■地域別価格を導入しているマクドナルド
近年、ファストフードなどの外食の価格が地域によって変わり始めているのをご存じでしょうか? いわゆる地域別価格です。
例えば、マクドナルドでは2023年から地域別価格を本格的に導入し、『都心型店舗』『準都心型店舗』『通常価格店舗』『特殊立地店舗』の4種類の価格を設定しています。
また、スターバックスやコメダ珈琲店、スシローなどでも、都市の規模などによって値段に差をつけています。外食チェーン各社が地域別価格を導入・拡大している背景には、地代や賃料、人件費といった、店舗の維持・運営にかかるコストが都市部を中心に高騰していることがあります。
もちろん、全国一律で値上げすることも可能ではありますが、地方の店舗で都市部と同じように大幅な値上げをすると、客離れを起こしてしまう可能性があります。そのため、都市部ではコストの増加分を価格に適切に転嫁して利益を確保し、地方では顧客が受け入れやすい価格を維持することで、全体の売上と利益の最大化を図っているものと考えられます。
さっそく、マクドナルドの店舗を価格設定によって色分けしてみました(図表1)。出典はマクドナルドの公式サイト(2025年8月時点)です。
■渋谷・新宿は「都心」、上野は「準都心」
冒頭でも触れたように、マクドナルドは4種類の地域別価格を導入しています。まずは都心店の広がり方から、マクドナルド本部の考える「都心」の範囲を探ってみましょう。
(1)都心店:賃料や人件費が特に高い大都市圏の一部の店舗(ビッグマックの価格:通常店+60円(2025年8月下旬時点))
(2)特殊立地店:賃料や人件費が特に高い空港、サービスエリアなどの施設内の店舗(同+60円)
(3)準都心店:都心部の周辺など、運営コストがやや高いエリアにある店舗(同+20円)
(4)通常店
東京都心周辺では、山手線の南半分に都心店が集中していますね。上野から池袋までを時計回りに結んだ区間(上野~東京~品川~渋谷~新宿~池袋)では、多くの店舗が「都心店」に設定されています。
一方で、北側の区間(池袋~田端~上野)はほとんどが「準都心店」。東京をぐるりと一周する山手線の中でも、オフィス街や繁華街が発達している区間と、住宅地としての性格が強い区間がはっきり分かれる結果となりました。郊外に向かう路線を見ると、駅ビルや商店街、オフィス街などが発達した「駅力」(駅を中心とした商業・交通の吸引力)の高い駅がわかります。
■同じ駅でもマクドナルドの価格差が生じる
JR中央線の中野、荻窪、吉祥寺、三鷹は通勤快速(平日運転)や快速(休日運転)の停車駅。下北沢、三軒茶屋、自由が丘、武蔵小杉も城南、城西エリアを代表する商業地で、休日には多くの来街者で賑っています。
JR京浜東北線では品川から川崎に「都心型店舗」が連なっています。大森駅の1日あたりの乗降客数は15.6万人(2023年度)で、二子玉川(13.8万人)、自由が丘(13.2万人)より多いです。
都心の周辺では、舞浜のイクスピアリ、押上の東京スカイツリータウン・ソラマチ、お台場のダイバーシティ東京などの大型商業施設にも「都心店」が入っていますね。これらのショッピングモールはそれ自体が強力な集客装置で、その集客力に見合った高い賃料が設定されています。
また、遠方からはるばる遊びに来る「ハレの場」でもあるため、日常的な食事に比べて価格への感度が低くなる、つまり財布の紐が緩みやすくなるという消費者心理も無視できないでしょう。
もう一つ興味深い点として、同じ駅の周辺でも価格差が生じていることが挙げられます(図表2)。
例えば、東急東横線、JR南武線、JR横須賀線などが乗り入れる武蔵小杉駅(川崎市中原区)では、東急の駅ビルに入居する「武蔵小杉東急スクエア店」が都心店なのに対し、駅からやや離れた「クラッセンス武蔵小杉店」は準都心店となっています。
■八王子、川越を境に増える「通常店」
