■全方位からゴミを吸い取る器用さとパワー
2018年に日本に参入して約7年。早くも掃除機市場でトップシェアグループに入り、存在感を示しているのが米国・ボストンに本拠地を置くシャークニンジャだ。コードレススティッククリーナーの最新モデルは360°全方位からごみの吸引ができる360インテリジェントノズルを採用する「EVOPOWER SYSTEM BOOST/BOOST+」(7万1500円~機能による)。
クリーナーに搭載された複数のセンサーがゴミや掃除している場所を検知してパワーを制御。さらに壁際掃除の際には側面からの吸引力を高める機能や、ヘッドを前後に往復した場合に、押すときだけでなく、引くときにもゴミが吸引できる新機能を搭載している。さらに床に落ちた質量のあるゴミも強力に吸い上げるパワーもシャークの魅力だ。
さらに近年はニンジャブランドでキッチン家電や扇風機なども展開。いずれもシャークニンジャらしいパワフルさを備えた個性豊かな製品となっている。今回は急速に掃除機市場で存在感を示すシャークの製品開発とマーケティング戦略についてプロダクトマーケティングディレクターの長瀬陽子さんと、シニアマネージャーのジャッキー・チャンさんに話を聞いた。
■7年前の商品は「重い」と苦戦
シャークは1995年にマーク・ローゼンズウィーグによって創業された企業で、1998年にハンディクリーナーを販売。
日本市場に最初に投入したのがコードレススティッククリーナーの「Shark EVOFLEX」だ。北米市場で販売しているモデルを3分の2サイズにコンパクト化して販売した。
「日本市場向けに軽量化はしたのですが、それでも標準質量が3.5kgぐらいあったため、重すぎて期待しているようには売れませんでした。いまでも吸引力はシャーク史上最強クラスで、買っていただいたお客様には好評だったのですが、市場には受け入れてもらえませんでしたね」(長瀬さん)
■人気のきっかけになったハンディクリーナー
この初代モデルの苦戦によって、アメリカと日本の市場やニーズの違いが本社の開発チームにも伝わった。そうして日本市場にはゼロから開発したモデルを展開することになったという。
一方で受け入れられた製品もある。2018年9月に日本市場で発売したハンディクリーナー「EVOPOWER」はスタイリッシュさとパワフルな吸引力を両立し、さらに使い勝手の良さなどが認められたことで、発売後すぐに調査会社のハンディ掃除機カテゴリーにおいて売り上げ台数ナンバーワンになった。
「ハンディのEVOPOWERが受け入れられたことで、スタイリッシュさと使い勝手、パワフルな掃除性能が両立するコードレススティッククリーナーを作ったらいいのではないか、と企画が始まりました」(ジャッキーさん)
■本社の開発室に「日本人の部屋」を再現
そして2020年に日本市場に向けて開発したという初代「Shark EVOPOWER SYSTEM」が発売された。ヒットしたハンディクリーナーをベースにはしているが、基本的にはゼロベースでの開発となったという。
日本向け製品の開発に向けて、シャークではアメリカ本社の開発室に、日本サイズの部屋を作り、実際にその場で検証できるようにした。
そうして生まれたコードレススティッククリーナー「Shark EVOPOWER SYSTEM」はモデルチェンジを繰り返すたびにシェアを拡大。当初は1パーセント以下だった日本国内でのシェアは1桁台、2桁台へと伸ばし続けた。一部調査によると、2024年末の大掃除商戦期の2カ月間に関していえば、ハンディだけでなく、コードレススティッククリーナーでも、ダイソンや国産勢を抑えて売り上げはトップだったようだ。
急速にシェアを拡大していったシャーク。現在はスリムコンパクトな「Shark EVOPOWER SYSTEM」シリーズとよりパワフルな「PowerClean」シリーズなど多くのモデルを展開している。この開発力の高さとスピードは驚異的だ。
■開発スピードを支えるのは技術と「社風」
それを実現しているのが、本社開発部、生産工場、そして日本支社の連携の早さだ。シャークでは3拠点すべてに3Dプリンターを設置。例えば、開発中の製品を日本の一般家庭でテストしているときに課題が発生すると、すぐに本国の開発部隊に連絡する。そうすると最短で翌日には修正された部品の設計データが届き、それを日本の3Dプリンターで出力してすぐにテストが再開できる仕組みになっているそうだ。
