初めて行く飲食店選びでハズレを引かないためにはどうしたらいいのか。二十数年間も『東京最高のレストラン』編集長を務め、シェフからの信頼も厚い大木淳夫さんがお店探しの手の内を公開してくれた――。

※本稿は、大木淳夫『50歳からの美食入門』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。
■お店探しの手の内、教えます…検索のマイルール
この項ではどうやってお店を探しているかをお伝えしたいと思います。目的がはっきりしているほど、検索は容易です。例えば単純に東京のニューオープン店を探すのであれば、検索サイトに「ニューオープンレストラン 東京」と入れれば、すぐにずらっと出てきます。
一番充実していてわかりやすいのは「食べログ」で、だいたいのお店は日付順に掲載されています。新しすぎて投稿が無くても、インスタのリンクもあるので、そこからリアルな情報も得られます。
私たちのように仕事で新しいお店を探す場合は、さらに「求人飲食店ドットコム」「エフラボ」といった飲食店専門の求人情報や「インディード」などの募集告知で新規オープン店も探します。
他にプレスリリースの「PR TIMES」、クラウドファンディングの「Makuake」、高級店専門の予約サイト「OMAKASE」の新規掲載店情報も参考になります。
そもそも今の時代、やたらに新店を検索していたらアルゴリズムで勝手に情報が上がってきますけれどね。
ウェブサイトだと「フードスタジアム」と「食べログマガジン」はニューオープン情報が充実しています。
有料情報ならホイチョイ・プロダクションズの「東京いい店」アプリでしょう。毎週、馬場康夫さんが独特の視点で新店を3店紹介。
一読者として単純に楽しみでもあります。
ニューオープンに限らずですが、地方でいいお店を探すのはなかなか大変です。その場合は「TERIYAKI」が有効です。私もメンバーのひとりですが、堀江貴文さんをはじめとした、日本中で食べこんでいる「テリヤキスト」がお店を紹介しているので、人里離れたニッチなお店やマニアックなレストランなどが多く出ていてびっくりします。
個人的にはスマホのメモ機能も活用しています。日本ガストロノミー協会が毎週発行しているメールマガジンで、私が連載している「今週の1行情報」というニューオープン情報があります。それをコピーして、フォルダを作ってペーストしておくのです。メモには検索機能があるので、例えば「六本木」と入れれば、該当店舗がすぐに何軒も出てきます。
多くの方はグーグルマップもしくはインスタでの検索だと思いますが、メモに気になった情報を放り込むという手も意外に便利です。
スマホに入れてある私の取材メモから、2024年以降にオープンした主なレストランの情報をまとめてみました。223店あります。
■いい店を見分ける基準
検索自体はこのようにいくらでも方法はあるのですが、そのお店がはたしてわざわざ行ってみるほどの価値があるのか? どこで見極めるのか? それが重要ですよね。

一番わかりやすい指標は、そのお店のオーナーやシェフの修業先です。信頼できるお店や有名店の出身だったり、姉妹店であれば、およその実力はわかります。ただ、箔をつけるためにちらっとだけお店に入って「○○で修業しました、○○出身です」という人もけっこういます。
地方の大人気店が東京に進出! という場合もフランチャイズ契約である場合が多いです。別にそれが悪いわけではないのですが、全く同じとは思わないほうがいいでしょう。
最近ではミシュラン星付き店の系列と宣伝しながら、実はそのお店の権利だけを買い取っている場合もあります。
インスタで、修業先の師匠と一緒に写っている画像をアップするシェフも多いですが、お墨付きの証明として掲載しているのかもしれません。
お店への書き込みも重要ですね。こちらも大絶賛している人の投稿がその1件だけだったりすると、ほぼ間違いなく関係者ですのでご注意ください。
ですから「食べログ」や「Retty」の書き込みやインスタは、信頼できそうなレヴュアーを見つけてフォローしたほうが確実ではあると思います。オリジナルな基準をひとつ作ることもいいかもしれません。
点数は参考にしてもしなくてもいいですが、会食の際に「食べログ4点なんです!」とか言うと説得力があるみたいですね。

料理の画像を参考にする人も多いです。写真は嘘をつかないからと。しかしながらこれも加工アプリを使用した画像は多いですし、インパクトを与えるためだけの料理を出すお店もあるので、冷静に見るほうがいいと思います。
私は料理写真を撮る時は「Foodie」というアプリを使っていますが、何よりシャッター音がしないのがありがたいですね。
一方で料理がよりおいしく見えるように、テーブルの照明を調整しているようなお店は上手だなとも思います。
あとはやはりしっかり取材をしているメディアは参考になると思います。
東京最高のレストラン』は何千店もの飲食経験があり、なおかつお店の歴史や裏事情も熟知したプロが実際に食べて、いいと判断したお店だけを掲載しています。
dancyu』や『婦人画報』といった、事前にきちんとプロが試食をしてから掲載している雑誌も信頼がおけます。
有料の紙メディアは部数減が続いていて、『dancyu』は月刊から季刊になってしまいました。しかし、プロたちがしっかりお金と時間をかけて作るものはもっと信頼されていいのではと思います。

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大木 淳夫(おおき・あつお)

『東京最高のレストラン』編集長

1965年東京生まれ。学生時代から好きな場所は「レストラン」だった。
学習院大学卒業後ぴあに入社。ぴあ編集部時代、3年かけて田中康夫氏に依頼を続け『いまどき真っ当な料理店』を刊行。2001年『東京最高のレストラン』を創刊、編集長となる。編集担当作品に『随筆 一食入魂』(小山薫堂)、『新時代の江戸前鮨がわかる本』(早川光)、『東京とんかつ会議』(山本益博、マッキー牧元、河田剛)など多数。また「食べログマガジン」で「大木淳夫の新店アドレス」を連載、堀江貴文主催のグルメサイト「TERIYAKI」ではテリヤキストとしてウェブメディアでも執筆。「料理レシピ本大賞 in Japan」の特別選考委員、「日本ガストロノミー協会」理事。

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(『東京最高のレストラン』編集長 大木 淳夫)
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