※本稿は、安斎響市『1%の気くばり』(大和書房)の一部を再編集したものです。
■今日から口グセにすべき「あ」「い」「う」「え」「お」
気くばりできる人は、場の空気を和ませ、
できない人は、場の空気を緊張させる
なぜ、あの人がいると仕事がうまく回り出すのか?
読者の皆さんがシンプルに真似できる、実用性の高いコミュニケーション手法をお伝えします。仕事で使える「あ」「い」「う」「え」「お」です。
「あ」:ありがとうございます!
基本中の基本ですが、「ありがとうございます」は常に口から出るようにしておきましょう。
やはり、人間関係の基礎として「ありがとう」「ごめんなさい」が言えない人は嫌われます。小さな子どもでも知っている常識です。
それでも、多くの人は日常的なコミュニケーションにおいて、ついつい忘れていたり、照れ臭かったりして「ありがとうございます」を言えずにいます。
たとえば、打ち合わせで同席した人や、取引先との商談でも、
「こんにちは」
「お久しぶりです」
という挨拶に付け加えて、
「昨年のプロジェクトではお世話になりました。ありがとうございました」
「前回の打ち合わせ、ありがとうございました」
など、とりあえず感謝から会話を始めると良いでしょう。
メールの返信などでも、
「お世話になります」
「お疲れ様です」
だけではなく、
「お忙しいところご対応いただき、ありがとうございます」
「丁寧なご返信、ありがとうございます」
など感謝の一言を添えておくと、相手から見た印象はグッと良くなります。
■「ありがとう」の対象を明確にしたうえで伝える
別に、心の中で本気で「ありがとう」と思っていなくても構いません。
ポーズでもいいので、息を吸うように常に「ありがとうございます」と感謝の言葉を伝えられるようにしておけばそれでいいのです。
さらに、「何に対する感謝」なのかを明確にしておくと良いでしょう。
単に「ありがとうございます」と言われるよりも、
「温かいお言葉、ありがとうございます」
「お気づかいいただき、ありがとうございます」
「お忙しいところ迅速なご対応、誠にありがとうございます」
と言われた方が、受け取る方の気持ちが全然違いますよね。
特に何も感謝する要素がないとしても、
「ご連絡ありがとうございます」
「ご返信ありがとうございます」
「ご対応ありがとうございます」
など、何かしら頭に付けるだけで印象は違ってきます。
これは、私が新卒の若手時代に育ててもらった大先輩から学んだことです。
先輩は、すべてのメールの冒頭に「○○○ありがとうございます」と付けていましたし、誰かと会うたびに「この前は、○○○ありがとうございました」と挨拶代わりに言っていました。
それから15年、先輩は海外で経営者をしています。今でも心から尊敬する人の一人です。
■「質問される」ことに感謝を伝える
「い」:いい質問ですね
質問をされたときは、それに答える前に「いい質問ですね!」という枕詞(まくらことば)を置きましょう。相手との関係性に応じて、
「さすが、鋭い質問ですね」
「的確なご質問、ありがとうございます」
など、失礼にならない表現を使うのがポイントです。
さすがに、新人の若手社員が偉い人を相手に「お! 部長!! いい質問ですね!」などと言ったら失礼ですから。
大事なのは、質問内容を褒めることと、質問してくれた相手への感謝です。
質問は、結構エネルギーが要りますし、場合によっては勇気も要ります。
「こんな初歩的な質問をしていいのだろうか」
「こんなことを聞いたらおかしいだろうか」
と躊躇(ちゅうちょ)してしまう人も多いでしょう。
そんな中、質問をしてくれた人に対して、感謝と敬意を示すのは当然です。
質問が出るのは、ある意味で興味を持ってくれている証拠なので、質問ゼロで場がシーンとしてしまうよりは、何でもいいから質問してくれた方がありがたいのです。
質問した側も、
「とてもいい質問ですね」
「鋭い質問ですね」
と言われると、ちょっとホッとして気分が良くなります。
仮に否定的で嫌な質問内容だったとしても、ネガティブな言葉でケンカ腰になるのはやめましょう。あなたの立場が悪くなるだけです。
■反論する前に「相手の意見を肯定する」
ここは、とりあえず褒めておいて相手を気持ちよくさせるのが定石(じょうせき)です。
質問や意見に対して立場的に反論せざるを得ない場合であっても、
「一理ありますね」
「基本的には同意です」
など、一旦は相手を褒め、肯定する態度を取ったうえで、自分の見解を述べたり、誤解を解く回答をしたりするのが良いでしょう。
想定外の質問をされた際にも、「それはいい質問ですね」と言いながら回答内容を頭の中で練ることもできるので、一石二鳥です。
これは、私が外資系企業時代に一緒に働いていたエグゼクティブたちがやっていた習慣でもあります。
■ミスを指摘されたら「謝罪+指摘への感謝」
「う」:うっかりしてました! 助かります!
