大事なプレゼンや商談の前など、「不安」を感じる場面は多々ある。セミナー講師の望月俊孝さんは「人間のDNAレベルで組み込まれている“不安”を繕ったり、押さえつけたりするのは無理だし得策ではない。
むしろ、“不安”を活用して、力に変えていくべきだ」という――。
※本稿は、望月俊孝『その習慣、変えてみたら? うまくいかないときに「まずやる」こと』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
■不安の解消は人生の最優先課題
「どうすれば、人生が変わりますか?」
僕はいったい今までに何度、この質問を受けてきたことか……。
それこそ30年以上、書籍や研修で伝え続けてきたのがこの質問の答えです。
こんな質問をしてくる方たちは現状に悩んでいます。もちろん具体的な悩みは人それぞれ。でも、悩んでいる人は共通して次のような課題を抱えているものです。
不安を解消したい! したい、したい、したい(エコー)
一般的に「不安」とは、新しい環境や、まずい事態になりそうなときに感じる痛みや高ぶりのこと。やっかいなことに一度感じるとなかなか止まりません。そして、ひどくなると、こんな現象が起きます。
①注意⼒が散漫になり、1つの⽬標に集中しにくくなる。

②認知能⼒が低下して、論理的な思考ができなくなる。


③不安をあおる「ネガティブなニュース」ばかり⾒たくなったり、破滅的な思考が浮かびやすくなったりする。
つまり、人生が停滞し、何もできなくなってしまう。それってヤバすぎます。
僕は、不安の解消こそ、人生の最優先課題だと思っています。
■人類が生き残ったのは不安のおかげ
でも、ここでちょっと考えてみてください。「不安」は本当に、人間にとって必要のない、一刻も早く解消すべき「敵」なのでしょうか?
答えは「ノー」。
なぜって、私たち人類が生き残ってこられたのは「不安」のおかげだからです。
人は、不安を感じると、普段より知覚が高まり、より危機を察知しやすくなります。そして、「もっと頑張ろう」「もっと準備しよう」とマジになれるのです。
だからこそ、人間のDNAレベルで組み込まれている「不安」を繕ったり、押さえつけたりするのは無理だし、得策ではありません。むしろ、「不安」を活用して、力に変えていくべきです! 不安はフレンド。不安のファンになりましょう。

■「不安は元々ワクワクのエネルギー」
不安な気持ちが止まらないとき、とっておきの「まずやる」ことはこちら。
「私は今、興奮(ワクワク)している」と口にする!
スピリチュアルリーダー、バシャール(ダリル・アンカ)はこう言っています。
「不安や心配といった感情は元々ワクワクのエネルギーだ」
この言葉は、科学的にも正しいことが証明されています。
「不安」も「興奮(ワクワク)」も、心身が活発になり、心拍数が上がる点が共通しています。どちらも「今、何か重要なことが起こる」と感じているサインです。ただ、「不安」のほうは、対象となる出来事のネガティブな結果を見ているのに対して、「興奮」のほうは、ポジティブな結果を見ている。違いはそれだけなんです。
■「不安」をプラスのエネルギーに変える実験
この「不安」と「興奮」について、2019年にハーバード・ビジネス・スクールのアリソン・ウッド・ブルックスが次のような面白い実験を行っています。
・手順1 被験者たちに「これから皆さんに、こちらが指定する曲を1人ずつ歌っていただきます。そして、歌唱の正確さを機械で審査します」と伝える。
・手順2 課題を聞いた被験者全員が大きな不安を感じたことを確認する。
・手順3 被験者をAとBの2グループにわけて、歌う前に、Aグループの人には「私は不安です」、Bグループの人には「私は興奮している」と声に出してもらう。

・手順4 1人ずつ皆の前で歌ってもらい、歌唱の正確性を審査する。

すると驚くべき結果が出ました。
■効果的だった「私は興奮している」
不安をそのまま口にしたAグループの人たちの正確性が約52%だったのに対し、「興奮している」と口にしたBグループの正確性は80%に達したのです。
ちなみに、何も表現しないグループも作って調べたところ、約69%でした。
さらに、ブルックスは別のグループに、今度は「人前でのスピーチ審査」という課題で実験をしました。スピーチの前に、Aグループは「私は落ち着いている」と口に出してもらい、Bグループは「私は興奮している」と口に出してもらってから、スピーチの様子を第三者に評価してもらったのです。
■「私は落ち着いている」と口に出すよりも
するとやはり、「私は興奮している」と口に出したBグループの人たちのほうが「説得力があり、態度にも自信が感じられた」と高い評価を受けたのです。
不安は正直に口にしても、隠そうとしてもコントロールできず、パフォーマンスを低下させてしまう。
しかし、不安を「興奮している」と評価を変えることで、目の前の状況が「おびえる」対象ではなく、「挑むべきチャンス」に見え、良い成果を残せるのです。
68歳をむかえた僕の人生も、日々、大難・小難があります。新しいチャレンジもあります。恥ずかしながら内心、不安になることも多いです。

そんなとき、僕は、こんな言葉を口に出すようにしています。
「ますます燃えてきた!」「いやー、楽しくなってきた!」
効果はテキメンです! すぐにできますので、ぜひやってみてくださいね。

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望月 俊孝(もちづき・としたか)

ヴォルテックス代表

上智大学法学部卒。セミナーを中心に事業を展開するヴォルテックス代表。36歳で6000万円の借金を抱え、会社をリストラされ、全身アトピーに苦しみながらも「習慣」を根本から変えることで、わずか1年で借金を完済。V字回復の人生を歩む。この体験から「習慣を変えれば、人生は劇的に変わる」ことを確信。主な著書に『何歳からでも結果が出る 本当の勉強法』『ムダがなくなり、すべてがうまくいく 本当の時間術』(以上、すばる舎)、『1分マインドフルネス』(KADOKAWA)、『究極の氣 レイキ』(河出書房新社)、『心のお金持ちになる教科書』(ポプラ社)、『[新版]幸せな宝地図であなたの夢がかなう』(ダイヤモンド社)、『魔法の読書法』(イースト・プレス)など多数。

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(ヴォルテックス代表 望月 俊孝)
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