※本稿は、下村志保美『がんばらない片づけ』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■片づけが嘘のようにラクに進む魔法の質問
片づけなくちゃ、片づけなくちゃ、片づけなくちゃ……思えば思うほど、その思いとは逆に片づける意欲がなくなっていく。
お客様が来るからと気合と根性で片づけてキレイになったとしても、またすぐに散らかってしまう……。片づけは、始める前にまず考えることがあります。それは、
「あなたはどんな毎日を過ごしたいですか?」
ということです。相談に来られる方に私がまずするのもこの質問です。この質問でお客様の片づけの“ゴール”を決めるのです。
実際、この質問にすぐに答えられる方はごくわずかです。私自身も初めて受講した片づけ講座でこの質問をされたとき、この漠然とした問いにまったくピンとこず、「部屋がキレイなほうがいいから片づけるに決まってるでしょ。
そんなことより早く、簡単にキレイに片づく方法とか収納用品とか具体的に教えてほしいなぁ」などと思っていました。
■「片づけない理由」ではなく「片づける理由」が大切
「片づけのゴール? キレイにすること以外で?」という方がほとんどかもしれませんね。
でも片づけのゴールを「キレイな部屋」にした場合を考えてみましょう。すると、「汚くてもいいや。別にホコリひとつじゃ死なないし」「人に見せるわけじゃないし」とキレイじゃなくていい理由を考えて、ついつい片づけを先延ばしにしてしまいます。
しかし片づけのゴールを「どんな毎日を送りたいか?」にすると、
「家族の健康のためにこまめに掃除がしたい」
「探し物に無駄な時間を使いたくない」
「疲れて帰ってきたときにリラックスしたい」……。
どうでしょうか?
「健康じゃなくていいし」
「無駄な時間を使ってもいいし」
「リラックスできなくてもいいし」
とはならないですよね。そう、片づけのゴールとは“片づけたらどんないいことがあるか”を考えていくことなのです。
・床にモノを置いていないと、掃除機がかけやすい!
・キッチンが片づいていたら、快適に料理ができる!
・定位置が決まっていると、すぐにモノが見つかる!
・無駄な時間が減り、仕事や余暇の時間が増える!
・友人や親戚はもちろん、修理業者などが突然来ることになっても慌てない!
・リラックスできる!
・片づけられないコンプレックスから解放され、片づけられる自分に自信が持てる!
■ゴールとやる気をアップデートする
また、私のように自宅がオフィスという方にはこんなメリットもあります。
・ダイニングテーブルの上に何も置かれていなかったら、仕事をやろうと思ったときにすぐに資料を広げられる!
・お客様に来てもらいやすい!
何より「片づけなくっちゃ……」のイライラやモヤモヤから解放される毎日って、素晴らしいと思いませんか?
ではここで皆さんに次のワークをお願いしたいと思います。難しく考えず、パッと思いついたことでかまいませんので、書き出してみてください。
いかがでしたか?
このワークの答えは人によって違いますが、自分の中でもそのときそのときで変わります。
たとえば独身のころと結婚後、出産後はそれぞれ違うでしょうし、仕事を始める、専業主婦になるなど、ライフスタイルの変化によっても変わってきます。
時々このワークを振り返って自分のゴールをアップデートすることで、「やる気」もアップデートされます。
また「片づく→良いことがある」の順番でしたが、逆もまた真なり。
ゴールの「良いこと」が決まれば、「良いことがある→だから片づけよう」とモチベーションを高めることにつながります。
・朝起きたときに気分が良いから、寝る前にシンクを片づけよう
・不意の来客にも慌てないように、ふだんから片づけておこう
片づけておこうというモチベーションは、自分の内側から出てくるもの。
「片づけなくちゃ」と思うとつらく感じるかもしれませんが、「片づけて○○したい!」というふうに「何のために片づけるのか」というゴールがはっきりすると、実際に行動に移せるようになるのです。
■朝、目を覚まして困ることを書き出す
あなたはなぜ片づけたいと思うのでしょうか?
それは、日常生活の中で、おそらく何かしら困っていることがあるからではないでしょうか。
そこでまずは、今のあなたの困りごとを発見し、解決していきましょう。
困ることといってもピンとこないかもしれませんが、不快に感じることや憂鬱になること、イヤだな、不便だなと思うようなことです。
これらを一つ一つ書き出してみましょう。
それでは、目を閉じ、いつもの日常を思い浮かべてみてください。
朝、目を覚まし、ベッドから出て朝の支度をします。
何か困ったことはありませんか?
仕事を終え、夕方、家に帰ってきました。
