※本稿は、五十嵐剛『任せる勇気』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■「トップダウン一辺倒」では「やらされ感」が残る
あなたのチームや組織は「トップダウン型」でしょうか。
それとも「ボトムアップ型」でしょうか。
私は組織において、トップダウンは必須だと考えています。企業が一枚岩となって進むためには、一定の指揮命令系統をなくすことはできません。
しかし、人は原則、自分で決めたことしか主体的に動けません。そのため、トップダウンで言われることに対して、たとえそれがいくら正しくても、メンバーには「やらされ感」が必ず残ります。
すると、「面白くない」「納得できない」という反感が生まれやすくなり、その不満は知らずしらずのうちにリーダーへと向けられてしまうのです。
「トップダウン一辺倒」のチームが、表面上はうまく回っているように見えても、静かに機能不全へと陥っていくのは、これが原因です。
■トップダウンとボトムアップの融合でチームは動き出す
では、どうしたらよいのか。
その答えは、「双方向のコミュニケーション」を築くこと、つまり「トップダウンとボトムアップの融合」が鍵を握っています。
リーダーがトップダウンで方向性を示しながらも、現場からのボトムアップで気づきや提案、問題意識が吸い上げられ、それが組織全体に活かされる。
このような循環があってこそ、チームは自律的に動きだすのです。
もっとも、「双方向のコミュニケーション」と聞くと、何やら抽象的で難しそうに感じるかもしれません。
そこで、現場からのボトムアップを引き出すために、私が実践してきた具体的な方法を2つご紹介します。
■「おせっかいな張り紙」はいらない
1つ目は、とてもシンプル。
トップダウン指示を、できる限り減らすことです。
私が以前、ある会社を訪問した際、社内でこんな掲示を見かけました。
「エレベーター内会話禁止」
「有休取得を推奨します」
「退勤後は、必ず机をきれいに」
正直、私はそれを見たとき、強い窮屈さを感じました。
こんなことまで決められるのか、と。
社員は大人です。仮にどんな事情があっても、こんなつまらない貼り紙で指示されなくても、状況に応じて会話を控え、声量を調整できます。有休の取得タイミングも机の後片付けも、自分で判断できることです。
にもかかわらず、こうした「しなくてもいい指示」をわざわざ出すことは、メンバーの自律性を奪う典型的な「トップダウン指示」でしょう。
無意識や善意のおせっかいであっても、リーダーが口を挟めば、そのおせっかいはメンバーにとっては「命令」として受け取られてしまいます。
だからこそ「これは絶対譲れない」という、組織の存続や安全に直結するトップダウン指示以外は、思い切ってやめてください。
■「上からの指示」の「目的」を伝える
そして2つ目は、トップダウンの指示をそのまま伝えるのではなく、「メンバーからの提案」として引き出すことです。
大前提として、上から降りてきた指示を、そのままメンバーに伝えることはやめてください。
それではあなたは、ただの伝言役です。
伝言役のリーダーに、組織にとっての存在価値はありません。
リーダーがやるべきは、ここまで述べてきたように、トップダウンの指示を「メンバー自身の課題に変換してあげること」です。
そのためには、「指示」そのものを伝えるのではなく、その「指示の目的」を伝えることが大切になります。
■「メンバーからの提案」を自発的に引き出す
例えば、上から「売上を20%アップさせろ」という指示が出たとします。
このとき、残念なリーダーはそのまま「売上20%アップが目標だ」とメンバーに伝えてしまうものですが、あなたがメンバーに本来伝えるべきは、その指示の背後にある「なぜ」です。
「厳しい市場環境だが、クライアントとのつながりをさらに深めて、来期以降も組織が成長できる土台を固めたい。
このように、指示の背景にある「なぜ」を共有することで、単なるトップダウンの指示が「未来につながる目的」へと昇華していきます。
そして、その上で「この目的を実現するためには、君たちならどんな方法があると思う?」とメンバーに問いかけ、手段や方法を検討してもらうのです。
こうすることで、直接伝えたかったトップダウンの指示と、それほど遠くない提案が、メンバーから自発的に上がってきます。
