※本稿は、ニルス・ソルツゲバー著、弓場隆訳『科学的根拠で 先延ばしグセをなくす』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
■時間管理術がうまくいかない理由
一部の人は「先延ばしグセは主に時間管理の問題だ」と主張する。
だが、そういう人たちの言うことを聞いてはいけない。
先延ばしグセは「時間管理」の問題だけではなく、「感情管理」の問題でもあるからだ。それがどういう意味か具体的に説明しよう。
私はかつて、時間管理の観点だけから1日の計画を立てていた。
たとえば、朝のルーティンを実行してから仕事をして、少し散歩をしては、また働いて昼食を摂る、というように私の理想にもとづく1日の計画を立てていた。
しかし、その計画はうまくいかなかった。たいていの場合、自分が理想とする計画を立てるだけでは、それを実行する気になれなかったのだ。
私は朝のルーティンを実行したかった。その日にやるべき重要な仕事に取りかかりたかった。
ところが、それらをする気になれなかった。それはなぜか?
心理的な抵抗(なんらかの課題にともなうネガティブな感情)があまりにも大きくて、やるべきことをすべて先延ばしにしまったのだ。
■計画は感情面を考慮に入れて
つまり、先延ばしは時間管理の問題だけではなく、感情管理にも関係する問題なのだ。そのため、心理的抵抗を乗り越えるという感情面を考慮に入れた計画と、それに従った実行が必要となる。
私がやるべきことを先延ばしにしたのは、ネガティブな感情を管理できなかったからで、単に時間管理が下手だったからではない。
たとえこの世で最高の時間管理のスキルを実践しても、それだけではやっかいな先延ばしグセに苦しめられるだろう。
とはいえ、すぐれた時間管理術は先延ばしグセの克服に役立つことは確かだ。
時間管理だけでは先延ばしを克服するための解決策にはならないが、欠かせないツールでもある。
そこで、3つの基本的な時間管理術について説明しよう。
それらを理解して身につければ、生産性が飛躍的に向上する。
■「時間管理」の魔法がはじまる時
時間管理の第1のルールは、「予定に組み入れればやり遂げられるが、予定に入れなければやり遂げられない」である。
今日か明日、あるいは少し先の期日までにやるべきことがあるとしよう。
たいていの場合、それらはメモに書きとめているか、頭のなかにあるだろう。
このように、やるべきことのリストを持つのはすばらしいことだ。
だが、それは最初の一歩にすぎない。それだけでなく、リストにあることをいつ実行するかという予定を具体的にしたときにはじめて、本物の魔法がはじまる。
つまり、リストにあることを予定表に組み入れない限り、それは現実にはならない。単なるアイデアであり、実行できるかもしれないことにすぎないのだ。
だが、予定を立てた瞬間、現実になりはじめる。
わたしが先延ばしにしがちなことは、散髪に行くことだ。髪の毛が伸びたから早く行く必要があるという思いが何日間も頭のなかを駆けめぐるが、行かない。予定表に書きこむまで、私はさまざまな言い訳をして先延ばしにするのだ。
「今日はやることがいっぱいだから、別のことを優先しよう」「天気がいいから、戸外で何かをしよう」「そんなに伸びていないから、もう1週間待とう」と思っていても、いったん予定表に書きこめば、行動の邪魔をしているこれらの言い訳を排除できる。
■ToDoリストと予定表はまったくの別物
数年前、予定表に書きこむことの効果を明確に示す、画期的な研究があることを知った。
その研究では、更生施設に入所している20人の薬物依存者が、その日の午後5時までに履歴書を書くよう指示された。指示どおりにすれば出所後の再就職に役立つというのが理由である。
具体的には、半数の人たちはいつどこで履歴書を書くかを明確に指示され、残りの半数の人たちは履歴書を書く時間と場所を好きなように選んでいいと言われた。つまり、後者のグループは履歴書を書く予定を自分で決める必要があり、前者のグループはその必要がなかったのだ。
その結果、前者のいつどこで履歴書を書くかを指示された10人のうち8人が午後5時までに履歴書を作成した。一方、後者の指示されていなかった10人のなかで履歴書を作成した人はひとりもいなかった。
予定に組み入れればやり遂げられるが、予定に組み入れなければやり遂げられない。これは単純だが、忘れてはならない重要な真実だ。
先延ばしグセを克服したいなら、ToDoリストにある項目を予定表に書き込む習慣を身につけよう。
■ダメな朝「あるある」
次のようなことに、心当たりはないだろうか?