困ったことはありませんか?
たとえば、こんなことがあるのではないでしょうか。
●朝の困りごと
・朝食を食べるとき、ダイニングテーブルの上を片づけてからでないと食べられない
・洋服を選ぶとき、洋服のある場所が複数の場所に分かれているので、あっちに行ったりこっちに行ったりして時間がかかる
・出勤しようと思ったら、ストッキングが伝線していた! 新しいストッキングがあるはずなのに、見つからない
●家事の困りごと
・料理をしようと思っても調理台がいっぱいで、まな板が置きにくい
・取りこんだ洗濯物が、たたまれないまま、たまって山になっている
・床にモノが置きっ放しになっているので掃除機がかけにくい
●モノが見つからない困りごと
・家族にいつも「あれどこ?」と聞かれる
・外出前、鍵、交通系ICカード、スマホが見つからない
・スマホの充電器やハサミなど、場所がわからなくなる
●他人が家に入るときの困りごと
・子どもが友達を呼びたいと言っても「うちは無理」と我慢させている
・人を呼ぶことがイヤなのではなく、家が片づいていないから呼べない
・マンションの点検や修理業者への依頼を先延ばしにしてしまう
●マインド面の困りごと
・出かけるときにモノが見つからず、結局遅刻をしてしまうことが多く、周囲からの信用をなくしてしまう
・このままだと、子どもも「片づけられない人」になってしまうかも……、子どもが片づけられないのは私のせいかも……、と不安になる
・家が片づいていないので、自分に自信が持てない
1日の生活のことを考えたら、きっとたくさんの困りごとが出てくるでしょう。
「困っていることなんて思い出したくないわ」なんて言わず、小さな困りごとも具体的に書き出してみてくださいね。
困りごとが多ければ多いほど、あなたの生活を豊かにするたくさんのゴールが見つかるのですから!
■探し物をする時間が減ったぶん、あなたの時間が増える
あなたの困りごとは、何でしたか?
困りごとを書き出すことで、どんなときに、どんな場所で困っているか、不便を感じているかがわかったのではないでしょうか。
ここからは、いくつか例をあげてみましょう。
子どもが出かける支度に時間がかかっている
お子さんにとって選択肢が多すぎるのかもしれません。たとえばハンカチがたくさん並んでいると、選ぶのに時間がかかります。
服が多すぎると迷ってなかなか決められない上に、引き出しにギュウギュウに入っていれば一人では取り出しにくくなります。
こんな場合は、枚数を減らす、普段着とよそ行きの服を分けるなどの工夫で解決できます。
子どもが自分で支度ができるようになると、次の他の行動も自分でできるようになります。
そうするとお母さんの手をわずらわせることが減っていき、育児はとてもラクになります。
この困りごとから見えてきたあなたの片づけのゴールは「子どもが自分で支度できる」、そして、「育児がラクになる」ではありませんか?
家の中で、いつもモノを探している
モノの定位置を決めていますか?
使ったモノを決めた置き場所に戻していますか?
自分は戻しているけれど家族が戻していないのであれば、戻す場所がわかりにくいのかもしれません。
この場合は、モノの置き場所を決めてマスキングテープなどでラベリングをしておくと、どこに戻せばいいか視覚的にわかりやすくなります。
いつもモノを探している人の収納は、取り出しやすさよりも、戻しやすさを考えるのがポイント!
出しっ放しにしてしまうのはどこに戻せばいいのか迷うからということもあります。自分も家族も決めた位置にモノを戻すようになると、自分も使いたいときに探すことがなくなりますし、誰からも「あれどこ?」と聞かれなくなります。
探し物をする時間が減ったぶん、あなたの時間が増えます。
その時間で、あなたは何をしたいですか?
この場合の片づけのゴールは、「モノを探す時間をなくして、時間の余裕を作り、好きなことをする」かもしれませんね。
■困りごとは十人十色。片づけに正解はない
困りごとは、一人一人違って当たり前。住んでいる家が違えば、ライフスタイルや、考え方も価値観も人それぞれ違うからです。
家族に「あれ、どこにある?」と聞かれるのを、イヤだと感じる人もいれば、気にしない人もいます。
子どもの支度だって「こうすればOK」という万人に有効な方法はありません。
きょうだいの人数や親の手のかけ方でも、困りごとの内容は違ってきます。
2階建ての家に住んでいる人とマンション暮らしの人の動線もまったく違いますから、その解決方法も一人一人違います。
困りごとは暮らし方や考え方が大きく影響し、その解決法も人それぞれ違います。
では実際に、あなたの家のどの場所がどんなふうに片づいていればいいかを、具体的に思い描いてみましょう。
