気くばりができる人はどんなアイスブレイクをしているか。転職ライターの安斎響市さんは「『相手に合わせたアイスブレイク』ができる人は、人間関係の構築において極めて強い。
相手が興味を持っていることをピンポイントでトピックに出せると、『なぜ知っているんだ?』という驚きと共に、『前に話したのをずっと覚えていてくれた!』という感動が相手の心に広がる」という――。
※本稿は、安斎響市『1%の気くばり』(大和書房)の一部を再編集したものです。
■「フジロック行ったんですか?」が持つ破壊力
気くばりできる人は、相手に合わせたアイスブレイクをし、できない人は、ありきたりな話題から入る
相手との距離を縮めるための雑談術

ルート営業や取引先とのミーティング、上司との1on1、さまざまな場面で、ビジネスでは「アイスブレイク」が求められます。本題に入る前の雑談のことです。
アイスブレイク=「氷を溶かす」という意味の通り、お互いの緊張をほぐし、コミュニケーションを取りやすくする効果があります。
ただし、このとき、
「いやぁ、最近は本当に暑いですね」

「今日は風が強いですね」

「最近は調子どうですか?」
という感じで雑に話題を振るのは少々もったいない気がします。
定型文のように、いつも同じ話題を振っても場は温まりませんし、いつまで経っても相手との距離は縮まらないからです。
たとえば、4カ月ぶりに会う取引先の人に、第一声でこう言ったらどんな印象になると思いますか?
「ご無沙汰してます! 前回は本当にありがとうございました。また是非よろしくお願いします。……そういえば、フジロック行ったんですか?」
唐突だと感じますか?
でも、もし唐突じゃなかったとしたら、この言葉は感動を呼びます。
「そういえば、フジロック行ったんですか?」という質問が出るのは、「この人がフジロック好きであること」をすでに知っているからです。
■相手の関心事に関連するネタをストックしておく
一応説明しておくと、フジロック=フジロック・フェスティバル(FUJI ROCK FESTIVAL)は、日本の音楽フェス文化の先駆け的存在で、毎年世界200組以上のミュージシャンが集う国内最大規模の野外音楽イベントです。

特に、2000年代に盛り上がった歴史あるイベントということもあり、主な客層は30代・40代で、「毎年仕事を休んでフジロックに行く」というオジサンは結構な数います。
取引先の相手がフジロックファンである事実を過去の雑談などで知っていた場合、アイスブレイクで振るべき話題は
「今日はちょっと風が強いですね」ではなく、「そういえば、フジロック行ったんですか?」です。
「行きました!! いやー、良かったですよ、今年もすごく!」
という反応が返ってきたら上出来です。
「ああ、それが実は、今年は忙しくて行けなかったんですよぉ」
という反応だとしても、ちょっとした雑談のネタにはなります。
「えー!! ちょっと働きすぎじゃないですか!」
などの返しをして笑いを誘えば、アイスブレイクとしては十分でしょう。
さらに加えるならば、
「今年のフジロックは山下達郎さんも出たらしいですね!」

「なんか最近は意外と若い人も来てるって聞きましたけど、そうなんですか?」
と、ちょっとしたトピックを引き出しとして持っておくと良いでしょう。
別に、フジロックに詳しくなる必要はなくて、5分前にスマホでちょっと関連ニュースなどを調べるだけです。
それでも、相手は気分良く話してくれるので、場の雰囲気が温まります。
できれば、相手の関心事に関連するネタをストックしておくと便利です。
ニュースやSNSのバズワードなど、アイスブレイクで使える話題はチェックしておきましょう。
■人間関係の構築において極めて強い
この話の肝は、「ずっと前に相手がフジロックの話をしていたのを覚えていた」ということです。
相手は、大好きなフジロックの話ができるのが嬉しいわけではありません。
前にチラッと話しただけの自分の趣味を「覚えていてくれた」ことが嬉しいのです。
●こんにちは! お久しぶりですね!! 最近も、ゴルフはしょっちゅう行かれているんですか?

●お世話になります! どうもどうも! そういえば来月は東京マラソンですが、今年もエントリーしたんですか?

