睡眠の質を高めるには、何をすればいいか。脳や精神もしっかり休めて回復させるため、寝室にネットにつながる電子機器は持ち込み禁止にするといいという。
『すぐやる人の小さな習慣』(三笠書房)より紹介しよう――。
※本稿は、大平信孝、大平朝子『すぐやる人の小さな習慣』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■仕事に余裕があるときは仕事をしない
どんなに忙しい仕事にも波があるので、特段差し迫った締め切りがなく、ゆるやかにすごせる日があるかと思います。そんなとき、「前倒しで仕事を進める」こともできますが、私はあえて、仕事以外のことを考えるのをオススメしています。
当たり前かもしれませんが、私たちは、「仕事のためだけ」に生きているわけではありません。人によって仕事をする目的は異なるかもしれませんが、あくまでも、仕事は「手段」であって「目的」そのものではないのです。
ですが、日々、仕事に忙殺されると、いつの間にか「目の前の案件を迅速に処理すること」「仕事で成果を出すこと」が目的になってしまうことがあります。
すると、「仕事の処理能力=自分の価値」と思い込んだり、必要以上に数字や成果を追ってしまいがちです。私自身も含めて、仕事に没頭しすぎると、自分の人生を置き去りにしてしまうことがあります。
かといって、「この案件を処理することは、自分の人生にとってどんな意味があるのだろう?」と、毎回考えるのは、あまりに重たすぎます。
仕事に余裕があるときは、目先のことだけでなく、人生全体について考えることのできる数少ないチャンスです。
こんなとき、私は「キャリア全体」「ライフ全体」について、考える時間を取ることをオススメしています。

■休暇を多く取るほど、業務評価が改善する
そうはいっても、「キャリア」や「ライフ」という言葉自体があいまいなので、どう考えたらいいかわからない方もいるでしょう。難しく考える必要はありません。
「次の休日に、何をしようかな?」

「休みの日、どんなことをしたら楽しいかな?」

「自分が楽しめることって、何だろう?」
と考えてみるだけでOKです。
この小さな習慣は、勤務時間外に自宅でやってもいいのですが、意外にもある程度の緊張感がないと、なかなか実践できないので、まずは会社で実行してみてください。
私のお客さんのなかには、オフィスの机でスケジュールを見ながら考える方もいますし、オフィス内を歩き回りながら考える方もいます。
ここでの狙いは、「自分の人生があってこその仕事」「仕事は、自分の人生を充実させるための手段の一つ」という原則を忘れないこと。
じつは、「休暇を多く取るほど、業務評価が改善する」という調査結果も出ています。大手監査法人のアーンスト・アンド・ヤングの調査では、従業員の十分な休暇によって業務評価が向上し、離職率が低下したのです。
目の前の業務から一度離れることにうしろめたさを感じる必要はまったくありません。ぜひ一度、具体的な案件や締め切りから離れて、ゆったりとした気持ちですごしてみてください。すると、いままで気づかなかった視点やアイデアが得られることもあります。
楽しむということは、心の栄養にもなります。
いまいち、仕事に集中できないという方は、まずは休日を充実させてみることもオススメです。
■スムーズに就寝できる「パワーオフソング」
居酒屋でどんなに話が盛り上がっていても、お店で買い物に夢中になっていても、BGMで「蛍の光」が流れてくると、「閉店の時間だ!」と感じて、急いでお店を出たくなったり、急に帰りたくなったりします。
おそらく、私たち日本人には、「蛍の光=卒業式=別れ=閉店間際」というイメージが刷り込まれているのだと思います。
お店側としても、いきなり閉店するよりも、「蛍の光」を流して、お客様に閉店を予告しておいたほうが、スムーズに閉店できます。
そこで、同じように就寝前に「パワーオフソング」をかけて、少しずつ緊張をゆるめて寝る準備をすることで、スムーズに就寝できます。パワーオフソングを流すことを小さな習慣として日常に取り入れてみましょう。
選曲は、「マイ・オープニングテーマ」とは異なり、しっとりと心を落ち着かせるナンバー。「ムーンリバー」やドビュッシーの「月の光」などがオススメです。
私のお客さんのなかには、歌が入っていないヒーリングミュージックをパワーオフソングにしている方もいます。その曲を聞きながら歯を磨いたり、パジャマに着替えたりして、頭も気持ちも少しずつオフモードにしていきます。
特に、忙しく働いた日は、しっかりオフモードに切り替えてから眠るための儀式として、あえてこういう小さな習慣を取り入れると、寝つきもよくなります。
■睡眠「時間」は増やせなくても「質」は上げられる
夜寝る前に、パソコン、スマホ、タブレットなど、ネットにつながるすべての電子機器をオフにする。
ぐっすり眠れて、寝起きもよくなります。
「ちゃんと寝ているはずなのに、疲れが取れない」「何だか眠った気がしなかった」など、誰でも睡眠不足が原因で、冴えない一日をすごしたことはありませんか?
頭では、「もっと眠ったほうがいい」とわかっていても、仕事の締め切りが迫っていたり、残業や接待、懇親会などの予定があったり、通勤に時間がかかったり……。
仕事以外にも、人づき合い、勉強、トレーニング、ボランティア、気分転換、ストレス発散、子育て、家事、介護など、人それぞれに、睡眠時間を削らざるをえない事情もあるかと思います。
睡眠不足になると、体力や集中力だけではなく、精神状態にも影響します。イライラしたり、無性に不安になったりする原因が、睡眠不足というのはよくあることです。それだけでなく、判断力も鈍ってしまいます。
睡眠の効果は、「時間×質」で決まります。睡眠「時間」を増やすのは難しいという方は、睡眠の「質」を上げる小さな習慣をオススメします。
■ネットにつながる電子機器は、「寝室に持ち込み禁止」
私は、ネットにつながる電子機器は、「寝室に持ち込み禁止」にしています。夜は、体だけでなく脳や精神もしっかり休めて回復させるためです。
オンとオフの線引きをはっきりさせるため、21時以降はネットも極力見ないようにしています。
就寝時間が近づくと、テレビはもちろん、パソコン、タブレット、スマホなどネットにつながるすべての電子機器類を完全にオフにして、「よかったこと振り返り」をしてから一日を終えるようにしています。

