朝からダルさを感じたらどうすればいいか。睡眠コンサルタントの友野なおさんは「『朝からだるいな』と感じているときには、気合いで乗り切ろうとするのではなく、自然にエンジンがかかるように環境を整えていくほうが、ラクだし効率的だ。
東京ガス都市生活研究所が発表しているデータでは何もしない人の3倍も疲労感が和らぐ行動があることがわかった」という――。
※本稿は、友野なお(著)、山口佐知子(編集協力)『新版 わたしを救う睡眠パーフェクトブック』(大和書房)の一部を再編集したものです。
■毎朝、すっきり目覚めるための2つの習慣
「アラームで目覚めても、『まだ寝ていたい』と思う」「朝はなかなか調子が上がらず、午前中はボーッとしている」……というような、朝に弱いタイプの人たちの悩みは尽きません。
すっきり目覚め、起きてすぐ元気に活動するための、ちょっとした工夫があります。
次の2つは今日からすぐに実践できるものですので、ぜひ試してみてください。
・寝る前にカーテンを10cm開けておく
前の晩、ベッドに入るときに1秒でできる“気持ちよく起きる準備”が、「カーテンを10cmほど開けておく」、もしくは「レースのカーテンだけを使用する」という方法です。
ポイントは、外が明るくなるにつれて寝室内も自然に明るくなるということ。朝の光のパワーを活用することで、アラームで無理やり起こされるよりもずっと爽快に目覚めることができます。
睡眠や覚醒のリズムと深い関わりのある「体内時計」は、光に影響されています。
私たちが眠気を感じるのは、朝の光を浴びてから約15時間後です。たとえば、朝7時に光を浴びた場合、夜は10時を過ぎると眠くなるというメカニズムになっています。
■朝日とともに明るくなる部屋で起床し、空を見上げる
朝日をしっかり浴びて、からだに「朝がきた!」ということを知らせると、眠りをうながすメラトニンの分泌が抑制されると同時に、次は約15時間後に眠気が訪れるよう、「予約のスイッチ」が押されます。
さらに、昼間の元気ホルモンであるセロトニンの分泌が行われ、活動スイッチがオンになるのです。
日が昇るにつれて寝室内が明るくなる環境をつくり、起床後は窓から空を見上げる。この2つが、確実に1日のスタートをきるための秘策です。
今すでに寝室の窓にかかっているカーテンが、光を取り込む素材やレースのものであれば問題ありません。もしも遮光カーテンを使っている場合でも大丈夫。顔に直接光が当たらない場所で、遮光カーテンを10cmほど開けておくようにしてください。
「家の日当たりが悪い」「朝起きる時間が早いのでまだ空が暗い」「外の照明が差し込んできて、夜カーテンを開けておくとまぶしい」という場合は、セットした時間に自動でカーテンを開けてくれるグッズや、太陽光のような高照度の光を感じられる光目覚まし器具を活用するといいでしょう。
■寝ている間に失った水分を、朝一番に補給する
・朝起きてコップ1杯の水を飲む
朝から、細胞レベルで元気に活動できる秘訣もあります。最近ではすっかり定着してきましたが、目が覚めたらすぐに「コップ1杯の水を飲む」ということ。
朝一番に水を飲む理由は、からだが渇いているからです。眠っている時間は、水を飲んだり水分を含む食べ物を食べたりしません。にもかかわらず、汗をかいたり呼吸をしたりと体内の水分は出ていきます。

寝ている間には、コップ1杯分もの汗をかいているといわれ、夏にはもっと量が増えます。睡眠中に水分が奪われてしまったからだは、干からびてしまった砂漠のイメージです。カラカラの大地に、まずは「魔法の1杯」ともいえる水を与え、からだをおだやかに潤してあげましょう。のどが渇いたと感じていなくても、必ず毎朝飲む習慣をつけてください。
起きがけ1杯の水は、胃腸への刺激となってからだに朝がきたことを知らせるとともに、デトックスをうながす効果もあり、体内クレンジングにも一役買ってくれます。
■水の代わりに、利尿作用のあるコーヒーや紅茶はNG
講演会などで、朝はまず水を飲みましょうとお話しすると、「スムージーを飲めば栄養もあってパーフェクトですか?」「コーヒーを飲む習慣があるのですが、それではダメですか?」と質問されることがありますが、どちらも答えは「NO」。まずはピュアな水をからだに補給することが大切で、そのうえでスムージーなどを飲むようにしましょう。
コーヒーや紅茶、緑茶といった飲み物は一見、からだを目覚めさせるのによさそうですが、利尿作用のあるカフェインが含まれているので、体内の水分と一緒に必要なミネラルをも体外に排出してしまうため、水の代わりにはなりません。
からだに負担をかけすぎない水の飲み方のコツは、「常温」で飲むことです。特に夏場など暑いときは、冷蔵庫で冷やした水を飲みたくなりますが、冷水を飲むことは急速に内臓を冷やすことになり、からだの機能を低下させる場合があります。
ちなみに私の場合は、お湯と常温の水を合わせた白湯をコップ1杯飲むようにしています。そのあとに朝食をとるのが、快眠ときれいを磨くためのマイルーティーンです。