これは、自分が何らかのミスを指摘されたときに使えるフレーズです。
もちろん、「すみません」「申し訳ありません」という適切な謝罪も必要なのですが、もう一つ追加要素として、「指摘してくれたことへの感謝と敬意」があるとより良いでしょう。
相手も、非を認めつつ、さらに感謝の言葉を言われると、それ以上は責める気がなくなります。
質問を出すのと同じで、相手のミスを指摘するのも一定の勇気が要る行動です。
特に、今の時代は何を言ってもすぐに「パワハラです」と批判されてしまうので、なかなか面と向かって注意することができません。
このとき、「うっかりしてました」と悪気がなかったこと、怠惰ではなく失念であったことを強調しつつ、
「助かります!」
「教えていただいてありがとうございます!」
「ご指摘いただいて良かったです」
と感謝を示すと、相手も「勇気を出して指摘して正解だったな」と受け取ってくれます。
ミスをしても指摘してもらえず、そのまま放置されてしまうのが今の時代です。「厳しい指導」が過度に批判されるようになったせいで、管理職や先輩社員が委縮(いしゅく)して、「優しい指導」さえしてもらえなくなりました。
上司や先輩側も「育てなくていいなら、その方がラク」というのが本音なので、怒ってもらえるのは本当にありがたいことです。
■指導に対して言い訳をすると成長の機会を失う
何か指摘されたときにムッとしたり反論したりすることなく、「ご指摘ありがとうございます」と言えると、
「ああ、この人は打てば響く人だ」
「この人は育てる価値がある」
と周りから思ってもらえます。
逆に、
「それはもう知っていましたけど」
「ちょうどやろうと思っていました」
「私はそういうつもりではなかったです」
などの言い訳をする人は、次からは指導されなくなり、徐々に成長の機会を失ってしまうので気をつけましょう。
むしろ、
「直すところがあれば、遠慮なくおっしゃってください」
「厳しく指導していただいた方がありがたいです」
と自分の方からあらかじめ伝えておくことで、相手は「ああ、言っても大丈夫なんだな」とわかって適切な指導をしてくれるようになります。
気をつかって指摘してもらえない時代だからこそ、指導をしてもらえたときに「助かりました」「大変勉強になります」というセリフを口グゼにしましょう。
■相手が感じる疎外感や無力感を緩和する言葉
「え」:援護射撃をお願いいたします!
