■性犯罪に走る「危ない教師」の共通点とは
現役の教師たち7人が自らの職場である小中学校で女児たちを盗撮し、その画像をLINEで共有しているのが発覚し逮捕された一連の事件は、世間に衝撃を与えました。各教育委員会は啓発的な研修を進めているようですが不祥事は後を絶たず、連日この手の話題が報道されています。
筆者は、性被害に遭ってきた虐待被害者への治療経験から、性犯罪が起きた背景や環境について多くの事例に接してきました(詳しくは拙著『ルポ 虐待サバイバー』(集英社新書)を参照)。それを踏まえて教師のわいせつ事件に目を向けてみると、加害側には多少の共通点があるのがわかります。
普段、筆者は小さなカウンセリングルームを営んでいますが、それと並行してスクールカウンセラーとして働いてもいます。その現場にいて思うのは、多くの教師は真面目な人ばかりで、わいせつ事件とは無縁の方々だということです。一方で稀に「この人、大丈夫かな」という“危ない教師”と遭遇してきたのも事実です。
本稿では、筆者の経験を踏まえ“危ない教師”を見抜くのに役立つ知識を紹介していきます。
※事例はプライバシーに配慮して記載しています。
■「対人距離の不安定さ」というリスク因子
わいせつ事件を起こした教師について、関わりのあった児童・生徒は大きく分けて2種類の評価をします。「子どもに人気のいい先生だった」という好評と「いつかやると思っていた」という悪評です。
それらはまったく異なる要素の情報のようにも思えますが、背景には共通して本質的な問題が潜んでいます。それは、
「対人距離の不安定さ」
です。
実際、性被害・加害の両側面に関わってきた臨床経験から見ると、これは一貫したリスク因子です。
■子どもにベタベタしていないか、横柄な態度を取っていないか
対人距離を平たく言うと「年齢相応の人付き合いができるか否か」です。たとえば、幼い子どもが大人に抱きつくのは可愛いものですが、大人が小さな子どもにベタベタしてやたらと身体接触が多かったらどうでしょうか。身体接触はなくとも、子どもに対してのみ態度が横柄であることなども、対人距離の不安定さに含まれます。いずれも、成人しているのにそうした要素があるとすれば、大人としては人付き合いが不安定だと言えます。
子どもに対するわいせつ事件を紐解くと、①わかりやすくベタベタしているか、②日頃から子どもに対して横柄か――のどちらかいずれかに偏っている傾向が見られるようです。なので、上述したような二極化した関係者談が出てくるのでしょう。
子どもへのわいせつ事件は、対人距離の表れ方が極端な形式であると筆者は経験から考えています。子どもに対してベタベタするのはわかりやすいとして、子どもに横柄なのがなぜわいせつ行為につながるのか、読者の方はまだ疑問だと思います。それは後で触れていくとして、対人距離の表れ方の極端な形式がどのようなものなのかを例示していきます。
■女児のトイレを「見てあげる」と付いてきた男性教師
①子どもとの距離感が近いタイプ
小学生に対して多いのは、相手がまだ幼いのに乗じた過度なスキンシップです。小学生くらいの子はそれを「変」だとは感じられないこともあるからです。
筆者の知る例では、女児がトイレに行くのにわざわざついてきて「ちゃんとできているか見てあげる」と言った男性教師がいました。その女児は後に筆者のもとへ相談しにきて、この過去の被害を報告してきたことから、どこか変なことが起きていたという違和感はあったのでしょうが、やはりまだ子どもなのでその場で断ることができなかったようです。
そのほかにも、こうした身体的距離感の近さは心理的にも表れていて、児童・生徒の中に特定の「お気に入り」を設定しているなど、よくよく言動を見ていると、教師と子どもの線引きが弱いのがわかります。まだ人を見る視点が養われていない子どもからすると「いい先生」に思えるようです。
■その気がまったくないのに恋愛感情を抱く教師
②子どもに横柄なタイプ
このタイプは①と比べて、教師と子どもの線引きは比較的になされています。が、社会生活の中で周囲の大人と対等に主張しあって溶け込めない反動から、子どもに対して態度が大きくなっているようです。こちらに関しては、子どもからも避けられているか、嫌われているかしていることが多いようです。
こういう大人は友人関係においても、年下で物静かな相手を好むことが少なくありません。なぜなら、従ってくれるほうがやりやすいからです。子どもからすると、相手が教師という年長者なので従っているだけなのですが、その様子が「向こうも好意を持ってくれていると思った」と錯覚してしまうのでしょう。
