■愛子内親王の「推し」のポニー
年末も押し迫ってきたが、来年の干支は午である。午は「うま」と読まれ、動物として馬が充てられてきた。
午年にはやはり馬に注目が集まるだろうが、来年、特に注目を集めそうな馬が出現した。それが、東京・世田谷馬事公苑の「テンリュウ」というポニーである。なにしろこの馬は、愛子内親王の「推し」だからである。
ポニーというのは品種名ではなく、高さの低い馬のことである。イギリスでは1.48メートル以下のものをポニーという。
愛子内親王は、今年の9月23日の「愛馬の日」に馬事公苑を訪れている。その日、メインアリーナにはさまざまな馬が登場し、技を披露した。そこに一頭のポニーが含まれていた。そのポニーは白と黒のブチで、お辞儀をするのはもちろん、腹を見せて寝ころんだり、後ろ足をけり上げたりして、観客を喜ばせた。
一緒に訪れた私の妻が、このポニーが気に入り、馬事公苑の職員に名前を聞いたのだが、その職員は知らなかった。
■午年の注目馬になるだろうテンリュウ
それから2カ月が経った11月の下旬、同じ馬事公苑では「第17回JRAジャパンブリーディングホースショー」というイベントが開かれた。馬事公苑まで家から歩いて15分ほどなので、また私たちは出掛けていった。それは、内国産乗用馬や競走馬を引退した馬たちによる障害馬術競技会である。
その際に今度は、「引退競走馬によるデモンストレーション」が、インドアアリーナのほうで開かれた。そこには引退競走馬ではないものの、テンリュウも登場した。そこで、愛子内親王が「愛馬の日」にテンリュウに注目した話が披露されたのである。
「愛子さまの推し」になったことで、テンリュウの存在はにわかにクローズアップされた気配である。白と黒のブチというのもパンダ柄も、注目される要因になるだろう。今後、イベントに登場する際には、愛子内親王の推しであることが必ず紹介され、その認知度は着実に高まっていくであろう。愛子内親王人気がテンリュウを来年注目の馬に仕立て上げていくはずなのである。
■「ポップスターのように歓声を浴びる」愛子さま
大学を卒業した後の愛子内親王は、さまざまな公務をこなすようになり、国民の前にその姿を現す機会が増えてきた。しかも、11月にはラオスを単独で訪問し、改めてその存在感を国外にも知らしめることとなり、海外の報道機関が愛子内親王について報道する機会も増えている。
たとえば、アメリカの「ABC News」では、「愛子さまの人気により、日本の男系限定の皇位継承法の改正を求める声が高まっている」というタイトルの記事が配信されている。
その出だしは、「日本で愛されている愛子内親王は、しばしばポップスターのように歓声を浴びている」というもので、「天皇皇后両陛下とともに長崎を訪問された際、沿道の支援者たちが彼女の名前を叫ぶ声は、ご両親への歓声を圧倒した」ことが報告されている。
記事内では、82歳になる長崎の被爆者の女性が、天皇一家の到着する数時間前から平和公園で待っていて、「愛子さまの即位をずっと応援してきました」と述べ、「愛子さまのすべてが好きです。特に笑顔が……本当に心が安らぎます」と語ったことが紹介されている。あるいは、58歳の会社員女性も、愛子内親王の成長をずっと見守ってきたとし、「今は彼女が将来の天皇になる姿を見たいと思っています」と語ったことも触れられている。
そうした声を踏まえた上で、小林よしのり氏の漫画などが、愛子天皇待望論の高まりの証拠として挙げられ、いかに今の日本の皇室が危機的な状況にあるかが当記事では解説されている。
■“超保守派”高市首相の拒絶にも言及
同じような趣旨の記事は、ほかにも配信されている。スペインの「EL PAÍS(エル・パイス)」の米国版では、12月4日付でギジェルモ・アブリルという記者が、「愛子さまの人気の高まりにより、日本における男系皇位継承をめぐる議論が再燃」という記事を書いている。
そのサブタイトルは、「超保守派の高市早苗首相は、今上天皇に息子がいないにもかかわらず、女性の皇位継承を禁じる制度の改革に反対している(Prime Minister Sanae Takaichi, an ultraconservative, has opposed reforming the system that bars women from the throne despite the fact that Emperor Naruhito has no sons)」とあり、高市氏が日本で最初の女性首相に就任したことと関連させながら、この問題が論じられている。
その記事の冒頭では、「天皇陛下と皇后雅子さまの一人娘、愛子さまは月曜日に24歳の誕生日を迎えられました。
■古代「サリカ法」と同列にされた皇室典範
ここで、「サリカ法」という言葉が使われていることが注目される。サリカ法とは、古代のフランク王国で成立したゲルマン部族法の一つである。そこに、女性の土地相続を否定する条文があることから、女性による王位継承に否定的なヨーロッパの陣営がその根拠として持ち出してきたものである。何しろ王は、国の領土を所有する存在だからである。日本の「皇室典範」は、このサリカ法と同列のものと見なされているわけである。
