚くほどシンプルになります。
財布をパンパンにしているのは、現金やカードではなく、家計管理を後回しにした気持ちといつまでもお金が貯まらない不安です。
決済を一つにまとめ、記録を自動化し、明細を確認して、次に活かす。
これだけでお金は貯まる方向に舵を切れます。
お金が貯まる人が常に持ち歩いているアイテム。それは、一枚のクレジットカードと、明細を毎日確認できるスマホアプリです。
化石化したレシートと、決済の気分屋からの卒業です。
まずは今日から財布を軽くして、ホーム画面にカードアプリを置く。
行動は数分で終わりますが、効果は生涯続きます。
レシートを捨てて、あなたの時間とお金を取り戻していきましょう。

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岩切 健一郎(いわきり・けんいちろう)

ファイナンシャルプランナー

1986年生まれ。29歳で適応障害と注意欠陥多動性障害(ADHD)の診断を受ける。コンサルティング会社から外資系保険会社の営業職を経て、現在は保険代理店に在籍しながら、発達障害のある人やその家族に特化したファイナンシャルプランナーとして全国で活動している。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。CFP。合同会社ひなた代表。SNS総フォロワー数は5万人。著書に『発達障害かもだけど、お金のこと ちゃんとしたい人の本』(ダイヤモンド社)がある。

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(ファイナンシャルプランナー 岩切 健一郎)
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