これも筆者の知る例ですが、あまり生徒とは積極的に関わろうとしない年配の男性教師がいました。職員室の中でも、やや孤立していたようでした。ある女子生徒から親との関係について相談に乗っているうちに「恋愛感情を抱いてしまって」、部活動で遅くなった彼女を自家用車で家まで送って行くと言い同乗させ、車内でわいせつ行為をした件がありました。もちろん、生徒側には恋愛感情など微塵もありません。
■まともな教師は対人距離の偏りを自覚して気を付けている
幼年の子どもを恋愛対象とすることを小児性愛と呼びます。それは「愛情ではなく支配欲だ」と評されることがありますが、その内実は対人距離の不安定さに加え、従ってくれる相手を選んでしまうという人間関係の偏りがあるのだと筆者は思っています。逆を言うと、従ってくれる相手でなければ当人の中で恋愛感情に発展しようがないとも考えられます。
このタイプは子ども相手に限らず、成人に対する性犯罪の加害者としても登場してくる印象です。おとなしそうな相手をターゲットにしているふしがありそうです。
①②のそれぞれのタイプは、多かれ少なかれ誰しもが持っている要素だと思います。たとえ教師ではなくとも、大人よりは子ども相手のほうが気を遣わなくて楽だったり、反対に子どものほうがどう接すればよいのかわからなかったりするものではないでしょうか。
しかし、多くの人はそんな自分を自覚しています。
■心の成熟度を指す「自己客観視」
では、そんな対人距離に偏りがある教師を保護者はどう見抜けばいいのでしょうか。
多くの教師の名誉のためにもあえて述べますが、大人と子どもにも相性があるのは事実です。特定の子どもと距離が近くなることもあり得ます。しかし繰り返しますが、通常はそれに教師の側が気づけるので、一方的な理由で一線を越えてしまうということはないわけです。この気づく力をもう少し専門的に表現すると「自己客観視」と言います。
自己客観視は、冷静さの力です。好きな子にだけ贔屓している自分、感情的になってしまった自分、そんなところを見て悩み、責める力でもあります。
この能力がないと、どこか人としての幼さや未熟さを私たちは感じとります。これは心の成熟度を指すので、実年齢は関係ありません。
教師に限った話ではないですが、自己客観視の能力はとても重要です。
■子どもからの「先生のエピソード」にもヒントは隠されている
私たち大人は、この大事な力を有しているのか否かを相手の印象から感じ取ることができます。それは直に教師と接していなくても、自分の子どもが学校から帰ってきて話す内容にもヒントは隠されています。また、授業参観や面談、運動会などの行事での教師の雰囲気からも見て取れる場合があります。
具体的には子どもからの話の中に、
・特定の子が「お気に入り」にされている様子はないか
・すぐ本気になってしまって怒鳴ることはないか
・よく下ネタを言っていないか
・個人的な接点を子どもと持とうとしていないか
・手を触るなど不自然なスキンシップが多くはないか
親目線から教師を見たときに、
・敬語を使えているか
・振る舞いが実年齢と比べて幼くないか
・校内での立ち位置が浮いていないか(教員の中で孤立気味)
などは重要な指標です。自己客観視の能力に関わってくるからです。これらに問題があるから、上述の①②のどちらかのタイプに当てはまるようになり、ときに「魔が差して」一線を越えてしまうのでしょう。
これだけ事件が多発しているので、教師のことを疑いたくなる気持ちはよくわかります。筆者が本稿で述べたことだけが絶対ではないと思いますが、もしお子さんに関わる教師に心配を感じるようであれば、ぜひ本稿で述べたことを参考にしてみてほしいと思います。
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植原 亮太(うえはら・りょうた)
公認心理師、精神保健福祉士
1986年生まれ。汐見カウンセリングオフィス(東京都練馬区)所長。大内病院(東京都足立区・精神科)に入職し、うつ病や依存症などの治療に携わった後、教育委員会や福祉事務所などで公的事業に従事。
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(公認心理師、精神保健福祉士 植原 亮太)

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