記事では、「愛子天皇」待望論者たちは、世界最古の君主制である皇統を守るため、皇位継承を一刻も早く変更するよう求めているとする一方で、高市氏は、過去に現行の皇位継承制度の変更に反対する発言をしてきたことから、法改正は容易ではないだろうという見通しまでが述べられている。
しかし、今年5月に毎日新聞が発表した世論調査では、回答者の7割が女性による皇位継承に賛成しており、共同通信が2024年に実施した別の世論調査になると、その支持率は9割に達したことも紹介されている。
記事の最後の部分では、2024年に国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)が日本の皇位継承ルールの見直しを勧告し、それが日本国内でも大きな論争を巻き起こしたことに触れている。そこでは、中央大学の大川真教授が、愛子内親王による皇位継承は、日本社会における社会的・政治的な分断の拡大を橋渡しし、統合の力となる可能性があると指摘していることが紹介されている。
■第1子継承へシフトしている欧州の王室
こうした海外の報道において、国内では報じられていなかった特別なことが述べられているわけではない。
何しろ、以前に私が書いた「『愛子天皇待望論』は日本だけの現象じゃない…女王続出の世界トレンドと男性をはるかに超える経済効果」でも述べたように、ヨーロッパの王室ではほぼ男系による継承から男女を問わず第1子による継承にシフトしているからである。日本のあり方は、海外からすれば、どうしても時代に逆行するものに見えてしまうのだ。
おりしも宮内庁のホームページでは、「天皇ご一家のご活動」のページに、新しく「愛子内親王殿下のご活動」の項目が設けられた。そこでは、「内親王殿下は、日本赤十字社での日々の業務に取り組まれながら、宮中祭祀を始め、歌会始の儀や講書始の儀、春・秋の園遊会、雅楽演奏会、鴨場での外交団接遇にご出席されるなど、皇族としてのお務めに励まれています」と述べられている。
さらに5月には、国立公文書館の特別展「夢見る光源氏」を観覧したこと、10月には、国民スポーツ大会で陸上競技や柔道競技を観戦し、あわせて佐賀県立佐賀城本丸歴史館や名尾手すき和紙の工房などを視察し、訪問先では多くの人たちと交流するとともに、歴史や伝統文化に触れたことが紹介されている。
まだ量としては多くないが、これから、愛子内親王の活動が数多く紹介されることになるであろう。すでに12月17日には、二度目となる「鴨場接待」で、国際親善にあたることが発表されている。
■愛子さまは比類なき外交の担い手
来年になって、愛子内親王がどういった活動を行うか、まだそれは発表されていないし、予想できないことである。しかし、今年以上に活発なものになるのは十分に考えられる。その中でもっとも注目されるのは、次の海外訪問であろう。
国際交流の記念の年ということでは、2026年は、日本とベルギー友好160周年であり、日本とイタリア外交関係樹立160周年である。
国交正常化や外交関係樹立70周年という国は多く、フィリピン、ネパール、ハイチ、アイスランド、チュニジア、モロッコがそれに該当する。他にも、記念の年を迎える国はいくつもある。
ベルギーとイタリア、あるいはアルゼンチンとパラグアイを天皇や皇室のメンバーの誰かが訪れる可能性は極めて高い。今や愛子内親王はもっともそれにふさわしい存在になりつつある。招待する国の側も、若き日本のプリンセスの来訪を求めるであろう。
そうなれば、海外の報道も格段に増え、愛子内親王の注目度は今以上に高まっていくことになる。特にヨーロッパを訪れれば、現地の王室と交流することになる。イタリアでは王政は廃止されているが、ベルギーには現在でも王室があり、愛子内親王と同い年のエリザベート王太女(エリザベート・ド・ベルジック)は次に王位を継承することが定められている。
来たる2026年。愛子内親王の活動からは、これまで以上に目を離すことができない。愛子天皇待望論は、その勢いを増していくに違いない。
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島田 裕巳(しまだ・ひろみ)
宗教学者、作家
放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員、同客員研究員を歴任。『葬式は、要らない』(幻冬舎新書)、『教養としての世界宗教史』(宝島社)、『宗教別おもてなしマニュアル』(中公新書ラクレ)、『新宗教 戦後政争史』(朝日新書)など著書多数。
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(宗教学者、作家 島田 裕巳)

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