朝早くアラームが鳴っても、眠くて何度もスヌーズボタンを押してしまう。ようやくベッドから出たものの、起きるのが遅くなって目覚めから気分が悪い。
すぐに朝のルーティンを急いでやったが、時間がないので一部を省略してしまった。それから大急ぎで家を出て、職場に向かう途中でパンを買って食べた。残念ながら始業時間に遅刻してしまい、ぐったりと疲れてストレスがたまっている。
職場ですぐに仕事に取りかかろうとしても、自分にとって何が重要なことなのかわからず、メールやSNSをチェックしたりするうち、あっという間に30分が経過。それなのに、まだ何も実行できていない。そのうち後ろめたさを感じはじめる。
最悪なのは、まだ大切なことに取り組む気分になっていないことだ。
いったい何が起きたのか? 1日がはじまったばかりなのに、すでに後ろめたさやストレス、落胆などのネガティブな感情を味わっている。
■先延ばしグセが心の采配を振るう
ここで、なぜ私たちがやるべきことを先延ばしにするのかを思い出そう。
あなたもすでにご存じのとおり、理由はネガティブな感情から逃げるためだ。
先のような1日のはじまりだとどうなるか考えてみよう。
苦痛をともなうそれらの感情から逃げたくなるはずだ。
いったん「先延ばし→気晴らし→ネガティブな感情→怠けグセ」という悪循環に陥ると、そこから抜け出すのは難しくなる。
いったんダラダラすると、1日中ずっとそうなりやすい、
そして自分が非生産的であることに失望し、後ろめたさを感じるので、有意義なことを実行するのはほぼできなくなる。
要するに、先延ばしグセが采配を振っている状態になるのだ。
■早朝からダラダラしてはいけない
以上の説明でわかるように、1日の最初の数時間はきわめて重要である。その時間をムダにすると、おそらく1日中うまくいかなくなる。ネガティブな勢いがあまりにも強いため、状況を好転させることが難しくなるのだ。
しかし、その逆も真実である。1日の最初の数時間を効果的に過ごせば、先延ばしをしないで、生産的な1日のスタートを切ることができる。
いったん自分を律して生産的になれば、ずっと生産的でありつづけることができる。ポジティブな勢いがつくから、次々とやるべきことをやって気分がよくなり、自信がわいてくる。それらのポジティブな感情はモチベーションを高め、1日中エネルギッシュに活動しつづける原動力になるのだ。
つまり先延ばしグセを克服したいなら、意欲的に1日の好スタートを切る必要がある。目覚めたらすぐにベッドから出て、朝のルーティンを実行し、健康的な朝食を摂り、やるべきことに取りかかるのだ。1日の最初にダラダラしてはいけない。
■時間管理の究極の秘訣は「前日の夜」にあり
ここで、とても重要な価値のある質問をしよう。
1日の最初の数時間をムダにしないようにするには、どうすればいいか?
単純明快! 前日の夜に翌日の計画を立てればいいのだ。
1日の最初の数時間に、何をする必要があるかを正確に把握しておこう。
考えなくても実行できるように、段階的な計画を準備しておけばいい。
これこそが時間管理の究極の秘訣だ。
前日の夜に翌日の計画を立てることが重要な理由はいくつもある。
翌朝何をするかを前もって正確に把握して、計画を立てておくと、翌朝ほぼ自動的に行動を開始できる。そして、いったん行動しはじめたら生産的になれるため、1日中ずっとその状態をつづけることができる。
つまり、前日の夜に翌日の計画を立てることは、当日「何をしたらいいか?」と迷うことを防ぐのに役立つのだ。
その反面、迷っていると先延ばしの誘惑に屈しやすい。すると、最も重要なことを見極める代わりに、SNSをチェックしてダラダラと時間をムダにするなど自分にとって都合のいいことをしがちになる。
■簡単な予定表が生産的な1日を約束する
ではここで、前日の夜に翌日の計画を立てる方法を具体的に説明しよう。
まず、翌日にしなければならないことと、したいことのリストをつくる。
このリストには、「すでに決まっている予定(たとえば仕事のタスク、会議、通院)」と「有意義な活動(重要課題の実行、瞑想、運動、読書)」が含まれる。
いったんそのリストを作成したら、それを予定表に書き込もう。最初にすでに決まっている予定を書き込み、次に有意義な活動を補足していく。
私は午前中の予定だけを詳細に計画し、その日の残りのことはオープンかつ柔軟に対応している。私のある1日の計画はこんな感じだ。
1.軽く運動する
2.シャワーを浴びる
3.瞑想する
4.本書の一部を書く
5.気分転換のために外出して散歩する
6.本書をさらに書きつづける
これが私のある1日の計画のすべてだ。リストの作成には30秒しかかからないが、意欲的に1日の好スタートを切り、勢いをつけることができる。
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ニルス・ソルツゲバー
起業家・著述家・ブロガー
かつては「筋金入りの先延ばし屋」だったが、科学的根拠にもとづく方法を何百冊もの自己啓発書から徹底的に学び、ついにその悪習を克服。生産的で満ち足りた人生へと変わる。ポジティブ心理学、睡眠、瞑想に精通し、執筆や心理学研究、そして世界中を旅することをこよなく愛している。
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(起業家・著述家・ブロガー ニルス・ソルツゲバー)

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