※本稿は、雑誌「プレジデント」(2025年11月14日号)の掲載記事を再編集したものです。
■Question
大躍進の参政党や神谷宗幣代表をどう評価しますか?
2025年7月の参議院議員選挙で参政党が大躍進しましたが、直後のテレビ中継ではキャスター陣が差別意識丸出しで神谷宗幣代表に迫り、どちらが「排外主義」かわからないありさまに。国会開会を控えた今、橋下さんは参政党や神谷代表をどう評価しますか。
■Answer
地道に「パーパス」を訴え続けた末の勝利である
参院選の熱気は、みなさんの記憶にも新しいはず。「まさか参政党がそこまで議席を伸ばすとは!」という驚きが、選挙特番での司会者やコメンテーターの言動に露骨に表れていた気がします。でも、そんなことでいいわけはありません。
なぜなら、どんな政党も「選挙で票を集めた」という事実は尊重されるべきだからです。米国で第1次トランプ政権が誕生した時にも強調したことですが、たとえ予想外の結果でも、選挙結果の尊重は民主主義の大原則。ましてやメディアが自分たちの価値観を独善的に押し付けることは言語道断です。
でも日本に限らず新聞・テレビなどのメディアは、上から目線で当選者をジャッジしがちです。自分は一票も取っていないのに、テレビや新聞という安全地帯から、やれ「ポピュリズム」だ「排外主義」だとレッテルを貼る。
忘れてはいけないのは、こういうレッテル貼りは、その政党に票を投じた人たちへの侮辱にほかならないということです。政治を議論したいなら侮辱や人格攻撃ではなく、真正面から政策論で議論すべきじゃないですか。
そこで参政党の政策ですが、中身でいえば僕の持論とは正反対。神谷さんは「インターナショナリズム」を主張し、日本人を第一に考える『日本人ファースト』の姿勢を貫きますが、反対に僕は「グローバリズム」派。国際的な競争に日本企業も果敢に挑戦すべきと考えます。この論の内容の是非や詳細は後述するとして、ここで大切なのは「旗幟(きし)を鮮明にする」ということです。旗を立てれば、人はその下に集うことができます。もちろん、旗印が目立てば目立つほど、批判の声も大きくなります。僕が大阪維新の会を設立した時もそう。熱心な支持者が増えてくれて嬉しいのと同時に、罵詈雑言もすごかった(笑)。でも、そうしたエネルギーこそが党や政治家を成長させてくれるんです。政治家が何より恐れなければならないのは有権者からの「無関心」。
政党にとっての旗印は企業で言えば「パーパス」。それを自らの言葉で明確に熱量高く発信できるかどうかが、政治家・リーダーの力量ともいえます。たとえば国民民主党の玉木雄一郎代表は自らを「政治家YouTuber」と称していますが、その熱量、運動量はすさまじい。移動時にもスマホでタクシーの中から番組に生出演したりしていますよね。神谷さんも全都道府県をひたすら自分の足で歩き回り、自分の言葉で有権者に「パーパス」を訴え続けてきました。そうした地道な努力があってこそ、現在の参政党がある。
一方、立憲民主党や今の日本維新の会は、そうした熱い志で有権者に語れるパーパスを持っているでしょうか。自民党でそれを地道にやっていたのが今般、圧倒的な自民党員の票を得て自民党総裁選で勝利を収めた高市早苗さんでしょう。僕は高市さんの考え方には反対のところが多々ありますが、彼女は全国で集会を重ねて自らの持論を展開していました。神谷さんと同じパーパス“布教”活動ですよね。
■方向性は違っても、よき「壁打ち相手」に
その意味で、もし僕が政治家だったら、神谷さんはよき「壁打ち相手」になっていただろうと思います。
たとえば、日本でも広がりつつある社会的格差。神谷さんはその解決方法を、「国境を高くし、保護主義政策で国内市場を守ろう」と主に考えます。一方の僕はその逆で、今の日本においてはより国境を取り払い他国と競争・共創しながら、経済全体のパイを広げようと考えます。もちろん、そこからこぼれ落ちる人には、きちんとしたセーフティネットや所得再分配策などの支援策を用意することは当然です。
あるいは「外国人(移民)の受け入れ」問題も、神谷さんは「外国人移民は人口の5%に抑える」と主張しますが、僕は「20%まで受け入れることのできる体制を整えて、その中で余裕のある受け入れ人数を決めていくべき」という論です。受け入れ人数も10%ではまだ足りないし、むしろ外国人が日本社会に入ってきてくれたほうが日本社会は発展していくと考える持論です。
ただしその際は大前提として「ルールの徹底」が必要で、そこは神谷さんと共通です。僕は仮に外国人の不法滞在が明らかになったら、即刻退去してもらうのが原則だと考えます。悩ましいのは、その人にもし日本で生まれた子がいたらどうするか。
このような親子分離策は超強硬なルール徹底派で、「橋下は非人間的だ!」と非難されるでしょうが、外国人を積極的に受け入れていくのであれば、ルールの徹底はとにかく厳しくしなければならない。ここで甘いことをしていては、EU諸国の移民・難民問題と同じになってしまいます。
10年代からのシリア危機をきっかけにEU諸国では難民問題が噴出し、政治不安と、いわゆる極右政党の台頭を招きましたが、その原因は安易な理想を掲げるエリート層の認識と、一般の生活者が抱える不安とのギャップだったといっていいでしょう。ドイツなどの国では「ルールの徹底」ができなかったのです。
日本にも今、増え続ける外国人との共生に不安を抱える人が一定数いるのは確かです。でもそれを口にすれば「排外主義者」などと非難されてしまうため、なかなか口にできなかった。そこへ参政党が登場し、「外国人を抑制しよう」と主張したから、多くの人が共感したのです。そうした現実をメディアや他党はしっかり直視すべきです。
同じ社会課題を認識しているものの、解決の方向性が違っている。
神谷さんは、相手やその場の状況を見て見解や態度を変えます。選挙前は刺激的な発言で注目を集め、選挙後は一転、マイルド路線に切り替えた。支持者の前で見せた咆哮は封印し、メディアに出ても笑顔を絶やさず「排外主義ではない」と繰り返す。そして一定期間メディアに出た後は、スッと姿を消しました。今は内部固め、次の準備に入る期間と判断したのでしょう。
「お見事」と言いたいところですが、おそらく神谷さんは、どんな場面でも喧嘩をふっかける政治家時代の僕や石丸伸二さんを反面教師にしたんじゃないのかな(笑)。まずはパーパスを理解してもらうために強烈な旗印を掲げるけれども、選挙後もその調子のまま猪突猛進することの危うさを認識しているのでしょうね。今後国会が始まれば、責任ある国政政党としての態度振る舞いが求められます。
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橋下 徹(はしもと・とおる)
元大阪市長・元大阪府知事
1969年生まれ。大阪府立北野高校、早稲田大学政治経済学部卒業。弁護士。2008年から大阪府知事、大阪市長として府市政の改革に尽力。15年12月、政界引退。北野高校時代はラグビー部に所属し、3年生のとき全国大会(花園)に出場。『実行力』『異端のすすめ』『交渉力』『大阪都構想&万博の表とウラ全部話そう』など著書多数。最新の著作は『政権変容論』(講談社)。
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(元大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹 構成=三浦愛美)

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