■コーヒーよりシャキッと覚醒する「朝シャワー」
睡眠時間が不足していたり、質が悪かったりして「朝からだるいな」と感じているときは、いくら気合いを入れても、からだと心がついていかないもの。
そんなときは、気合いで乗り切ろうとするのではなく、自然にエンジンがかかるように環境を整えていくほうが、ラクだし効率的です。
それには、熱めの朝シャワーが効果的。
東京ガス都市生活研究所が発表しているデータでも、朝のシャワー習慣が効果的であることが証明されています。
「何もしない」「コーヒーを飲む」「シャワーを浴びる」という3つのグループに分けて、朝の疲労感を比べた結果、何もしない人よりコーヒーを飲んでいる人のほうが約2倍、疲労感が和らいだと感じていることがわかりました。驚くべきは、シャワーを浴びる人の結果。なんと、何もしない人と比べると、約3倍も疲労感が和らいだのです。
「眠ったはずなのに昨日の疲れがとれていなくて、起き上がりたくない」という朝は、「えい!」と気合いを入れて朝シャワーを。コーヒーを飲むよりすっきりするなんて、画期的だと思いませんか?
■手や足などの末端から、からだの中心部に向けて浴びる
朝シャワーのポイントは、お湯の温度を高めにすること。40~42℃と、ちょっと熱めのお湯を3~5分間全身に浴びましょう。からだ全体が刺激を受け、副交感神経から交感神経に入れ替わりやすくなり、活動モードのスイッチがオンになります。
シャワーの浴び方にもコツがあります。
まずはシャワーを手や足などからだの末端部分に十分にあてるようにします。その後、お腹や胸などからだの中心部に向かって浴びるようにしましょう。
末端から中心部へ――このようにシャワーを浴びることで、血液やリンパの流れが促進され、からだも心も脳もシャキッと元気になります。
「朝は時間がない」という人も、5分程度の早起きなら、それほど苦にはならないですよね。
朝の5分間マジックで、1日のスタートのクオリティをぐっと高めていきましょう。
■夜にぐっすり眠れるかどうかのカギも握る「朝食」
「朝は食欲がない」「朝食を食べる時間なんてない」などの理由から、朝食を抜いている方がとても多いのですが、睡眠中のからだは、想像以上にエネルギーが使われているもの。
眠っている間も脳や内臓は活動し続けているので、朝は「ガス欠」寸前の状態です。エネルギーが不足している状態にもかかわらず、そのまま仕事や家事、育児をしようにも、力は出ませんよね。
しかも、朝食をとることは、「今晩のぐっすり」にも直結しています。しっかり活動するためにも、質のいい睡眠のためにも、毎朝必ず食事をとるようにしましょう。
朝食は、「とる時間」と「内容」が重要なポイントです。
・朝食をとる時間
まず、朝食の時間は「起床後1時間以内」です。
朝起きてから1時間以内にとることで、からだが目覚めるスイッチが入り、体内時計がカチッと整って、しっかりと活動モードに切り替わります。
「朝はお腹が空いていないからパスしている」という人は、朝食が楽しみになるよう、食べたいものを前の晩から用意しておくのもおすすめ。朝食をとることが習慣になると、からだが正しいリズムを刻むようになり、1日にメリハリが生まれるので自然とからだや心の調子がよくなります。
■朝にとるタンパク質が、夜の快眠につながる
体内時計や腹時計といわれるように、私たちのからだのなかには時計が存在しています。細胞の一つひとつに、「時計遺伝子」というものがあり、それらが一定のリズムを刻んでいるので、いつもの時間に目が覚め、いつもの時間にお腹が空くのです。
ところが、この時計遺伝子はとてもデリケート。生活習慣が乱れると時計遺伝子も狂いやすくなり、体内時計の乱れの蓄積は、健康を阻害して、老化の原因にもなります。1日3食を規則正しく、なるべく毎日1時間以上のズレが生じないよう、同じ時間にとることも、時計遺伝子の精度を上げるためには大切です。
・朝食にとるといいもの
それでは、具体的にどのようなものを朝に食べると、1日を元気に活動でき、夜にぐっすり眠ることができるのでしょうか。
キーワードは、「タンパク質」。タンパク質に含まれるトリプトファンという物質は、セロトニンの原料となるものです。セロトニンは、私たちの眠りを自然にスムーズにうながす働きのあるホルモン、メラトニンに変わります。

トリプトファンを含むタンパク質が豊富な食材は、乳製品、卵、大豆製品、赤身魚などの魚介類、肉類、アボカド、バナナ、ナッツ類など。バランス良く食べるのが理想ですが、「忙しい朝の時間に丁寧に料理をしているヒマなんてない……」と思ってしまうのも当然です。
■手でもみもみするだけ「栄養たっぷりジュース」の作り方
そこで私がおすすめしているのは、透明な袋1枚を使って美味しくできる「手もみジュース」です。火を使う必要もなければ、ジューサーなどの道具も用意しなくてOK。食材をひと口大のサイズにちぎって袋のなかに入れ、約1分、手でもみもみするだけで美味しくて栄養たっぷりのフレッシュジュースができあがります。
セロトニンの合成には、トリプトファンだけでなく、「ビタミンB6」と「炭水化物」の2つの成分も欠かせません。そこで、この3つの成分が含まれているバナナをメイン食材にもってくるのがおすすめです。お好みの組み合わせやバランスでオリジナルドリンクを試してみてくださいね。
・手もみジュースによく合う食材
豆乳/ヨーグルト/飲むヨーグルト

バナナ/イチゴ/キウイ/アボカド/レモン(搾り汁)……など
たとえば、「バナナ1本+イチゴ3粒」「バナナ1本+キウイ1個+アボカド2分の1個+レモン少々」など、好きな組み合わせの食材を入れた袋に、豆乳や飲むヨーグルトを適量注ぎ、手でもんでグラスに移せばできあがり。
女性を美しくするうれしい成分が詰まった、朝の美味しい1杯です。

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友野 なお(ともの・なお)

睡眠コンサルタント

行動療法からの睡眠改善、快眠を促す寝室空間づくりを得意とし、全国での講演活動、企業の商品開発やコンサルテーション、執筆活動などを行う。現在、先進予防医学の博士(医学)課程に在学中。

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(睡眠コンサルタント 友野 なお)
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