飲食店や商店の賃料はとても素直なもので、目抜き通りから少し外れたり、信号を一つ渡るだけで数十%以上の差が生じることも珍しくありません。首都圏では赤羽、北千住、川崎、横浜、千葉でも同様の価格差が見られるので(2025年5月現在)、ぜひ一度現地を訪れて、駅からの距離や通行量の違いを確認してみてください。
さらに「準都心店」の広がり方を見てみましょう(図表3)。
東京都心から各方面に広がる鉄道網に沿って「準都心店」が広がっていますが、都心から離れるにつれてだんだんと「通常店」が混ざるようになり、ある駅を境に「準都心店」もぱったりと途絶えます。
平塚(JR東海道線)、本厚木(小田急線)、八王子(JR中央線)、川越/本川越(西武、東武、JRなど)、大宮、我孫子といった郊外の拠点駅を過ぎると、東京の直接的な影響力が弱まり、地域の性格が「首都圏の郊外」から「関東地方の外縁部」へと変化していくという見方ができるでしょう。
■岐阜駅周辺はすべて「通常店」
首都圏以外の主な都市圏も見てみましょう。
●近畿圏
まず、近畿圏では、大阪、京都、神戸の中心部が「都心店」に設定されているほか、EXPOCITYやユニバーサル・シティなどの大規模商業施設内の店舗も「都心店」となっています(図表4、図表5)。
近郊エリアでは阪神間と北部の千里ニュータウン、南部の堺市方面に準都心店が見られるほか、神戸市のベッドタウン・明石や兵庫県西部の中心都市・姫路にも準都心店があります。
●中京圏
中京圏では都心部(名古屋駅周辺、栄、金山)を除き、ほとんどの店舗が通常店です。そんな中でも、名古屋市郊外の良好な住宅地「八事(やごと)」「藤が丘」や、周辺エリアの中心都市「豊橋」「四日市」が準都心店になっているところに中京圏の多面性を感じます(図表6、図表7)。
ともすれば「名古屋を中心とした大都市圏」だと思われがちな中京圏ですが、実際には尾張、三河、北勢(三重県北部)、美濃という独自の経済圏が緩やかに重なり合うエリアであり、それぞれに中心性の高い商業・工業都市が存在しているのです。
一方、岐阜駅周辺がすべて「通常店」となっているところに、名古屋市と岐阜市のパワーバランスが見えてきます。
■札仙広福の中で経済規模が一番大きい福岡
●福岡
3大都市圏以外では、福岡の中心部(天神、博多など)にも都心店があります(図表8)。
他の章でも触れていますが、札幌、仙台、広島、福岡という100~200万人クラスの都市圏では、福岡が経済規模の点で頭一つ抜けており、商業地の地価も地方の中核都市としては非常に高い水準です。
その他、全国の主な都市(おおむね中核市クラス、都市圏人口30~50万人以上)の中心部に準都心店が見られます。その多くは県庁所在地ですが、佐世保、福山、姫路、浜松といったセカンドシティ(地域の中で2番目に大きな都市)にも準都心店があり、「もし○○県が分割されたら、県庁所在地はどこ……?」といった想像をかき立てられます。
全国の都心店の中でも一つ異色の存在と言えるのが、2025年7月に沖縄県石垣市にオープンした「マクドナルド石垣島店」です。
もちろん、観光需要による地代の高騰も無関係ではないと思われますが、沖縄では主に海上輸送(冷蔵・冷凍コンテナなど)に依存するため、物流コストが高くなりやすいという離島特有の要因も推察されます。
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にゃんこそば
データ可視化職人
東京都生まれ、神奈川県育ち。個人活動としてオープンデータや公的統計の可視化に注力。国土交通省や内閣官房、東京都など官公庁との活動実績多数。著書に『ビジュアルでわかる日本 データに隠された真実』(SBクリエイティブ)。
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(データ可視化職人 にゃんこそば)

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