中学受験で失敗しないために、親はどうすればいいのか。『中学受験 子どもの成績の本当の伸ばし方』(KADOKAWA)を書いたユウキ先生は「塾に通っているだけでは合格しない。
子供の成績は、親と塾がうまく関わることで伸びていくからだ。塾を活用できていない家庭には、5つの特徴がある」という――。(第1回)
※本稿は、ユウキ先生『中学受験 子どもの成績の本当の伸ばし方』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■「塾に通わせる」だけでは受からない
中学受験を成功させるためには、塾の選択とその活用方法が非常に重要です。しかし実際には、多くの保護者が塾とどうコミュニケーションを取ればいいかわからないという悩みを抱えています。
子どもは毎週欠かさず集団塾に通い、毎日きちんと宿題をこなしているけれど、成績は一向に上がらず、夫に相談しようにも「塾のことは君に任せているから」と言われてしまい、相談がしにくい状況。さらに、塾の先生にも、いつどのように伝えればよいのか、そもそも何を聞けばよいのかわからない……。そして結局、1人でスマホの検索結果に出てくる膨大な情報に焦りと不安が募り、子どもの前では笑顔を見せることが難しい、などという話をよく耳にします。
しかし、こうした悩みは決して特別なものではありません。実は、中学受験を目指す家庭が塾を有効に使えず、親が孤立感を深めるケースは非常に多いのです。なぜなら、塾選びや活用方法に関する具体的で正しい情報が十分に得られず、家庭内だけで問題を抱え込んでしまうからです。
中学受験を成功させるには、「子どもを塾に通わせるだけ」で万事OKではありません。
塾との適切なコミュニケーション、授業や宿題の活用法、時には個別指導や家庭教師、WEBサービスといった追加のサポートなど、幅広い視野で戦略的に対応する必要があります。
■“塾のシステム”への理解度が合否をわける
そこで、これらの悩みに対して、現実的で具体的、さらにすぐ各家庭でまねができるノウハウを紹介します。
目指すのは、保護者の皆さんが自分たちに最も適した塾の活用法を知り、不安を抱え込まずに、迷いなく子どもを支援できるようになることです。そして何より、子どもたちが安心して学習に取り組み、保護者自身も無理なく寄り添える環境を作ることです。
まず最初に、お伝えしたいことがあります。それは、ただ「週に何回か塾に行っているだけ」では、中学受験はなかなかうまくいかないということです。多くの保護者が陥りがちな勘違いに「塾に通わせてさえいれば自然と成績は伸びるだろう」「塾にお任せすればなんとかしてくれるはず」というものがあります。
中学受験の学習は塾だけで成績を伸ばせるほど甘くありません。授業内容を家庭でどれだけ定着させるか、塾のシステムをどれだけ理解して活用できるかが合否を分けるのです。特に大手進学塾では、家庭との連携があってこそ、その真価を発揮します。
ですから、まず保護者の皆さんにお願いしたいのは、「塾は通わせるだけでは効果が出ない。家庭が積極的に関わってこそ成績が伸びる」という現実を受け止めていただくことです。
そしてそのために、塾のシステムをしっかりと理解してほしいのです。
■「予習型」と「復習型」にわかれている
入塾前の面談では、各教科がどんなカリキュラムか? 塾ではいつ、誰が、何を教え、宿題の量はどの程度か? 家庭にどれだけの準備負担があるのか? といったことを具体的に確認し、家庭で無理なくサポートし続けられるかをシミュレーションしてみてください。その際、以下の2つを念頭に置いて考えるといいでしょう。
1つめは、予習型か復習型かです。
予習型だと、授業前にこれから習う新しい内容を家庭でフォローする必要があり、復習型だと授業後の復習サポートがカギになります。中学受験未経験の保護者では教科内容を教えきれないことも多いでしょう。経験者でも当時とカリキュラムなど変わっているので、難しいことがあります。その際は、塾側から「授業動画の配信」や「オンライン質問対応」「復習プリントの配付」などの補助サービスがあるかを確認することが大切です。
2つめは、費用面の見通しについてです。毎月の通塾費用以外に、季節講習会(夏期・冬期・春期)があり、その参加費用は学年によりますが、1回あたり約5万~15万円が相場です。また、テキスト代・模試受験料・行事参加費など、年の通塾費用+20万~30万円程度の追加負担の可能性があります。これらを踏まえて「年間予算」を組み、家計とのバランスをシミュレーションしてください。