先の記事でご説明した朝の「入(いり)」の時間と同じくらい、私は、就寝前の「出」の時間もとても大切にしています。
脳科学的にいっても、どんな状態で1日を終えるかは重要です。
なぜなら、脳は「眠りにつく直前の、イメージを、就寝中にくり返し再生する」という特性があるからです。
「スマホを手放すなんて無理」「ネットをオフにしたら、逆に心配になって寝つきが悪くなりそう」
もしかしたら、そう思われた方もいるかもしれません。また、就寝前にスマホで音楽を聞くのが日課、スマホのアラーム機能で毎朝起きる習慣があるという方もいると思います。
■いったん「外とのつながり」を断つ
私のお客さんのなかには、寝室では「機内モード」をオンにして、Wi-Fiにつながらないようにしている方もいます。
不便にならない範囲で睡眠の質を上げるために、ちょっとした工夫をしてみてください。
大切なのは、眠りにつくときには、いったん「外とのつながり」を断つこと。
睡眠の質が上がれば、仕事のパフォーマンスも自然と上がります。体力、集中力、精神状態が変わると、ダラダラモードを卒業する着実な第一歩になります。
ネットを完全オフにすることが心配な方は、まずは仕事がない週末だけでもいいので、ぜひ取り組んでみてください。目覚めのスッキリ感が変わってきます。


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大平 信孝(おおひら・のぶたか)

メンタルコーチ

アンカリング・イノベーション代表。目標実現の専門家。長野県生まれ。中央大学卒業。脳科学とアドラー心理学を組み合わせた独自の目標実現法「行動イノベーション」を開発。現在は、法人向けに、チームマネジメント・セルフマネジメントに関する研修、講演、エグゼクティブコーチングを提供している。個人向けには「行動イノベーション年間プログラム」とオンラインサロンを主宰。近著に『やる気に頼らず「すぐやる人」になる37のコツ  科学的に先延ばしをなくす技術』『指示待ち部下が自ら考え動き出す!』(ともにかんき出版)、『先が見えなくても、やる気が出なくても 「すぐ動ける人」の週1ノート術』(PHP研究所)。公式サイト

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大平 朝子(おおひら・あさこ)

問題解決の専門家

国家公務員試験を主席合格。裁判所書記官として年間2000件の記録を扱う中で、問題解決のある法則を発見し、独立。教育団体、女性団体、外国人リーダー向けに、研修を実施。
無職の夫をベストセラー作家にした手法が注目され、女性経営者など3000人以上の問題解決に携わる。現在は、2人の息子の育児に加え、夫・プロコーチ大平信孝主催のコーチングスクールNEXTのマネジメント、コラム執筆も行なっている。

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(メンタルコーチ 大平 信孝、問題解決の専門家 大平 朝子)
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