仕事のデキる人、デキない人の違いはどこにあるのか。銀座の高級クラブ「クラブ由美」のオーナー・伊藤由美さんは「爪は人の本性を見抜く重要なバロメーターになる。
それに加えて、多くの経営者や成功者が手入れを怠らない重要パーツがもうひとつある」という――。(第2回)
■初対面で必ず確認すること
長年にわたり銀座の高級クラブ「クラブ由美」のオーナーとして、多くの成功者、そしてそうではない人たちと接してきた私には、初対面の相手が「仕事のデキる人」かそうでないかを見抜く、明確なポイントがあります。
仕事で初対面の人と挨拶を交わすとき、最初に目がいくのは、やはり顔でしょう。しかし、次に私が必ず確認するのは、「手の爪」です。
多くのビジネスマンは、スーツや髪型、持ち物には気を配りますが、爪の手入れは無頓着で疎かにしがちです。だからこそ、爪をきちんと手入れしているかどうかが、その人の「気づかい」と「自己管理」のレベルを測る重要なバロメーターになるのです。
爪の手入れが行き届いている人は、清潔感があり、マメで細かいところに配慮が行き届いている印象を与えます。逆に、爪が長く伸びっ放しで爪の間に垢がたまっているような人は、相手に不潔感や不快感を与えるだけでなく、「日常生活がだらしなさそう」というネガティブなイメージを持たれかねません。
■手の爪に本性が宿る
「爪は口ほどにものを言う」とも言われますが、爪の清潔さにはその人の本性が宿ります。爪をきれいにしている人は、自分の手元が常に見られていること、そして手や爪が自分のイメージを左右することを自覚している人です。
仕事のデキる人は、こういった「人に見られている意識」を常に持っているものです。営業で名刺を渡す際、ささくれができていたり、爪が不衛生だったりすれば、相手に「この人は自分の管理ができていないのではないか」という不安を与えてしまいます。

一方で、爪の手入れを疎かにしている人は、自分が周囲を不快にさせていることに気づかない鈍感な人とも言えるでしょう。これは「デキる人」とは真逆の性質です。爪の手入れは、仕事の能力とは次元が異なる、社会人として最低限の身だしなみなのです。指の長さや太さ、形は変えられなくても、爪の手入れなら誰にでもできるはずです。
初対面での名刺交換は、手の爪が否応なしに相手の目に触れる、最も重要な瞬間です。名刺交換の際だけでなく、書類をめくる時やパソコンのキーボードを叩く時など、手元は常に周囲の視線を集めています。
手が綺麗、指先が綺麗な人には、やはり好感が持てます。爪を短く切りそろえておくこと、そしてささくれや不衛生な爪がないかを確認することは、相手へのリスペクトを示す行為です。
爪が伸びていないか、爪先が黒ずんでいないか。自分では気にならなくても、周囲の人はちゃんと見ています。世の殿方には、「毎朝出かける前の指先チェック」をルーティンにしていただきたいと思います。爪先一つでビジネスマン失格の烙印を押されかねないのです。

■スーツよりも靴を見る
爪と並んで、仕事のデキる人を見抜く上で重要なのが「靴」です。多くの経営者や成功者は、総じて靴を大切にされています。彼らは高価な靴を履いていることもありますが、それ以上に「大切に使おう」という意識を持っている印象があります。
忙しい中でも、履いた靴を毎回自分で磨く、傷んだらリペアに出すといった手入れを欠かしません。こうした手入れの行き届いた靴からは、「モノを大事にする人」「見えないところにまでしっかり気を配れる人」という印象が伝わってきます。
逆に、手入れをしていない汚れた靴は「道具に気を使わない人」「汚れても放っておく人」というネガティブな印象につながりかねません。ビジネススニーカーのような革靴っぽいビニール素材の靴を履いて大切な営業先に現れるような人は、「お客さんから軽く見られても構わない」というメッセージを無意識に発していると思われても仕方がないでしょう。
靴がピカピカに磨かれているか、靴に気合いが感じられるか。これはその人の仕事への姿勢を表しています。
■銀座ママが選ぶ“とっておきの贈り物”
そうした「仕事のデキる人」「人のことを大切にできる人」とお近づきになりたいと思ったときには、さまざまなアプローチがあります。
もちろん、お客様であれば心を込めて接客をすることは当然ですが、「この人とお近づきになりたい」と思ったら、私は「普通には手に入らないもの」「すぐに手に入らないもの」を贈るようにしています。
以前からお客様にはネクタイをプレゼントしていますが、ノーネクタイで仕事をされる方が増えた今、小物類をお贈りすることもしばしばです。
さらに、私がここぞというときに選ぶのは、「村上開新堂」(*1)のクッキーです。
缶いっぱいにクッキーが詰め合わせられ、レトロ感たっぷりな品物ですが、一番小さいサイズでも約8000円、最も大きいサイズだと約3万6000円と非常に高価です。さらに、それ以上に貴重なのが、購入者からの紹介がなければ買えないという点です。会員制のようになっているため、予約しても1年以上待ちになり、次はいつ入荷できるかわからない状態の超人気クッキーです。
「普通には手に入らないもの」を贈ることで、その品物の価値がわかるお客様に対して、「あなたを大切に思っています」というメッセージを伝えているのです。以前、とある大物政治家の方からのご依頼で、このクッキーを2箱用意したことがありますが、その際も非常に喜んでいただけました。
(*1)村上開新堂の公式サイト。2025年10月現在、新規購入者の登録は停止している。
■お願い事をするときに、大切にしていること
さきほどの村上開新堂のクッキーのように、さまざまなお願い事をされることがあります。具体的には、コンサートのチケットを取ってほしい、大相撲のチケットを取ってほしい、などチケットに関するお願い事が少なくありません。
こうしたお願い事をお客様から頼まれたときは、チケットを手配できる別のお客様に私から頼み込んで手配していただくわけですが、そうした際に自分のなかで大切にしているルールがあります。
まずは、必ず頼んできた相手が直接の知り合いであること、です。
これは当然のことですが、自分にとって「大事な人」でなければお願い事を受けることはできません。
こちらが頭を下げるだけでなく、相手も誰かに頭を下げることになるかもしれない。だからこそ、「大事な人」のためでなければお願いは受けません。友達の友達といった面識のない人のために借りを作るのは、義理を欠く行為だからです。
また、頼む相手に対しては、「誰に頼まれたか」を明確に伝え、「頼んでいる側の想い」をしっかり伝えることです。
たとえば、先般、お店のスタッフの家族が重い病気に罹り、「相撲が好きで大ファンの横綱の応援に行かせてあげたい」とお願いされたことがありました。そうした具体的な想いを伝えることで、頼まれた側もそのチケットの「重み」を感じて一肌脱いでくれるものです。
安易に頼み事をしたり、逆に頼んだことすらを忘れてしまうような人は、人との関係性や「借り」の重さを軽視している人です。「義理」と「人情」という、仕事のデキる人が大切にする人間関係の基礎ができていないと言えるでしょう。

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伊藤 由美(いとう・ゆみ)

銀座「クラブ由美」オーナー

東京生まれの名古屋育ち。18歳で単身上京。1983年4月、23歳でオーナーママとして「クラブ由美」を開店。
以来、“銀座の超一流クラブ”として政治家や財界人など名だたるVIPたちからの絶大な支持を得て現在に至る。「一般社団法人 銀座社交料飲協会」の常任理事を務める。

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(銀座「クラブ由美」オーナー 伊藤 由美)
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