仕事モードに入り集中できないときは、どうすればいいか。仕事環境を整え、気持ちも思考もスッキリするので、集中力が上がるという。
『すぐやる人の小さな習慣』(三笠書房)より紹介しよう――。
※本稿は、大平信孝、大平朝子『すぐやる人の小さな習慣』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■集中力が切れそうなときはお腹をへこます
根(こん)を詰める仕事を長時間続けて、どうも集中力が持続しない。けれど、まだまだ大事な仕事があって……。
「気合」で乗りきれるうちはいいのですが、誰でも、気分や集中力が下がってくると背中がだんだん丸くなったり、前屈みになって猫背になりがちです。すると、目線が下がるので、視野が狭まり、さらに気分も集中力も下がってしまいます。
こんなとき、休憩を取らずに簡単に仕切り直せる「小さな習慣」をご紹介します。
お腹にぐっと力を入れてへこませるだけです。こうすると、姿勢がよくなります。姿勢は、気持ちにも影響しますが、集中力にも影響します。
武道の達人は集中することの達人でもありますが、猫背の人はほとんど見かけません。それは、姿勢をよくするだけで、集中力が向上するからです。

理由は2つあります。
一つは、姿勢がよくなることで脊髄(せきずい)の神経回路の伝達がスムーズになるのです。脊髄には、重要な神経が集まっており、第二の脳ともいわれています。姿勢がよくなることで、神経伝達がスムーズになるわけです。
■「いい姿勢」は人によってバラツキ
もう一つは、姿勢がよくなることで、気管の通りがスムーズになり、その結果、呼吸が深くなります。すると、血液循環が増え、酸素も十分に供給されるので、結局脳へ供給される酸素量も増え、集中力が向上するのです。
なぜ、お腹をへこませるのかというと、「いい姿勢」というのは抽象的な言葉なので、人によってとらえ方にバラツキがあるからです。
「姿勢をよくしてください」と言われても、ピンとこない人もいるのです。
「お腹をへこませる」だと、誰でも結果的に、アゴを引いて背筋が伸びた美しい姿勢になります。
何か行動をしようとして、うまくいかない場合、その原因が「行動の定義があいまいだから」ということがあります。
そんなときは、誰でもすぐに理解できて、すぐ実践できるような表現に変えることで、あっさり行動できるようになることがあります。
余談ですが、私のお客さんのなかには、このお腹をへこませる小さな習慣を実践するようになってから、「お腹まわりがスッキリしてきた」というオマケがついてきて、喜ばれている方もいます。

「気持ち」は、切り替えてもすぐに下がってしまうこともありますが、「姿勢」は一度切り替えると、ある程度持続します。会議中などであまり動けないときにもこの小さな習慣なら実践できるので、オススメです。
■ウンザリするときは「2つのデスク」を片づける
机と、パソコンのデスクトップの「2つのデスク」がゴチャゴチャしていると、パチッと仕事モードに切り替えることが難しくなります。
考えがゴチャゴチャして整理するのに時間がかかるだけでなく、必要なものや情報にアクセスするのに時間がかかってしまうからです。
机に書類や筆記用具が散らかっている状態は、じつは思っている以上に私たちの負担になっています。
私たちが意識する・意識しないに関係なく、物があるだけで、それを管理するために、エネルギーを消耗しています。
なぜなら、人は視覚から得る影響が大きいから、というのは先述した通りです。物を減らすと、視覚からの情報が減るので、脳の負担も少なくなります。
これは、パソコンのデスクトップでも同じことがいえます。
机が散らかっていてウンザリするときは、机まわりと、パソコンのデスクトップの「2つのデスク」を片づける「小さな習慣」を行います。
見た目がスッキリすると、気持ちも思考もスッキリするので、集中力が上がります。
私のお客さんのEさんは、大きな締め切りがくる前に、必ず机の上とデスクトップ上をスッキリさせておくことを「小さな習慣」にしているそうです。

仕事環境を整え、気持ちよくすごすことも、セルフマネジメントに効果的です。
■先延ばしを回避するための小さな習慣
机が散らかっているけれど、片づける気にならないときは、一度にキレイにしなくてもOK。まずは「ゴミ箱をカラにする」ことからスタートしてみる。
「2つのデスク」を片づけたら、環境も気分もスッキリします。とはいえ、片づけが苦手な方がいきなり行うのは、ハードルが高く感じることがあります。
また、苦手な人ほど、「一度に完璧に」キレイにしようとする傾向があります。ただでさえ仕事で忙しいのに、2つのデスクを完璧にキレイにしようとすると、ものすごく面倒くさく感じてしまいます。すると、「別に今日やらなくてもいいか」と、ついつい先延ばしにしがちです。
そんなときでも、すぐにできる小さな習慣をご紹介します。
それは、たった1カ所だけでいいので「今日はここをやる」と決めて、あまり欲張らないこと。
まずは、机よりも取りかかりやすい、「ゴミ箱をカラにする」小さな習慣がオススメです。ゴミ箱だけでもスッキリすると、気分が軽くなります。
スッキリ感も気分のよさも伝播するので、今度は本当に机をスッキリさせたくなってきます。
気分が乗ってきたら、書類をシュレッダーにかけたり、デスクの上を拭くなど、簡単なことをプラスしてみましょう。
掃除は、一気にやろうとすると時間も手間もかかるので、行動のハードルが上がります。
行動のハードルを下げるためにはチャンク(塊)を小さくすることが効果的なので、掃除のチャンクも小さくすると、実行しやすくなります。
長くても1分以内でできる簡単な行動にするのが鍵! ちょこちょこやるようにすると、意外にストレスなくできるので、オススメです。

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大平 信孝(おおひら・のぶたか)

メンタルコーチ

アンカリング・イノベーション代表。目標実現の専門家。長野県生まれ。中央大学卒業。脳科学とアドラー心理学を組み合わせた独自の目標実現法「行動イノベーション」を開発。現在は、法人向けに、チームマネジメント・セルフマネジメントに関する研修、講演、エグゼクティブコーチングを提供している。個人向けには「行動イノベーション年間プログラム」とオンラインサロンを主宰。
近著に『やる気に頼らず「すぐやる人」になる37のコツ  科学的に先延ばしをなくす技術』『指示待ち部下が自ら考え動き出す!』(ともにかんき出版)、『先が見えなくても、やる気が出なくても 「すぐ動ける人」の週1ノート術』(PHP研究所)。公式サイト

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大平 朝子(おおひら・あさこ)

問題解決の専門家

国家公務員試験を主席合格。裁判所書記官として年間2000件の記録を扱う中で、問題解決のある法則を発見し、独立。教育団体、女性団体、外国人リーダー向けに、研修を実施。無職の夫をベストセラー作家にした手法が注目され、女性経営者など3000人以上の問題解決に携わる。現在は、2人の息子の育児に加え、夫・プロコーチ大平信孝主催のコーチングスクールNEXTのマネジメント、コラム執筆も行なっている。

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(メンタルコーチ 大平 信孝、問題解決の専門家 大平 朝子)
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