援護射撃というのは当然、比喩です。別に、ライフルを何発かぶっ放して敵の動きを制圧しろと言っているわけではありません。
ビジネスコミュニケーションにおける「援護射撃をお願いいたします!」とは、簡単に言えば、会議やプレゼン、交渉などの場で「間接的なサポートをお願いしたい」という依頼です。
この言葉には「誰も置き去りにしない」優しさが込められています。
職場には「居ても居なくても同じ人が居る」という残酷な現実があります。
会議でただ黙って座っているだけの若手社員、何の判断も決定もせずに部下に仕事を丸投げする上司、重要業務を振ってもらえない窓際社員など、実質的に戦力外のメンバーはいるものです。
このとき、
「あなたも少しは発言してくださいよ」
「アイディアを出せないなら次回から会議に来なくていいです」
と言うのは、さすがに酷です。
人それぞれ、成長のペースやモチベーションの差がありますし、得意なこと・不得意なことがあるので、一方的に貢献を求めてもできないこともあります。
ただ、その代わりに一言付け加えておきましょう。
●「田中さんは、今回は私が進めるのを後ろで見ているだけで大丈夫です。ただ、何か追加のサポートが必要になる可能性もあるので、そのときはぜひヘルプをお願いしますね!」
●「佐藤課長、今回の商談では私がプレゼンを進めさせていただきます。しかし、先方から想定外の質問が飛んで来る場合もあるかと思うので、必要に応じて援護射撃をお願いいたします!」
こういう一言があると、相手が感じる疎外感や無力感を緩和できます。
本来そんな必要はなくとも、「援護射撃をする」という役割をつくってあげることで、誰も置き去りにしない優しい職場にすることができます。
■全面肯定で賞賛でもあるマジックワード
「お」:おっしゃる通りです!
これは、もはやビジネスコミュニケーションの奥義だと言ってもいいでしょう。
「ありがとうございます」と同じくらい、口グセにしたい言葉です。
私の親しい友人の一人に超絶凄腕のビジネスパーソンがいるのですが、彼の口グセは「おっしゃる通りです」。
数々の名だたる有名企業で名を馳(は)せ、現在は外資系スタートアップで責任者を務めています。まだ30代半ばですが、その辺の日系大手企業の役員クラスよりずっと高い年収を稼いでいます。
その彼が言っていました。「おっしゃる通りです」は、魔法の言葉だと。
相手に対する全面肯定、かつ賞賛でもあるそのマジックワードは、どんな相手でも気持ちよくさせ、会話をスムーズに運びます。
仮に、多少の意見の相違があったとしても、「おっしゃる通りです」という肯定から会話を始めると、自分の意見を受け入れてもらいやすくなります。
人は誰でも、自分の意見や考えを否定されることを嫌います。的外れな意見ならなおさら頭にきて、言い返したくなるものです。
ですが、どんなに的外れな意見でも、まずは「おっしゃる通りです」と肯定しましょう。「おっしゃる通りです」と言われて嫌な気分になる人はいません。
■相手の意見を一旦肯定する、ワンクッションの重要性
もちろん、実際には100%相手の意見を受け入れられない場面もあります。
その場合でも、一旦肯定したうえで、
「おっしゃる通りだと思います。ただ、実は現在状況がこうなっておりまして……」
「おっしゃる通りです。しかし、今回はこのような事情がありまして……」
とワンクッション入れて切り返すと、相手は自分の意見が尊重されたと感じ、不快に感じることなくあなたの話を聞いてくれます。
以上が、ビジネスコミュニケーションの「あ」「い」「う」「え」「お」です。
これらの言葉は、特別なスキルや能力がなくてもすぐに実践でき、職場でのコミュニケーション力を劇的に高めます。ぜひ今日から意識して活用してみてください。
もちろん、それぞれの言葉遣いや語句自体が大事なのではなく、その裏にある思考や行動理念も含めて実践するのが大事です。
チェックポイント□「ありがとう」から会話を始めていますか?
□最初に相手の「質問」を褒めていますか?
□自分の非を認めつつ、相手の指摘に感謝していますか?
□会議で誰かを置き去りにしていませんか?
□反論があっても、まずは相手の発言を肯定していますか?
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安斎 響市(あんざい・きょういち)
転職ライター
1987年生まれ。日系大手メーカー海外営業部、外資系メーカーなどを経て、2020年より外資系大手IT企業のシニアマネージャー。「転職とキャリア」をテーマに、ブログ、Twitterなどで情報発信を続け、日経BP『日経トレンディ』、東洋経済新報社「東洋経済オンライン」、マネーフォワード「MONEY PLUS」など、多くのメディアで取り上げられている。著書に『私にも転職って、できますか?~はじめての転職活動のときに知りたかった本音の話~』(ソーテック社)、『転職の最終兵器 未来を変える転職のための21のヒント』(かんき出版)などがある。
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(転職ライター 安斎 響市)

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