■「外国人問題」が盛り上がる3つの背景
直近の国政選挙で外国人問題が大きな争点となって以降、増加する外国人をどう考えるのかの議論が盛んになっています。高市内閣で外国人政策を検討する「外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議」が設置されたのはその流れです。
しかしなぜ最近になって外国人問題が大きく議論されるようになったのでしょうか。
構造として日本社会に起きた「3つの変化」が背景にあります。外国人政策が転換点を迎えた理由について解説したいと思います。
「3つの変化」を先にあげさせていただきます。
1.量質転化が起きたこと
2.国力の低下
3.政治の腐敗
この3つの要素で日本は変化を迎えています。
そのことと外国人政策がどう関係してくるのでしょうか? 順を追って説明したいと思います。
変化1 量質転化が起きたこと
まずひとつめの変化である量質転化についてお話しします。量質転化とはドイツの哲学者ヘーゲルが提唱した弁証法という考え方の原理のひとつで「量が増えることに伴い質的な変化が必ず起きる」という原則です。
■10年間で人口比率が3%に倍増した
直近で日本に在留する外国人は約377万人と過去最高になっています。
インバウンドも同様です。20年前の2005年が約670万人、2015年が約2000万人だったところから今年は4000万人超えが確実になってきています。
量が積み重なることで質的な問題が必然的に変化するというのがヘーゲルが掲げた原則です。実際に今、日本の外国人問題はまさにそのような意味での質的転換を実感している状況です。10年前と比較して人数が倍になった外国人が引き起こす社会との軋轢は、その問題の質が以前とは違ったものになるのです。
変化2 国力の低下
そのような構造変化が起きた状況下で日本は2つめの変化にも直面しています。
国力が低下してひとりあたりGDPランキングで大きく順位を下げているのです。
■お隣の「韓国」「台湾」「香港」よりも下に
かつて日本はひとりあたりGDPで世界のトップクラスに位置していたのですが、今アジアではそのポジションをシンガポールやカタールに占められ、日本は世界の中での経済的地位を大きく下げています。
IMFが発表する直近のランキングでは日本のひとりあたりGDPは約32000ドルで世界38位までランクを落としました。G7に所属する先進国の多くが5万ドル前後の水準ないしはそれ以上なのと比較して日本経済はかなり引き離された状況にあります。
問題はアジア周辺国と比べてもランクが下がってしまったことです。以前は日本より下にいた韓国や台湾は最新ランクではそれぞれ33位、37位と日本をわずかに上回っています。
かつて日本人OLが「安い安い」とショッピング旅行に出かけた香港にいたっては世界20位とヨーロッパの先進国並みの水準まで上がってきています。
このような状況ですからすっかり日本の立場は逆転してしまいました。アジアから訪日した観光客が日本で買い物をしては、
「日本は何もかも安くて素敵だ」
と喜んでいるわけです。
■「安くて素敵」の何が問題なのか
さてこのように国力が低下したことで何が一番問題かというと、アジアの働き手から見て日本で働くことの魅力が下がってしまったことです。いまでは韓国や台湾で働くほうがよほど儲かるし、帰国後の技能も身に付きます。
日本は長年技能労働者制度の上にあぐらをかいて、海外の労働者の努力をただ同然で使ってきました。これまで技能労働者を日本に送り出してきた国々ではそのツケが表面化し始めています。日本に行きたいという候補者が激減しているのです。
結果としてそれらの国から日本へ送る候補者の質がさがっています。他の国々と比較して儲からないし技能も教えてくれない国ですから、まともな人が応募する割合は当然低下します。
「外国人労働者はまじめで職場でもとても役にたってくれる」
という前提が維持されにくくなっています。
これがふたつめの問題です。
変化3 政治の腐敗
さて、あまり報道されていませんが日本社会には3つめの変化が起きています。
国際機関が毎年発表する「腐敗認識指数」という指標があります。世界各国の政治腐敗を評価する指数です。この指数で日本の世界ランキングが下がってきています。直近の評価では日本は4つ順位を落として世界20位でした。
■「裏金」よりも問題視されている要素とは
政治の腐敗というのは日本に限らずどこの国でも大きな社会問題で、日本はどちらかというと世界の優等生の側にいます。
ただ近年、その腐敗の度合いが進んでいると国際機関には認識されている。腐敗度としてはイギリスと同順位。香港に抜かれた状況です。警官の汚職が目立つアメリカが28位と日本よりははるかに下にいるのがまだ救いでしょうか。
政治の腐敗というと日本国内では政治家の裏金問題が話題でしたが、国際機関から見ればそれが立件されないことの方が問題にとられています。
官僚による文書改竄(かいざん)や、虚偽答弁なども同様です。腐敗が進んでいるのは犯罪が増えているというよりもお目こぼしが増えていることが悪く評価されているのです。
実はこの問題はもうひとつのグローバルな問題である「目に見えない侵略問題」と関連してきます。
目に見えない侵略とはオーストラリアが最初に声を上げ始めた問題で、外国が国際協力を通じて国内にシンパを増やしていくうちに、そのシンパが政治や行政の中枢に入り込んで内政を左右するようになるという話です。誰がそうなのか目に見えないけれども国政が外国政府の意向に左右されるようになるのです。
日本の政治は長らくアメリカ政府の影響を強く受けてきたのですが、近年になって近隣諸国の影響の方が強まっているのではないかという疑念が生まれています。
これがメカニズムとしては行政の腐敗ランキングの話とどう関係するのでしょうか。
■白タク、違法解体業者がはびこる理由
