※本稿は、井手隊長『ラーメン一杯いくらが正解なのか』(ハヤカワ新書)の一部を再編集したものです。
■なぜ「ラーメン二郎」は安くて量が多いのか
「ラーメン二郎」は自家製麺の店が多い。かつてテレビで「ラーメン二郎」のとあるお店が取材されていたが、「なぜ自家製麺なのか」と聞かれて、「自家製麺をすれば、たくさんの量を出せるからだ」と答えていたのが印象的だった。
オーションという強力粉を使っていて、ワシワシと物凄くコシのある麺で、濃厚な豚骨醤油スープにも負けないパワーがある。自家製麺でコストを抑えて作ることで、安く出すことができ、お腹いっぱい食べてほしいという思いが込められている。
早く食べないと麺が伸びてしまうので、ジロリアンの中では「天地返し」といって野菜の上に麺を避けて伸びないようにしながら食べるという裏技もある。カスタマイズができるので、それぞれの好みの量、味に調整して食べられるのも魅力だ。
ちなみに「二郎」では「ニンニク入れますか?」と聞かれたら、野菜の量、ニンニクの量、脂の量、味の濃さを指定するルールだ。「ニンニク入れますか?」「野菜マシ、ニンニク少し、アブラ、カラメで」という流れである。これを「コール」と呼ぶ。
■二郎は替えのきかない唯一無二のラーメン
最近では、食べ切れないという人も多いので、麺少なめや麺の量をグラム単位で注文できるお店が出てくるなど、多様になってきている。
私がラーメンの食べ歩きを始めた2000年代初頭においては、二郎系のお店はそれほど多くなかったが、ここから一気に20年かけてお店が増えてきた印象がある。横浜家系ラーメンの資本系のお店が増えてきた時と違って、二郎系の初期のお店はどこもそれなりにクオリティが高かったことが大きいだろう。
加えて、見た目のフォルムを似せやすいということもあり、二郎系に飛びつくお店が多かったともいえる。ある程度のクオリティを保っていれば、どこも行列店になりやすく、お客さんも皆お腹いっぱいになるので、満足度も高くなる。
店の数が増え、明らかに飽和状態と思えたが、増えても増えてもお客さんが入るので、「二郎系」は無敵のコンテンツの一つではないかと感じている。
■「二郎系」のお店が増えた2つの理由
安くて量が多くて中毒性がある二郎系ラーメン。これほどの魅力を持つラーメンはなかなかなく、インスパイア系も含めてお店が増え続けることは理解できる。しかし、こんなに量が多くて儲かるのかというシンプルな疑問が湧いてくる。
本家の「二郎」への取材はなかなか難しいので、今回はインスパイア系の人気店「麺でる 相模原店」の店主・上野智工さんを取材した。まずはなぜこれほどまでに二郎系のお店が増えるのか、だ。
「理由としては二つありまして、まずは、二郎系をやっていれば集客できて、利益を得られるだろうというお店側の安易な発想です。
マシマシの野菜にどデカい豚、大量の極太の麺という誰が見てもわかりやすいフォルムの二郎系はお店としては飛びつきやすい。クオリティには差がありつつも、どこもそれなりに混んでいるので、お店が増えていくわけだ。
本家の「二郎」のようにスープをお店で炊いて、麺は自家製麺というお店だけではなく、業務用スープで麺も製麺所のものを使っているお店も当然増えてきている。
■アクセスが悪くても客はやってくる
二郎系のお店は今いくらでも増やせる状況だ。当然その分閉店しているお店も多いのだが、それだけ需要があるということなのである。上野店主の言う「安易な」というのがポイントで、以前ほど本家の「二郎」をリスペクトするお店だけではない印象だ。
ファンとしては、フォルムや看板を似せるだけではなく、「二郎」へのリスペクトを忘れないでほしいと思う。
しかし、なぜあんなに量が多いのに儲かるのかという疑問が残る。いくら自家製麺でも、小麦の価格も高騰しているし、あの量ではとても儲からないのではないか。
「まずは、二郎系は立地問わずお客さんが入るので、安いテナントを探して出店できるということです。
あとこれは二郎系に限らずですが、お客様に下膳やテーブル拭きなどを協力していただき、人件費を最小限に抑えているお店が多いです。そもそもが薄利多売の精神なので、皆様が思っているより儲けは少ないのが現状だとは思います」(上野さん)
■変化を求められる二郎系
二郎系はこのまま1000円以内で提供できるのか。一部の人気店では1000円を超える値付けのお店も出てきたが、一般的には二郎系はまだまだ安い。
「基本的には1000円以内での提供は厳しくなると思います。原材料の高騰のみでなく、水道光熱費や人件費など必要経費がすべて高騰しているので、今後もきちんとラーメンのクオリティを保ち続けるならば1000円は超えると思います。
今後の二郎系は、むしろ変化していく必要があると思います。1000円以上の値付けにするのか、量を減らすのか、作り方を変えるのか、どうするにせよお客様あってのお店なので、お客様が何を求めているのかを常に考えて、柔軟に営業スタイルを変えていく必要はあるかと思います。その中で、量を減らすという選択肢があっても良いかもしれません。
お客様もなかなか懐事情は厳しいかと思うので、お客様が納得して支払いをする理由(食材やお店の雰囲気も含めて)を作るのも一つだと思います」(上野さん)
■二郎系は低価格を維持できるのか
長く低価格を保ててきた理由として、豚肉が今日ほどは高騰してこなかったことのほかに、最低賃金が低かったことが挙げられると上野店主は分析する。
10年程前の2014年においては、東京のアルバイトの最低賃金は888円だった。
「二郎系がブームになるまでは競合店が多くなかったので、まだ薄利多売が成立しやすかったということもありますね。今は二郎系を提供するお店が増えたので、お客様の取り合いが発生していると思います。これまではやはり数を売ってなんぼの世界でした。今後は少しずつ変わっていかなければいけないと思います」(上野さん)
安くて量が多くて満足できる二郎系のイメージは今後変わっていくのだろうか。現状を考えると、チェーン店でまとめて仕入れと仕込みをしてスケールメリットを出していくぐらいしか低価格を維持できる方法が見当たらない。今後は低価格の二郎系と、1000円オーバーの二郎系に二極化していく可能性もある。
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井手隊長(いでたいちょう)
ラーメンライター、ミュージシャン
全国47都道府県のラーメンを食べ歩くラーメンライター。東洋経済オンライン、AERA dot.など連載のほか、テレビ番組出演・監修、コンテスト審査員、イベントMCなどで活躍中。自身のインターネット番組、ブログ、Twitter、Facebookなどでも定期的にラーメン情報を発信。ミュージシャンとして、サザンオールスターズのトリビュートバンド「井手隊長バンド」や、昭和歌謡・オールディーズユニット「フカイデカフェ」でも活動。
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(ラーメンライター、ミュージシャン 井手隊長)

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