その提案が上からの指示内容の範囲に収まっていれば、それは「トップダウンで決められたこと」であると同時に、「メンバー自身が考え、決めたこと」にもなるわけです。
■最初は必ず「YES」、「NO」は使わない
「そんなにうまくいくのか?」
そう疑問に思う方もいるかもしれません。
もちろん、メンバーからの提案が上の意図から大きく外れてしまったことは、私も何十回、何百回と経験しています。
しかし、そこで悲観する必要はまったくありません。
ここで大切になってくるのは「YES&MORE」話法です。
「YES&MORE」話法とは、最初に相手のいいところを認め(YES)、さらによくするためにもう一度考えてみてくれないかと再考を促す(MORE)コミュニケーション術です。
先ほどの方法でメンバーからの提案が上がってきたとき、それがどんなものでも、まずは「よく提案してくれた。ありがとう」と伝え、提案内容のいい部分を見つけて具体的に褒めましょう。
そして、その上で「これでは○○という目的とは少しズレてしまうから、その視点でもう一度考えてみてほしい」と再提案を促すのです。
提案内容が大きく逸れてしまっていた場合は、修正の方向性についてアドバイスをしてもいいと思います。重要なのは「NO」で切り捨てず、必ず「MORE」で返すことです。
最終的に上からの指示の枠内に収まるまで、このプロセスを繰り返しましょう。
■「なぜできないんだ」は成長を削ぎ、心を閉ざさせる
ちなみに、この「YES&MORE」話法は、メンバーとの日常的な会話にも応用できます。
例えば、メンバーから提出された成果物が、期待を下回る60点の出来だったとき、あなたはメンバーにどんな言葉をかけますか?
「このままでは使えないよ」
「なぜ、できていないんだ」
真っ先に足りない部分に目が向いてしまうのは、悲しいかな、リーダーの性です。
リーダーはチームの成果を出すことが第一義ですから、このように思ってしまうのは当然でしょう。
ただ、それを口にするかは別の問題です。
その一言が、メンバーの成長を削ぎ、心を閉ざさせてしまうかもしれません。
一生懸命にがんばった60点の部分には触れず、足りない40点だけを指摘する行為は、彼らの努力そのものを全否定するに等しいです。
それは、ようやく芽生えたばかりの苗を引き抜いてしまうようなもの。
もう二度と、花を咲かせないかもしれません。
リーダーの「ダメ出し」には、時にメンバーを再起不能にするほどの影響力があることを覚えておいてください。
■たとえ10点の出来でもまずは褒める
だから、まずあなたがするべきは、60点分を存分に褒めることです。
メンバーのがんばりが見える部分を、できる限り具体的に伝えましょう。
「この資料、グラフや図を使っているから見やすくていいね」
「この提案は、あの気難しいクライアントも喜びそうだね」
「資料の構成が、結論ファーストで素晴らしい」
このように、最初に相手の「承認欲求」を満たすことで、メンバーは評価を受け止める心の準備が整います。
そして、残りの足りない40点に言及する際も、決して「NO」という言葉は使いません。必ず「MORE」です。
「欲を言えば、後半の提案にもっとインパクトが欲しいな」
「さらによくするために、この部分にもっと具体的な資料があると嬉しい」
「もっと欲張りたいから、一緒に考えてみない?」
このように、不足している部分を「期待の言葉」で包み込み、欠点の指摘ではなく、さらなる成長へのフィードバックとして伝えてあげましょう。
たとえ100点満点中10点の成果物であったとしても、とにかく最初に褒めてください。まずは「YES」です。
そして、マイナスの90点をプラスに変えるべく、「MORE」で導く。
例外はありません。
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五十嵐 剛(いがらし・つよし)
リーダーズクリエイティブラボ代表取締役CEO
長野県東御市出身。
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(リーダーズクリエイティブラボ代表取締役CEO 五十嵐 剛)

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