●お疲れ様です! 娘さん、おいくつでしたっけ? そろそろ小学校の入学式じゃないですか⁉

●こんばんは! お招きいただきありがとうございます! あ、そういえばJoJo好きでしたよね! あれ行きました? エビスビールと荒木飛呂彦のコラボ展!
こういった、「相手に合わせたアイスブレイク」ができる人は、人間関係の構築において極めて強いです。
天気の話など、ありきたりで無難な内容ではなく、相手が興味を持っていることをピンポイントでトピックに出せると、「なぜ知っているんだ?」という驚きと共に、「前に話したのをずっと覚えていてくれた!」という感動が相手の心に広がります。
この後の本題が商談であれ、社内会議であれ、もう相手はあなたに好印象を持った状態なので、意見は通りやすくなりますし、場の雰囲気もグッと良くなります。
■「ずっと覚えていてくれた」感動が、距離を縮める
これが、社会人として身につけるべき気くばりであり、気くばりできる人のアイスブレイクのやり方なのです。
この「覚えていてくれたんだ」という感情は、思っている以上に相手を深く感激させます。本当に、破壊力抜群です。
なぜならば、根本的に人間は自分にメリットがあることしか興味がない生き物だからです。
自分事には常に意識が向かいますが、他人事は目に映らないし耳に入りません。
自分が個人的にフジロック好きだとしても、周りにそんなことを覚えていてくれる人はほとんどいません。
ましてや、オジサンのプライベートの趣味なんて誰も気にしていないのです。
そのとき、たった一人だけ「……そういえば、フジロック行ったんですか?」と話題に出してくれる人がいたら、きっと嬉しいですよね。

仮に、愛犬のトイプードルをひたすら溺愛している人がいたとして、その溺愛振りを理解してくれる人は周りにほとんどいません。
ランチタイムに同僚に愛犬の写真を見せたら、ちょっと嫌な顔をされた、などのケースがほとんどです。
この状況下で、部下のうちの一人が「そういえば、最近ライムちゃんはお元気ですか?」と愛犬の名前まで覚えていたら、どうですか?
ライムちゃんの数々の秘蔵エピソードが飛び出すと共に、その部下に対する心象がギューンと上昇し、ついつい次回の人事評価でAをつけたくなります。
もちろん、これはあまりやりすぎると気持ち悪いので、さじ加減には気をつけましょう。
■さりげなく、良いタイミングで話題に出す
愛犬の名前を教えたことはないはずなのに、勝手に調べ上げられていたら、逆に「お前!! うちのライムちゃんをどうするつもりだ⁉」と警戒されます。
あくまで、「相手が過去に話したことをちゃっかり覚えていた」という状況をつくるのが良いでしょう。
結局のところ、あらゆるコミュニケーションの神髄は、「相手が欲しい言葉」をかけることです。
一つひとつの会話は些細なことであっても、数カ月前に少しだけ話した個人的な内容を覚えていて、さりげなく出されると相手はグッと来ます。
「さりげなく」「良いタイミングで」話題を出すのが重要です。
あえて数カ月寝かせておいて、まさか覚えているとは思わなかったというサプライズな状況をつくるのが、感動の引き金になります。
なぜなら、ほかの人は誰も覚えていないからです。
数カ月経って、みんながすっかり忘れているのに一人だけ覚えていたら、「この人は私のことをきちんと覚えてくれている」と、ジーンとした親近感が湧きます。

チェックポイント□アイスブレイクは、「相手が関心のあるトピック」を話題にしていますか?

□相手が関心のあるトピックを、ちゃんと覚えていますか?

□相手が関心のあるトピックをリサーチ・ストックしていますか?

□タイミングを見計らって、さりげなく話題を振る準備はできていますか?

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安斎 響市(あんざい・きょういち)

転職ライター

1987年生まれ。日系大手メーカー海外営業部、外資系メーカーなどを経て、2020年より外資系大手IT企業のシニアマネージャー。「転職とキャリア」をテーマに、ブログ、Twitterなどで情報発信を続け、日経BP『日経トレンディ』、東洋経済新報社「東洋経済オンライン」、マネーフォワード「MONEY PLUS」など、多くのメディアで取り上げられている。著書に『私にも転職って、できますか?~はじめての転職活動のときに知りたかった本音の話~』(ソーテック社)、『転職の最終兵器 未来を変える転職のための21のヒント』(かんき出版)などがある。

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(転職ライター 安斎 響市)
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