■どの場所をどう片づけたい?「憧れ写真」を撮ろう
「キレイにしたい」「スッキリしたい」という言葉は、多くの人が使いますが、よく考えてみればとても曖昧な表現です。
あなたが思い浮かべる「スッキリした部屋」と、私が思い浮かべる「スッキリした部屋」は、きっと違っていると思います。私はプライベートレッスンの前に、この曖昧な「スッキリ」を具体化するためにおすすめしていることがあります。
まずあなたが今片づけたいと思っているご自宅の、ある1カ所のスペースをどうしたいかを思い浮かべてください。
・ダイニングテーブルの上には何も置かれておらず、真ん中に花が生けてある
・玄関にはお気に入りの置き物だけが飾ってある
・キッチンの調理台の上には何も置いていない
・クローゼットを開けたら、お気に入りの服だけが並んでいる
思い浮かべようとしても、はっきりと頭の中に思い浮かべにくい。なんとなくのイメージは出てくるけど、どこかぼんやりしている。
そんな方にもおすすめなのがビフォーアフターの「アフター」の状態、あなたの理想とする形を作って撮影する、やらせの写真――「憧れ写真」です。
「やらせ写真」なので実際に片づけるのではなく、単に写真に写りこまないように不要なモノをちょっと移動するだけで大丈夫。
たとえば、玄関にはお気に入りのモノだけを飾ってある状態にしたいと思っているのならば、実際に今置かれているモノをいったん別の場所に移動して自分の理想の状態を作り、写真を撮ります。
こうすることで自分の理想がビジュアル化できます。
■1カ所でも理想の場所ができるとキレイや理想が広がる
理想の状態を作ることで、現実とのギャップを埋めていくために何をすればいいかも具体的にわかります。
そして、理想はこれだけど、「実際、そこまでモノは減らせないわ」とか「印鑑やボールペンくらいは置いておきたい」とか、現実的な理想に気づきます。
そうやって理想的、かつ実用的なスペースに変身させていくのです。
さらに、まずは1カ所だけでも理想の場所ができてOKが出せると、そこから家じゅうに「キレイ」や「理想」が広がっていきます。
「憧れ写真」を使うことで、理想のスペースを視覚で感じることができますし、「こんな部屋にしたい」「片づけたらこんな部屋になる」と、楽しみながら片づけができるのです。
あなたの部屋の理想を先取りする「憧れ写真」を、ぜひ撮ってみてくださいね。
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下村 志保美(しもむら・しほみ)
家計アドバイザー
1968年、愛媛県松山市生まれ。「空間・お金・心」の3つを整えることで、忙しい女性をサポートする「PRECIOUS DAYS」を主宰。2014年に片づけのプロとして起業。訪問やオンラインでの整理収納レッスンをはじめ、各種講演やコンサルティング、ESSE onlineでの記事執筆、家計アドバイザーとしての活動など、多岐にわたって活躍する。著書に『『「お金が貯まる家」にはものが少ない』(扶桑社刊)、『片づけのプロが教える心地いい暮らしの整え方』(三笠書房刊)がある。
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(家計アドバイザー 下村 志保美)
 
                         
                             
                                         
                                         
                                         
                                         
                                         
                                         
                                         
                                         
                                         
                                 
                                 
                     
                     
                    
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