※本稿は、松村邦洋『松村邦洋とにかく「豊臣兄弟!」を語る』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
■「豊臣兄弟!」は初の弟目線の「おとうと太閤記」
今回の大河、「豊臣兄弟!」は、豊臣秀吉・秀長兄弟のサクセスストーリーになることは間違いないでしょうね。歴史上で有名な兄弟といえば源頼朝と義経、曾我兄弟、阿部貞任・宗任、足利尊氏・直義とか、それぞれ仲が良かったりケンカしたり、中には殺し合った組み合わせもありました。
もうご存じの通り、主人公は秀吉ではなく弟の秀長のほう。言ってみれば弟目線で描く「おとうと太閤記」ですね。偉人の弟目線の大河っていうのは、これまでにはなかったと思います。兄者が英雄ですから舞台が華々しいのは保証済みですし、弟が本人ほど表立って出ていない分、ストーリーを自由につくれますよね。
だいたい後継ぎとかの責任をしょってる兄よりも、自由で無責任な弟のほうが面白味があったりしますし。この先の新しい路線にしたら面白そうです。
今回が初の大河主演となる仲野太賀さん、13歳で芸能界デビューして、その翌年にはもう大河ドラマ「風林火」(2007年)で上杉憲政の嫡子・龍若丸(たつわかまる)役で出てるんですね。それからは、「天地人」(2009年)「江(ごう)~姫たちの戦国」(2011年)、「八重の桜」(2013年)、「いだてん」(2019年)ときて、今回が初主演。あ、そうそう「江」では他ならぬ秀吉の子・秀頼を演じてたんです!
■「太賀」の由来は「大河」に出られるくらいの俳優
太賀さん、主演が決まってから「徹子の部屋」(テレビ朝日、1976年~)に出てました。
歴代の大河ドラマでは、これまでに9人の俳優さんが秀長を演じてますが、出番も多くて印象に残ってる秀長はやっぱり中村雅俊さんと髙嶋政伸さんのお二人です。中村さんは秀吉の正室・寧々役で佐久間良子さんが主演した「おんな太閤記」(1981年)で秀長を演じました。秀吉役は西田敏行さんです。寧々に呼びかける「おかか~」は流行語にもなりました。
一方、髙嶋さんが秀長を演じたのは、主演の竹中直人さんの「心配ご無用ッ!」で大ヒットした「秀吉」(1996年)でしたね。髙嶋さんは「太平記」(1991年)で足利尊氏の弟の直義、「HOTEL」(TBS、1990~2002年)でも毎度「姉さん、事件です」が決めゼリフの弟役、実生活でもお兄さんの政宏さんがいる、まさに“ミスター・弟”ですね。
お二人ともほんとに人柄の良い秀長を演じてました。髙嶋さんのほうがちょっと攻撃的で、しっかり仕事する感じ。「おんな太閤記」は「戦国ホームドラマ」って呼ばれてたくらい家庭的なエピソードが多くて、西田さんの秀吉があっちこっちの女に手を出すから、子を産んでいない佐久間良子さんの正室・寧々に気を遣う中村さんの秀長は、秀吉としょっちゅう衝突してました。
■“渡鬼”脚本のホームドラマ「おんな太閤記」
「豊臣兄弟!」はタイトルそのまんま、ちょくちょくケンカはしながらもがっちり手を組んで上を目指す……というストーリーになるでしょう。
昔の大河では、この兄弟関係をどう描いていたんでしょうか。
例えば、沢田雅美さんが演じた千種っていう、かなりめんどくさい女性に秀吉が手を出しまして、秀勝っていう男の子が出来ます。で、何とその千種母子を寧々のいる長浜城に呼んじゃうんですよ。「城に呼ぶとは何事じゃ」とキレた秀長に、秀吉は「側室を呼んで何が悪い」と開き直ります。
その後も京極高次の妹の龍子とか、言わずと知れた淀殿とか、もうあっちこっちすごくて、そのたびに秀長は母親のなか――赤木春恵さんでした――といっしょになって、「兄者、いい加減にしろ!」と怒ってました。
しのという盲目の足軽の子――スーちゃん、田中好子さん――を嫁にすると言って聞かない秀長に、「お前にはふさわしくない」と秀吉が大反対するエピソードも。ほんとに“戦国のホームドラマ”でしたね。
■兄・藤吉郎の部下の世話や金策が仕事
小一郎――後の秀長は、織田信長軍の組頭になっていた兄・藤吉郎――後の秀吉に故郷の尾張(愛知県西部)・中村から強引に連れてこられて部下になったわけですが、最初はもっぱら藤吉郎の手下の世話とかお金の工面とかの裏方をやってたんです。
信長が美濃(岐阜県)の斎藤龍興を攻め滅ぼしたとき、大抜擢された藤吉郎が奮闘して一夜にして城を築いた「墨俣一夜城」の話は有名ですけど、藤吉郎と小一郎は川並衆っていう木曽川の辺りに勢力を張ってた土豪・蜂須賀小六に、この工事を請け負ってもらおうと直談判しに行きます。
子分を3000人も抱えた11歳年上の小六親分の前で、藤吉郎が懸命にしゃべり倒すんですけど、敵のナワバリでの土木作業という、あまりと言えばあまりにも危険なミッションですから、小六もそう簡単には首をタテには振らないんですよ。
■ハッキリ見えていた! 竹中直人さんのイチモツ
と、藤吉郎の横で黙っていた小一郎が、ぽつぽつと話し始めるんです。
動と静の名コンビって感じですよね。もっとも、「秀吉」だと竹中・藤吉郎は川並衆に飲ませて食わせて、現場でもやいのやいのとカネであおりまくるんですけど、「彼らに支払うカネはどうするんじゃ!」と問い詰める髙嶋・小一郎に、「細けえことを言うな!」と怒鳴り散らして大ゲンカに。こういう凸凹ぶりが、このコンビの持ち味となっていくんだと思います。
この「秀吉」の第1話で、大仁田厚さん演じる小六親分が、フンドシ一丁の竹中さんの首根っこをつかんで担ぎ上げたとき、竹中さんのイチモツがハッキリ見えてたんです(笑)。翌日の月曜に職場や学校で話題になったんじゃないでしょうか。「あれ、見えてたよな?」「うんうん、絶対見えてた」とか。
Windows95が出た翌年で、まだネットも普及していない頃でしたから。今ならSNSで大炎上してますよね。今のNHKのアーカイブだとどうなっているか、確認してみてもいいんじゃないでしょうか。
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松村 邦洋(まつむら・くにひろ)
タレント
大学生の頃、バイト先のTV局で片岡鶴太郎に認められ芸能界入りし、斬新な生体模写で一躍有名に。ビートたけし、半沢直樹、“1人アウトレイジ”、阪神・掛布雅之、故野村克也監督など多彩なレパートリーを誇り、バラエティ、ドラマ、ラジオなどで活躍中。筋金入りの阪神タイガースファン。芸能界きっての歴史通であり、YouTubeで日本史全般を網羅する『松村邦洋のタメにならないチャンネル』を開設。特にNHKの歴代「大河ドラマ」とそれにまつわる知識が豊富。著書に『松村邦洋懲りずに「べらぼう」を語る』『松村邦洋まさかの「光る君へ」を語る』『松村邦洋今度は「どうする家康」を語る』『松村邦洋「鎌倉殿の13人」を語る』がある。
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(タレント 松村 邦洋 構成=西川修一)

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