※本稿は、石川英昭『幸せな老衰 医師が伝える叶えるための「3つの力」』(光文社)の一部を再編集したものです。
■自分の老いを否定的に捉える人は老化が早い
真面目で誠実な人が健康で長生きできることは、複数の医学研究に裏づけられた事実です。
私自身も、高齢者の診察を通じて強く実感しています。では、どのような人が「誠実な老い方」をしているのでしょうか? 一緒に考えてみましょう。
誠実な人は、計画的で自己管理ができ、責任感が強い傾向があります。毎日の食事に気を配り、規則正しい生活を送ることで、歳をとっても元気に見えるのです。一方で、自分の老いを否定的に捉える人は、老化が早いという研究報告もあります。
若々しさを保つためには、きちんとした生活を心がけることが大切です。食生活の乱れは生活習慣病を引き起こし、逆にバランスのよい食事は病気予防になります。
慢性腎臓病を持つ高齢者が、栄養士や看護師の助言を守り、食事療法を続ける姿を見ると、応援したくなります。それには意味があるからです。
年齢とともに筋力が衰えると、精神的にもダメージを受けやすくなります。少しずつ体を動かし、外に出て太陽を浴び、十分な睡眠をとることが、心身の健康によい影響を与えます。規則正しい生活習慣が、心の健康にも役立ちます。
■誠実さは「幸せな老衰」を迎えるための確かな土台に
誠実な人は、良好な人間関係を築き、家族や友人との絆を大切にします。困った時に頼ったり、他人を助けたりする行動が、自然と孤独感を遠ざけ、健康を守ります。慎重さを欠く人は、事故やケガを招きやすいのです。孤立すると、うつや認知症のリスクが高まるのです。
アルコールを控え、怪しい健康食品を避け、体調に気を配りながら行動することが、事故を防ぎ、健康維持につながります。転倒やケガは、健康に大きな影響を与えるため、十分な注意が必要です。
医療との関わり方も大事です。
誠実さは、健康長寿に有利なのです。それは、性格や育った環境だけで決まるものではありません。歳を重ねても、学び、訓練することで身につけることができます。それが、「幸せな老衰」を迎えるための確かな土台となるのです。
それでは、誠実さがどう健康長寿に役立つのか、詳しく見ていきましょう。
■90歳を超えてなお元気なお年寄りの食生活
いつまでも自分の歯で食べられること。少しでも長い間、自分の足で歩けること。そして最後まで自分の頭で考えられること。この3つが、健康長寿の鍵となります。
最初のテーマは、健康長寿を支える食事です。
「これが長生きに効く食事だ!」と声高に主張する本は数多くあります。長寿食の研究によれば、長生きの秘訣は腸の健康に深く関係しているとされています。発酵食品や食物繊維は、確かに腸を元気にしてくれそうです。
一方で、たとえば加工食品を中心とした偏った食生活が、健康に悪影響を及ぼすことは明白です。腸の健康を守るための食生活は「腸活」と呼ばれます。体調を見ながら腸活を試すのはよい方法かもしれませんが、それがすべての高齢者にとっての正解とは限りません。
実際に、私が90歳を超えてなお元気なお年寄りに、食生活の秘訣を質問したことがあります。その答えは意外にも、「好きなものしか食べてこなかった」でした。
バランスのよい食事を摂ってきた、これだけは欠かさなかった、そんな答えを期待していた私は、少し肩透かしを食らったように感じました。もちろん、食事に気を遣って長寿を実現している方もいるでしょう。結局のところ、食事のスタイルも個々人によって違うのです。
ですからここでは、具体的な食事内容についてはいったん保留とさせてください。
結論を先にお伝えしますと、「朝食を摂りましょう」ということです。
■朝食のタンパク質摂取量が少ないと、認知機能に悪影響
朝食についても、健康によいとされる意見もあれば、そうでないという意見もあります。
しかし、それでも私は朝食を推奨します。その理由についてお話しする前に、少し別の話題に触れさせてください。
一般的に高齢者では、筋肉量が減り、筋力も低下します。これは老化による自然な現象ですが、近年ではこの状態に「サルコペニア」という病名が付けられるようになりました。
また、老化に伴う機能低下が原因で、健康が損なわれやすくなる状態を「フレイル」と呼びます。フレイルは、健康な状態から要介護の状態へ移る途中の段階を指します。
健康長寿のためには、このサルコペニアやフレイルの予防と対策がとても大切なのです。現在、社会的にも大きな注目を集めています。
サルコペニア対策には、適切な栄養摂取と運動が有効とされています。
高齢者はタンパク質をしっかり摂ることで筋肉量を維持できるということが、いくつかの医学論文で証明されています。さらに、朝食のタンパク質摂取量が少ないと、認知機能に悪影響との報告もあります。
今後のさらなる研究が期待されますが、朝食にタンパク質を含めることは、試す価値がありそうです。糖質や脂質、野菜なども加え、バランスよく品数の多い朝食にしてください。
■体内時計をリセットできる効果も
もう一つ、朝食の効用をお伝えします。私たちの体は、地球の自転に合わせて約24時間の明暗周期に同期しています。このサイクルを「概日リズム」または「サーカディアン・リズム」と呼びます。
これは、体内時計ともいわれ、朝の目覚めや夜の睡眠、呼吸や食事の吸収、ホルモンバランスなど、私たちのさまざまな生理機能に影響を与えています。
体内時計は自律神経と密接に関係しており、緊張や興奮を司る交感神経と、休息やリラックスを促す副交感神経のバランスで、うまく回っているのです。
同じカロリーを摂取する場合でも、朝食で摂る方が、消化吸収やエネルギー産生の効率がよいことがわかっています。逆に、夕食でたくさん食べると太りやすくなるのは、体内時計のしわざなのです。
さらに、食事を摂ることによって、体内時計をリセットできる可能性があるのです。朝食をしっかり摂ることで、体内時計は「朝が来た」と体を起こします。
その結果、日中は活動的に、夜は自然と眠たくなるリズムが生まれるのです。体内時計の働きは老化によって狂いやすくなりますが、朝食を通じてリセットされることで、心身のバランスが整うのです。
朝日をしっかり浴びて、タンパク質を含む朝食を摂れば、心も体もシャキッとするはずです。
■タンパク質を摂りすぎると悪化するケースに要注意
ただし、タンパク質の摂取に関しては注意も必要です。
まず、肉などの動物性タンパク質よりも、大豆などの植物性タンパク質を積極的に摂ることをお勧めします。肉の過剰摂取は、心血管疾患のリスクを高め、特に加工肉は消化器系「がん」の誘因ともされています。
また、慢性腎臓病(CKD)の方では、食事療法としてタンパク質摂取に制限が課されます。自覚症状が少ないため、タンパク質を摂りすぎると、気づかないうちに病状が悪化する恐れがあるのです。
持病によっては食事内容に制限がある場合もあります。その点にもご留意ください。ご自身の健康状態が不安な方は、医師の診察を受け、管理栄養士と相談して、適切な食事療法を実践してください。
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石川 英昭(いしかわ・ひであき)
医師
1973年、岐阜県生まれ。東海大学医学部卒業、名古屋大学大学院にて医学博士取得。腎臓専門医、透析専門医。現在、医療法人偕行会城西病院副院長、聖隷クリストファー大学臨床教授。勤務医として20年以上腎臓病診療に携わると同時に、老衰患者の「看取り医」としての職務を担っている。
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(医師 石川 英昭)

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