※本稿は、角谷リョウ『仕事の質を高める休養力』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。
■なぜ、サウナはスッキリするのに疲労が取れないのか?
最初に言っておきますと、私は日本サウナ学会の研究会員で、かつ週に5回はサウナに行くガチサウナーです。そんな私が言うのも変ですが、疲労回復という点ではみなさんが思っているほどサウナには効果を期待しない方が良いと思います。
ちなみにサウナにはさまざま疲労やメンタルの回復の研究論文があるのですが、それは主にフィンランド式サウナ(70~90℃の低温で湿度が高いサウナ)に関するものがほとんどです。
日本のサウナは乾式サウナで、ほとんどが高温(85℃以上)で乾燥しています。フィンランド式サウナは日本の湯治の感覚に近く、ゆっくりと深部体温から温めて副交感神経を優位にして、心身ともにリラックスさせてくれます。ですから、最低でも3時間、長いと半日または1日かけて疲労を回復させます。そもそもヨーロッパではメンタル改善の1つとして定着しているくらいです。
それに比べて日本のサウナはかなり目的が違います。日本で人気のサウナは高温で心拍数を上げ、冷たい水風呂でさらに逆の刺激を与えることで、脳内から幸福ホルモンのエンドルフィンや興奮系ホルモンのアドレナリンを分泌させます。
そして外気浴でリラックスするときに「リラックスしているのに興奮×幸福ホルモンが出る異次元の世界」に浸ることができるのです。
これがいわゆる「ととのう」という状態です。
これは超一流のアスリートが大きな試合ですごく緊張しながらも同時に興奮しているのに、リラックスして相手や周りがよく見えて、体も適度にリラックスしている最高の状態です。
日本のサウナはこの究極の状態をかなりお手軽に作り出せるということなのです。話が脱線してしまいましたが、要するに日本のサウナは「アントニオ猪木さんの闘魂ビンタ」みたいなものです。
ですから長時間デスクワークしてモヤモヤしているときにリフレッシュするような役割です。ある意味、攻撃的リフレッシュなので、使い方によってはかなり有効です。
しかし、本当に溜まった疲労を回復したいのなら、日本の一般的なサウナだとかなり工夫しないと難しいのです。
■なぜ、温泉に行くと余計に疲れるのか?
日本は世界で最も温泉の数が多く、なんと中国の10倍以上もあり、日本人にもっとも馴染(なじ)みがある休養法です。
しかし多くの人が「温泉に行ってかえって疲れた」という経験があると思います。それは気のせいでなく、実際に疲労は温泉に行く前より増えていると思われます。
その最大の理由は、温泉で疲労は出せているものの、その後の回復が足りていないことです。
ここで絶対に覚えておいてほしいことは、温泉は「疲れを取る装置」ではなく「疲れを出す装置」だということです。
温泉は地下深くから出るため、ミネラルやガス成分が豊富に含まれています。そのために血管拡張効果や老廃物除去効果、発汗作用の向上などによって疲労物質がたくさん排出されます。
普段通りの生活ではなかなか疲労の排出モードに入れないので、疲労を一気に大量に排出することは疲労を回復するうえでは最重要事項です。
■「疲労を出して」「すぐ帰る」が疲れる原因
ただここで注意したいのは、ほとんどの人が1泊2日などの短い日程で温泉旅行を組んで翌日には仕事……という感じで、疲労を出すだけで帰路についてしまっている点です。日帰り、デイユースはもっと最悪です。
温泉で疲労を出したら、回復タイムを十分に取らないと、温泉の疲労回復は逆効果になってしまいます。
したがって、温泉の正しい活用法としては、基本2泊3日以上の温泉旅行に設定して、疲労を出した後に十分に回復する時間を設けておく。あるいは帰宅後、自宅で回復タイムを設けるといったやり方が有効です。
加えて、覚えておきたいのが、温泉で体内の古いタンパク質やミネラルが排出されますので、温泉に浸かった後は新鮮なタンパク質やミネラルを補給することが重要です。そうしないと体を再構成する材料不足になってしまいます。
さらに「回復」という観点からすると、飲酒は体内を再生させる酵素をアルコールの分解に使ってしまいますので、お酒は最小限にして体内の再生を最優先してください。もちろん疲労が回復して、心身そして内臓が元気になってから、楽しんで飲んでください。
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角谷 リョウ(すみや・りょう)
睡眠コーチ
LIFREE共同創業者、睡眠・超回復研究所 所長。大手企業を中心に、計160 社、累計16 万人を超えるビジネスパーソンのパフォーマンスを改善してきた上級睡眠健康指導士。日本スポーツ協会公認スポーツ指導者。日本睡眠学会会員。日本サウナ学会学会員。
認知行動療法や心理学をベースにした独自の睡眠改善メソッドによるサポートを行っており、1 回のセミナー参加で不眠症レベルの受講者の約60%が「正常範囲」まで改善。4 週間の睡眠改善プログラムにおいては90%以上が「正常範囲」にまで改善している。テレビ、雑誌などメディア出演も多数。
著書に『エグゼクティブを見せられる体にするトレーナーは密室で何を教えているのか』(ダイヤモンド社)、『働く女子のための睡眠革命』(光文社)、『働く50 代の快眠法則』(フォレスト出版)など多数。
公式note 16 万人改善の睡眠コーチ 角谷リョウ:仕事で差がつく超回復睡眠
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(睡眠コーチ 角谷 リョウ)