※本稿は、山下明子『食べる瞑想』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■「□□は控えよう」は純粋に食事を楽しめない
「○○を食べるようにしましょう」
「□□はできるだけ控えましょう」
書店に並んでいる健康法を謳(うた)う書籍の多くは、このように「食べ物」ばかりに焦点が当てられています。もちろん、医学的に正しい根拠にもとづいたそのような解説を否定する気は一切ありません。
ですが、私たちの食生活は日々変化するものです。
友人との飲み会があったり、忙しくて昼食をとる時間があまりなかったり、自炊する気が起こらず、コンビニで夕食を買って帰ったりする日もあるでしょう。そんなときにも、「○○を食べよう」「□□は控えよう」などと考えていると、純粋に食事を楽しめなくなってしまいます。
一方で、本書が提案する「食べる瞑想」は「食べ物」ではなく、もっと実践が簡単な「食べ方」に焦点を当てています。
つまり、再現性がとても高く、継続できる可能性が非常に高いのです。
実際、「食べる瞑想」に使う食材は、どんなものでも構いません。さまざまな食材を使って瞑想することで、それぞれの違いを感じることもできます。
とろとろしたヨーグルト、シャキシャキした生野菜、ツルツルした麺など、食材の種類の数だけ異なった楽しみ方ができるのです。
どんな食材がいい、ということはありません。
本稿では「食べる瞑想」を具体的にイメージしていただけるよう、チョコレートを使った基本的な実践方法をご紹介します。私はこの方法を「チョコレート瞑想」と名づけ、全国各地の講演会などでお話ししてきました。
ここでお伝えするのは、あくまで「こんなことに意識を向けて食べてみてはどうですか?」という提案です。「こうでなければダメ」というルールではないので気楽にやってみましょう。
一番大切なのは、読むだけで終わるのではなく「実際にやってみること」です。
■早速実践してみよう!人生が好転する「チョコレート瞑想」
Work チョコレート瞑想一口サイズのチョコレートを二つ用意します。
チョコレートをテーブルに置き、姿勢を整えて
椅子に座ります。
目を閉じて2、3回静かに呼吸を整えます。
目を開けてチョコレートを一つ手に取り、よく
観察します。
質感や色などに注目しましょう。
次に、チョコレートの匂いを嗅(か)ぎます。
「唾液が出る」などの反応を観察しましょう。
一つのチョコレートを三口で、少しずつかじって食べます。
一口目を小さくかじって舌の上にのせ、口を閉じましょう。
目を閉じて、口の中の感覚に意識を向けます。
口の中でゆっくり転がし、チョコレートが溶けていくのを感じましょう。
どんな味がしますか?
全部溶けたら、飲み込みましょう。
目を開けて、二口目のチョコレートをかじります。
口を閉じて、目も閉じます。
ゆっくり噛んで、匂いや味、食感を観察しましょう。
はじめの一口との違いはありますか?
ゆっくり飲み込んだら目を開けて、残りの三口目のチョコレートを観察し、口に入れて再び目を閉じます。
一口目、二口目と同じ要領で食べます。
目を開けて、食べていないもう一つのチョコレートを見てください。
二つ目は食べてもいいし、食べなくても構いません。
もし食べると決めたら、今度は丸ごと口に入れ、
じっくりと味わってみてください。
■科学が認めた「脳」と「心」の処方箋
このチョコレート瞑想は、慢性的な痛みやストレスを抱えている人たちのためにマサチューセッツ大学で開発された「マインドフルネスストレス低減法」がベースになっています。
マインドフルネスストレス低減法とは、瞑想やヨガを取り入れながらストレスの対処法を学ぶプログラムのことで、高血圧や糖尿病、うつ病など、さまざまな疾患の改善に役立つことが世界中の研究者によって報告されています。
そのため、チョコレート瞑想で得られるメリットはたくさんあります。
チョコレート瞑想で得られるメリット
●脳の疲労が軽減される
●創造性や記憶力などの脳機能が活性化する
●共感や慈悲の心が高まり、対人関係の構築力が上がる
●幸福感が得られる
●自己コントロール力が高まる
このように「食べる瞑想」は、ただのリラクゼーション法や自己鍛錬の一種ではなく、体の機能に変化をもたらすことが科学的に証明されているのです。
食べ方一つで、人生が変わるのです。
■人類は「口の感覚」を大切にしてきた
チョコレート瞑想を行うことで、先ほどご紹介した効果に加え、さらなるうれしい効果も期待できます。試しに、チョコレートをゆっくり口に入れたときのことを想像してみてください。
口いっぱいに広がる甘味とカカオの風味。
体温でゆっくり溶けていく舌触り。
噛んだときの柔らかい食感。
口から鼻に抜けていく苦味と酸味……。
いかがでしょうか。
五感が研ぎ澄まされる感覚があったのではないでしょうか。
じつは、口の感度はとても高く、他の体の部位とは比較にならないほどです。脳の中には感覚神経が集まる領域がありますが、その中でも口の感覚を司(つかさど)る領域は、とても大きなエリアを占めています。
つまり、人間は遺伝的に長い年月をかけて、口の感覚を重要視してきたわけです。これを使わない手はありません。
ぜひ、食べるときは味覚だけでなく、食材の見た目や香り、温度や舌触りなどを丁寧に感じてみましょう。
そうすることで「ざらざらしている」「甘みがある」などの、今まで気づかなかった感覚に気づけるようになりますよ。
■「食べる速さ」が食事量に影響する
さらに「食べる瞑想」は、胃腸の負担も軽くしてくれます。
ゆっくり味わうと、自然と噛む回数が増えますね。すると、口の中での唾液アミラーゼによる消化が進んだ状態で、食材を胃に入れることができるようになります。
また、「満腹中枢」と呼ばれる神経は、血糖値の上昇によって刺激されるのですが、ゆっくり時間をかけて味わっていると、その間に血糖値が上昇していくため、満腹感を感じやすくなります。
逆に早食いをしてしまうと、血糖値が上がる前にどんどん食材が胃の中に入っていくので、血糖値が上がる頃には必要以上に食べすぎてしまいがちに。実際、厚生労働省の調査では、食べるのが速い人ほど肥満度が高いという結果が示されています(図版参照)。
食事に時間をかけることは、肥満の防止にもつながるのです。
おやつなどを食べるとき、疲れやイライラを鎮めるために、むさぼるように口に入れている人もいるかもしれません。
しかし、一時的な快楽を得るために暴食しても、それほどの満足感は得られないものです。むしろ「ああ、また食べてしまった」という罪悪感によって、余計に気分が下がることもあります。
そんなときは、食べるのを我慢するのではなく、「食べる瞑想」を取り入れながらじっくりと味わってみましょう。
----------
山下 明子(やました・あきこ)
医学博士
佐賀県生まれ。医療法人社団如水会今村病院副院長。脳神経内科医として6万人もの生活習慣病患者を診察し、「健康づくりを指導する専門家」として多くの信頼を集める。
----------
(医学博士 山下 明子)

![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 昼夜兼用立体 ハーブ&ユーカリの香り 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Q-T7qhTGL._SL500_.jpg)
![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 就寝立体タイプ 無香料 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51pV-1+GeGL._SL500_.jpg)







![NHKラジオ ラジオビジネス英語 2024年 9月号 [雑誌] (NHKテキスト)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Ku32P5LhL._SL500_.jpg)