政治家や官僚の汚職といえば、手口としては世界全体でみればキックバックがもっともよく行われる手法です。本当は許可が出ないような開発案件になぜかゴーサインが出て開発が進んでしまう。許可を出してもらった企業から誰かに裏金が渡されるからです。
問題はその裏金を出してきた企業が純粋な民間企業とはいえなかった場合です。
それが議員なのか市役所の役人なのかわかりませんが、その領域の有力者が外国政府の手に落ちてしまいます。
結果として国立公園で木が切り倒されたり、空港玄関に白タクがびっしり並んだり、法律の手順を守らない解体作業が行われたりしても、警察が動けなくなります。
近年、社会問題になっている外国人問題というのは、ごく一部で起きている事件なのですが、なぜかそのなかの大きな事件がおめこぼしの状態になっています。止めようと動く政治家や官僚とは別に、それを止めることを止めようとする有力者が身内にいるとこういう現象が起きます。
これらの3つの問題が、日本が現在かかえているいわゆる外国人問題の根幹です。
■だから高市内閣が支持される
外国人の数が増えてきて質的に問題が変質したこと、日本が貧しくなったことで優良な外国人労働者が日本を選ばなくなってきたこと、そして政治の腐敗に外国政府が影響力を及ぼしはじめていること。これらの要素から外国人問題が深刻な社会問題に変化をしているのです。
この問題に関しては高市内閣の対応の速さが支持率の上昇に表れています。
保守派の高市さんなら問題の本質に切り込んでくれるのではないかという支持者の期待感が生まれているのです。
ではこの問題、どのような手をうつべきなのでしょうか?
■最低賃金を2000円に引き上げる
3つの問題を前提に考えると3つ、日本がやるべきことを提言できそうです。
ひとつは量がこのレベルで収まるように手をうつことです。
外国人の流入は量的に転換点を迎えています。
そこでひとつめの提言として「新規の外国人労働者の最低賃金を大幅に引き上げる」ことを提案します。永住者やすでに労働ビザで日本で働いている人は対象外にすべきですが、来年以降に新規にビザを取得して日本で働く労働者の最低賃金をたとえば2000円に設定するのです。
このルールができるとふたつ変化が起きます。
ひとつは企業側が優秀な外国人しか雇えなくなるために外国人労働者比率が停滞せざるをえなくなること。もうひとつは日本を目指す優良な外国人労働者が増えることです。
これまで日本では、経団連会長を輩出するほどの企業ですら、技能労働者の外国人を「最低賃金以下で働いてくれる安価な労働力」として使い倒して是正勧告を受けるような状態でした。それが現在の日本の地位低下を招いています。これからは待遇をよくすることで少数の優良な外国人がめざす国へと日本を変えていくべきです。
ふたつめに重要なのはDXにかかわる規制緩和です。
外国人労働者の総量が増加しなくなると少子高齢化の日本では労働力不足がより深刻な問題になります。これはDXを通じて人間の仕事がAIやロボット、ドローンなどに置き換わることで解消されるべきです。
それを目指して日本各地で「実証実験」が行われているのですが、「いつまでたっても実証実験」という行政によるサボタージュがおきてきたのが過去10年間の日本です。これを海外並に緩和すれば、必要な労働者の数は大幅に減るはずです。
この規制緩和を外国人労働者の数量コントロールと同時にやらないと経済が混乱をきたします。これがふたつめの提言です。
■「目にみえない侵略」を止める一手
3つめの提言は「目にみえない侵略」に対する安全保障の提言です。この問題に対する国の権限を自治体よりも一段強くすべきです。
今の日本の法律では外国人や外国企業が日本国内に自由に土地を買い、そこで事業を行ったり、土地を開発する権利を持っています。このルールと「目にみえない侵略」が組み合わさると、違法な開発や違法状態が進行します。
そしてこういった外国人の活動の多くは、それを許認可する権限を自治体が持っています。外国政府の着眼点がこの制度にある以上、それが著しい場合、国にそれを止める権限を持たせるべきです。
アメリカの警察にはFBIという州をまたいだ権限を持つ捜査機関があります。大規模な騒乱が起きると警察ではなく軍隊がそれを鎮圧するといったこともできます。
日本では市役所の手に負えないトラブルが増えています。大きな問題は管轄を国に移して解決できる権限を与えるべきではないでしょうか。中には市長や県知事が出した許可を大臣が取り消すことができるようにすべき事案もあると思います。
■日本人が理解すべきたった一つのこと
ただこの対策は高市内閣では機能すると思いますが、将来的に外国の傀儡が政権の中枢に入り込むと取り返しのつかない愚策が実行される恐れもあります。その意味で諸刃の剣といえるかもしれません。
最後に日本人が理解すべき点をまとめます。
外国人問題という呼び名で問題になっていますが、この外国人問題は根源となっている3つの理由すべてで、日本が引き起こした問題です。
それをヘイトスピーチのような形で外国人に責任の目を向けさせても解決にはなりません。あくまで外国人問題は、日本人が日本の構造を変えることに向き合うべき政治問題なのです。
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鈴木 貴博(すずき・たかひろ)
経済評論家
経済評論家。未来予測を得意とする。経済クイズ本『戦略思考トレーニング』の著者としても有名。元地下クイズ王としての幅広い経済知識から、広く深い洞察力で企業や経済を分析する独自のスタイルが特徴。テレビ出演などメディア経験も多数。
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(経済評論家 鈴木 貴博)

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