■意外と気づけない「話し方のクセ」
「書類は通るのに、なぜか面接で落とされるんです……」
転職を目指す若者のなかには、こうした悩みを抱えている人が少なくありません。本人は必死に準備し、企業研究もしっかりしている。志望理由も明確で、社会人経験も十分。それでも面接を突破できないのはなぜでしょうか?
大きな要因の一つとして、「話し方」で面接官からの評価を下げている場合があります。
どれほど優れた職務経験があっても、話すテンポが合わなかったり、相手の呼吸を無視した一方的な話し方になっているとしたら、どうでしょう。「一緒に働くイメージが湧かない」と判断されてしまっても不思議ではありません。
企業が求めているのは、派手な自己PRではなく、相手のペースに寄り添える力なのです。話す内容は正しいのに、なぜか伝わらない――このギャップが、面接で落ちてしまう最大の原因です。
面接の不合格理由は基本、本人に伝えられないことが多いです。そのため、自分の話し方のクセを知り、改善していくことが転職成功の第一歩になります。
■面接練習でわかった「違和感のある動き」
先日行った模擬面接で、こんな場面がありました。
――前職での担当業務を教えてください。
「はい!(手が大きく上がる)主に営業を担当していました。成果としては……(ビュン)新規顧客の獲得に…」
――その際、具体的に工夫した点はありますか?
「そうですね、(ビュンビュンと手が上下)まずはアプローチ方法を変えて……」
内容は問題ありません。しかし、手の動きがあまりにも大きく、こちらの意識がどうしても言葉より“動き”のほうへ引っ張られてしまいます。
そこで私は、会話の途中で「むやみに手を動かすのは控えましょう! 内容が伝わりにくくなってしまいます」と伝えました。すると彼は、少し驚いた表情でこう返してきました。
「え? ダメなんですか? 身振り手振りって、つけたほうがいいんじゃないんですか?」
この反応は、面接練習の場で非常によく見られます。多くの若者が「手を動かすほど伝わる」、「動き=熱意」という思い込みを持っているのです。
しかし、実際には逆効果です。
動きが大きいほど、相手の意識はそちらに持っていかれ、話の本質が入りにくくなります。方向やリズムがバラバラだと、緊張や焦りが強調され、相手に圧迫感を与えてしまうことさえあります。
特に面接という非日常の場面になると緊張で動きが誇張されてしまいます。
■YouTuberや経営者の真似をしてはいけないワケ
多くの若者が勘違いしているのが、「人気YouTuberやカリスマ経営者の話し方を真似すれば、面接でも好印象になる」という思い込みです。
動画の世界ではテンション高く、手を大きく動かし、テンポよく話すスタイルが求められます。しかしそれは画面越しで映えるための表現に最適化された話し方です。一方で、採用面接は真逆の舞台です。面接官は冷静に観察し、丁寧に話す力、落ち着き、相手を尊重する姿勢を見ています。
YouTuberのように大きく手を動かしたり、感情豊かに表現したりすると、「ビジネスの場で浮きそうだ」「コミュニケーションが乱暴そうだ」と受け取られかねません。
また、カリスマ経営者のスピーチを真似するのも危険です。
彼らはプロのサポートが入っていたり、場数が圧倒的に多かったり、編集された動画であったりします。そんな表面の形だけをコピーすると、面接では「背伸びした若者」という印象を与えてしまいます。
面接で求められているのは、派手な表現ではなく「信頼」です。自分の言葉で、自分のテンポで、相手に寄り添って話す姿勢が、採用担当者にもっとも響くポイントになります。
■「何のための動きか」を意識すべき
手の動きが問題になる最大の理由は、「動きに意味がない」ことです。伝えるための動きではなく、「ただ動いてしまっているだけ」になっているのです。これは面接官にとって非常に気になるポイントです。話の内容よりも手の動きに意識が向いてしまい、集中力を奪います。
本来、動きは言葉を補助するためにあります。例えば、「3つあります」と指を立てる。「ここが重要です」と手を添える。「私はこう考えています」と胸に手を置く。
これらはメッセージと動きが一致しているので自然で、説得力を高めます。しかし、多くの転職志望の若者の動きはノイズになっています。無意識に手が跳ね上がり、方向もリズムもバラバラ。これは、緊張・焦り・自己アピール欲の表れと見られてしまい、落ち着かない印象を与えます。
動きを整えるということは、心を整えることでもあります。肩の力を抜いて落ち着いたテンポで話すことで、動きは自然に最小限になります。面接では過剰な身振りを減らし、言葉を引き立てる動きだけを残すことで、確実に印象が良くなります。
■「結論から言うと」を多用するのはNG
もう一つ、最近の若者によく見られるのが「結論から言うと」というワードを多用することです。
「仕事のデキる社会人に見られたい」という思いから、あえて意識的に使う人が増えています。しかし、この意図的な結論ファーストは、面接では逆効果になります。なぜなら、「結論から言うと」を頻繁に口にすると、面接官にとって「妙に上から目線で生意気」に聞こえるからです。
本人にその気がなくても、使い方ひとつで印象は大きく変わります。本来、面接は応募者が企業の一員として適応できるかを見極める場です。しかし、「結論から言うと」を冒頭につけて話し続ける応募者は、面接官からすると、「話の進め方を主導しようと自分のペースに相手を巻き込みたい」という姿勢に映ってしまうのです。
実際に、採用担当者からは、
「質問しているのに、いきなり仕切られた気分になった」
「簡潔に言いたい気持ちは分かるが、相手に合わせる意識が低い」
という声も上がっています。
こうした見え方が積み重なると、応募者本人が意図していないにもかかわらず「背伸びして、ビジネス用語だけを覚えた生意気な若者」というレッテルを貼られてしまう危険性があります。
■「仕事がデキる風」を目指しても内定はもらえない
面接で最も危険なのは、「できる人に見られたい」という気持ちが暴走し、話し方・姿勢・言葉遣いをすべて過剰な演技で固めてしまうことです。
声を低くしすぎたり、固い言葉を多用したり、必要以上にロジカルを装ったりする方もいます。しかし、これらはすべて逆効果です。企業が見たいのは自然体のあなたです。背伸びしたキャラクターではなく、誠実に話す人、落ち着いてコミュニケーションができる人です。
「仕事できる風」の演技は、言葉と態度の不一致を生み、「なんとなく信用できない」という評価につながります。面接官は人を見るプロですから、不自然な演技はすぐに見抜かれます。
ビジネスの現場で求められるのは、落ち着き・協調性・素直さ・学ぶ姿勢という「人としての土台」です。華やかなプレゼン能力より、信頼できるコミュニケーション力の方が圧倒的に重要です。
だからこそ、面接で大切なのは「うまく見せる」ことではなく「誠実に伝える」ことです。自然なテンポで、過剰な演出を排除し、自分の経験を自分の言葉で語る姿勢こそが、もっとも企業から評価されるのです。
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松下 公子(まつした・きみこ)
元アナウンサー、アナウンススクール代表
STORYアナウンススクール代表/STORY代表。
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(元アナウンサー、アナウンススクール代表 松下 公子)

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