「弊社は社員数がそれほど多くありませんし、フラットな組織なので、決断は非常に早いと思います。
■キッチン家電や扇風機にも続々参入
さらに2024年2月にはアメリカでNo.1の小型キッチン家電ブランドとして展開している「ニンジャ」製品を日本に導入した。
第一弾となったバッテリー内蔵のコードレスミキサー「Ninja Blast」(直販価格9900円)はハイパワーが売りで、氷を入れたスムージーを30秒の撹拌(かくはん)で作ることができる。ニンジャブランドが参入したことで、ミキサー市場が活性化。市場拡大にあわせて、現在では据え置き型のプレミアムモデルなども含めて、4モデルを展開している。
「以前からコードレスのブレンダーはあったのですが氷を砕くのは難しかった。われわれのコードレスなら氷も砕けます。さらにカラーバリエーションの提案やスムージー以外にキャンプで使う提案などもさせていただいて、これまで使っていなかった人に訴求できたと思っています」(ジャッキーさん)
その結果、コードレスブレンダーとしては早くもトップシェアをキープしている。今後、さらに多くの小型キッチン家電の展開を検討しているそうだ。
さらに今年、シャークブランドでは新たに扇風機市場にも参入。「Shark FlexBreeze」シリーズ全3モデルをラインナップしている。それぞれコードレス対応やミスト機能を搭載するなど、これまでにない個性的な製品となっているのが特徴だ。
■「4.5点以上の製品」しか売らない
シャーク、ニンジャ両ブランドに共通しているのが、製品開発から発売までの過程でのユーザー調査を重視しているということだ。
試作モデルを約4週間テストしてもらい、ユーザー調査の段階で出た課題や不満点をすぐに開発担当にフィードバックして改善を行う。そのうえで発売に漕ぎ着けられるのは「最終評価が5点満点中4.5点を超えた製品だけ」(ジャッキーさん)というのが基本スタンスだ。
「ほんのわずかに評価が届かず、泣く泣くお蔵入りになった製品もあります」(長瀬さん)
さらに発売後は口コミやレビューをチェック。特にネガティブなコメントに関しては本社と共有し、次のモデルの改善点として重視しているという。
そうして毎年進化を続けてきたことで、掃除機市場においてトップグループに入ったシャーク。コードレススティッククリーナーではいち早くゴミの自動収集機能を採用したほか、延長パイプがL字に曲がることでソファの下などが掃除しやすくなる独自のFLEX機能などを備えている。
■スペックを宣伝するより優先していること
さらに11月21日にはニンジャブランドで3つのキッチン家電を発売。同社初となる加熱調理家電で、中でも下ごしらえから調理、保存まで1台できるガラスコンテナが一体化した「Ninja Crispi テーブルクッカー」は非常に魅力的な製品だ。
シャーク/ニンジャの両製品に共通しているのが強力なモーターを採用していることだ。クリーナーはそれを吸引力に、ブレンダーは氷もクラッシュできるパワーに、扇風機は強力な送風に活用されている。
しかし、シャーク/ニンジャ共に「○万回転のモーター採用」といった、家電製品でよく見る宣伝コピーを使っていない。それはスペックで売るのではなく、「ユーザーの困りごとを解決することを追求している」ためだ。
求められている製品をすばやく作り出し、実際にユーザーに試してもらったうえで、見つかった課題を修正して完成度を高めていく。そして納得のいくレベルに達した製品だけを発売する。そんな愚直な開発姿勢が現在の人気につながったといえる。
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コヤマ タカヒロ(こやま・たかひろ)
デジタル&家電ライター
1973年生まれのデジタル&家電ライター。家電総合研究所「カデスタ」を主宰。大学在学中にファッション誌でライターデビューしてから約30年以上、パソコンやデジタルガジェット、生活家電を専門分野として情報を発信。家電のテストと撮影のための空間「コヤマキッチン」も構える。企業の製品開発やPR戦略、人材育成に関するコンサルティング業務も務める。
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(デジタル&家電ライター コヤマ タカヒロ)

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