■「各教科の先生の名前」を言えるかどうかは重要
一方、現在通塾中の家庭は、塾をもっと活かせるように日頃の塾との関わりを見直していくことが重要です。中学受験の成功は、「塾という環境をどれだけ使いこなせるか」にかかっています。同じ塾に通っているのに、成績が伸びる子と伸びない子がいますが、その差は、実は塾の活用の仕方にあることも多いのです。では、塾を活用できていない家庭には、どのような特徴があるのでしょうか?
(1)保護者が各教科の先生の名前を知らない
塾に通い始めて半年以上経っても、各教科の先生の名前を把握していない家庭があります。先生の名前が分からないということは、その先生がどんな指導スタイルで、どんな授業内容で進めているかを把握していないということです。実際、先生と親が顔を合わせて会話をしたことがないというケースも少なくありません。
まずは担当ではなくても塾の先生と会話をする機会を持ち、宿題や授業の方針などについて理解を深めてください。授業でのつまずきを解消するには、先生との会話が必要不可欠です。非常勤の先生の場合は、出勤日を事前に確認して一度は顔を合わせることがおすすめです。
■「相談相手がわからない」「保護者会に参加しない」は危険
(2)塾のシステムを理解していない(誰に何を相談するのかがわかっていない)
「成績が伸び悩んだとき、誰に相談すればいいのかわからない」という声をよく聞きます。塾には、クラス担任講師・教室長・受付担当者など、それぞれ役割があります。
教材や授業内容の相談なら、各教科の担当講師。
学習進度や成績の悩みなら、クラス担任講師や教室長。講習会の申し込みや欠席連絡なら、受付スタッフ。このように相談先を明確に把握し、遠慮なく相談していくことが重要です。
また、受付担当者は講師ではありませんが、子どもを見守るスタッフの1人です。受付担当者が生徒の名前を覚えて声をかけてくれたりするような文化のある塾なら、「面倒見が良い塾だな」と私は思います。
(3)保護者会や面談に参加していない
保護者会や面談は、ただ参加して話を聞くだけの場ではありません。子どもの塾での様子や、塾が今後どんな方針で進めていくのかを把握する絶好の機会です。成績が安定して伸びているご家庭ほど、この機会を積極的に活用し、先生に具体的な質問を投げかけている印象があります。
保護者会に参加していないと、「今、自分の子が何をすればいいのか」「このままの進度で大丈夫か」といった情報が曖昧なままになります。ぜひ積極的に参加して、塾の考え方を理解してください。
■「宿題をこなすだけ」の家庭は要注意
これも経験談ですが、成績が下位のクラスほど保護者会の参加率が低く、上位クラスは保護者会の参加率が高かった印象です。正直、保護者会は参加をしてもらわないと塾側の意図が伝わらず、家庭と塾の連携が難しくなります。
どうしても参加できない場合でも最近では、保護者会もオンライン開催・録画配信をしてくれる塾も多いようですから、できるだけ視聴し、疑問点や確認点は電話などで確認しましょう。
(4)教材の目的やレベルを把握していない
教材にはそれぞれ目的があります。
授業用(例題中心の理解を深める教材)、宿題用(定着度を確認する演習用の問題集)、発展用(応用・難問演習用テキスト)です。これらの違いや位置付けを把握しないまま、「とりあえず宿題に出たものをやればいい」となっている家庭は要注意です。どのレベルの教材をどこまでやり込めば成績が伸びるのかを意識できれば、家庭での学習の質が一段と向上します。
まずは子どもの教材を一度じっくり見直し、「これは何を目的とした教材か」「どこまで完璧にすればよいか」を理解することが大切です。
■塾に“遠慮”は必要ない
(5)塾に対して遠慮がち
「うちの子は成績があまり良くないから……」と、塾に対して遠慮しがちな保護者の方がいます。しかし、塾は成績の良い子だけを歓迎しているわけではありません。むしろ、成績が伸び悩んでいる子どもの家庭ほど、積極的に相談に来てほしいと考えています。
実際、私が塾講師をしていた頃も、成績が伸び悩んでいる子どもの家庭が熱心に相談に来てくれたことで、短期間で劇的に改善できたケースは数えきれません。
これらの5つのことを意識的に取り組むことで、塾を単なる「通う場所」ではなく、家庭学習を支え、親子をサポートしてくれる「頼れるパートナー」として活用できるようになります。ぜひ今日から実践してみてください。


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ユウキ先生(ゆうきせんせい)

中学受験スリースターズ代表講師

2006年より関東の大手進学塾にて算数の講師を担当、数多くの合格者を輩出。現在は「中学受験スリースターズ」を運営し、SNSなどを通じて算数の解説動画や学習法を発信するほか、全国の受験生や保護者への個別相談やサポートを行う。自身も保護者として子どもの中学受験を支えた経験を持ち、指導者・保護者という両面からの具体的かつ実践的なアドバイスを行う。

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(中学受験スリースターズ代表講師 ユウキ先生)
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