細々した事務作業に時間を取られて、重要な仕事が後回しになっていないだろうか。DXコンサルティング事業を展開する宮崎学さんは「報告書や顚末書の作成、経費精算といった汎用業務は、生成AIを活用すれば効率化できる」という――。

※本稿は、宮崎学『面倒な仕事が一瞬で片付く 生成AIタスク爆速大全』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
■書類のひな型を瞬時に作成
報告書や顚末書など、書き慣れていないと意外に時間がかかる文書も、生成AIに「骨子の作成」を依頼することで作業がスムーズに進みます。
特に、「過去の経緯を整理」「発生した問題の原因を分析」「対応策と今後の方針を提示」など、報告書で定番となる構成要素をあらかじめ生成AIに伝えておくと、よりよい回答が得られやすくなります。
ここでは、不具合が発生した事象について、上司から初めて「顚末書」の作成を命じられたケースを想定したプロンプトを紹介します。
■生成AIで「顛末書」を作るとき
【プロンプト例】
# 指示文

以下の #背景 について、顚末書を作成してください。なお、顚末書が何か知りませんので、顚末書とは何かと、その作成ステップについても教えてください。
# 背景

・社内システムの一部不具合により、お客様情報が一時閲覧できない状態になった。

・障害の期間は8月1日~8月3日

・障害の原因はサーバー負荷による処理遅延

■顛末書:プロンプト作成時のポイント
1.やったことがない業務については「そもそも何を含めるか」「作成ステップ」を聞いてみよう!
過去に書いたことがない書式については、どんな内容を含めるべきなのか、どんな手順で作成したらよいかさえわかりません。その場合には、生成AIに対して「何を含めるべきか」「どんな手順で作るべきか」とプロンプトに入れてもらうと、丁寧に解説をしてくれますよ!
2.取り組んだことがない業務では最初のプロンプトはシンプルでOK
過去に取り組んだことがない場合、マークダウン記法で様々な条件を書き足すことは難しいです。したがって、最初のプロンプトは比較的シンプルなもので構いません。その分、受け答えを通して内容をブラッシュアップすることにより意識を向けてみましょう。
■顛末書:生成AIの回答例①
【実行結果のイメージ①】
顚末書とは何か?

顚末書(てんまつしょ)は、会社や組織内で問題が発生した際、その問題の経緯、原因、対応、再発防止策などを詳細に記載する文書です。
一般的には、トラブルやミスが発生した際に上司や管理部門に提出されるもので、事実関係を正確に記録し、同様の問題の再発を防止する目的で用いられます。
顚末書の作成ステップ
タイトル記載

 問題の概要がわかるように、簡潔なタイトルを記載します。

例:「顧客情報閲覧障害に関する顚末書」
発生日・発生場所の記載

 問題が発生した日時や場所を記載します。
概要(経緯)の説明

 問題がどのように発生し、どのような状況で発見されたかを時系列で詳しく記載します。
原因の分析

 問題の原因を特定し、具体的に記載します。
対応内容

 問題が発生した際に行った対策を記載します。
再発防止策

 同じ問題を再発させないために、どのような取り組みを行うのかを具体的に記載します。
署名や日付

 作成者の氏名や日付を記載します。
(②に続く)

■顛末書:生成AIの回答例②
【実行結果のイメージ②】

(①から続く)
指示に基づく顚末書作成
以下はご指摘の背景を元にした顚末書のサンプルです:
顧客情報閲覧障害に関する顚末書
作成日: 2025年1月23日

作成者:(氏名を記入)
1.概要

2025年8月1日から8月3日にかけて、社内システムの一部に不具合が発生し、お客様情報が一時的に閲覧できない状態となりました。本障害により、一部の業務に支障が生じるとともに、お客様への対応に遅延が発生しました。
2.経緯

2025年8月1日 10:00頃、システム運用チームより「顧客情報の閲覧ができない」という報告があり、問題が発覚しました。

システム担当者が確認したところ、サーバーの負荷増大により処理遅延が発生していることを特定しました。

…【省略】

■わかりやすい表現で完成度UP
本件のような顚末書のケースでは、書類を受け取った先方の管理者がシステムに詳しくないことなどが想定されます。生成AIが一度回答してきた内容に、技術的な内容が盛り込まれていたと感じた場合は、「システム開発に詳しくない管理者にもわかりやすく、もう一度内容を修正してください」と想定の読者を追加情報として伝え、再生成を依頼してみてください。ドキュメントがさらにブラッシュアップされて返ってくることでしょう。
■経費精算も自動入力で効率化
領収書やレシートを一枚一枚見ながら、システムに手入力する作業は、多くの企業で日常的に発生する単純作業の典型例です。しかし、入力ミスや工数増大につながりやすいのが悩みどころです。
最近では、画像認識(OCR)ツールとの連携がしやすくなっており、領収書の写真データをテキスト化して、それをさらに生成AIに「必要項目だけをまとめる」よう指示することで、効率的に経費精算の下準備を行えます。
ここでは、スマホのカメラで撮影した次の2枚のタクシーのレシートを表にまとめるプロセスを紹介します。
生成AIツールでは、OCRとセットになっているツールは少ないのが現状です。
ご自身がお使いの生成AIツールがOCRできない場合は、下記のようなサイトでテキストデータに変換しましょう。
Image to Text ConverterImage Converter
テキストデータをそのまま貼り付けて実行しますので、できるだけ写真の文字が鮮明に見えたほうが、より正しく実行できるでしょう。
■経費精算をAIに任せるときの指示
【プロンプト例】
# 指示文

以下の #テキスト 情報を、経費精算に必要な【日付】【合計金額】【支払先名】【登録番号】を1行1領収書として表形式でまとめてください。

もし不明な情報があれば「不明」と記載してください。

# データ

領取証

2024年11月28日

無線番号

X号

乗車料金

¥1500円

迎車

¥400円



消費税率

1900円 10.0%

BBBB株式会社 登録番号:T● お忘れ物は XXXXXX

領 收 現・チ・ク・割引

日付'24年11月29日

車番

Y

メータ運賃



No.Z

000

¥800円

合計金額

¥800円

上記の通り領収致しました

消費税率

10%

登録番号:T○

(株)AAAAA

■経費精算:プロンプト作成時のポイント
1.多少の文字崩れはそのままでOK
OCRでは100%正しく文字を認識してくれないことがあります。例えば、上記例では、領収書の2枚目が「領 收 現・チ・ク・割引」と文字崩れを起こしています。これを一つずつ修正していては業務効率化につながりません。
まずは文字が鮮明に映るように写真を撮っておけば、OCRの多少の文字崩れは生成AI側で処理をしてくれます。
2.領収書データの間は改行、スペースで明確に
生成AIのほうでは、改行やスペースがあることで「これは違う領収書のデータである」と認識をします。データの区切りを明確にするため、改行やスペースをしっかりと挿入してください。
■経費精算:生成AIの回答例

テキストがうまく表示されているが、例えば支払先名が不明と回答してきてしまった場合、一度であきらめずに、「不明のところもテキスト化はされているので、推測してできるだけ埋めてください」ともう一度指示を出してみましょう。
100%ではありませんが、生成AIができる限り対応してくれることもありますので、ぜひ活用してみてください。

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宮崎 学 (みやざき・まなぶ)

アリストル 代表取締役CEO

2011年東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学修了。新卒で電通に入社しデジタルマーケティングを専門に、保険、EC、消費者金融等の広告主に対して戦略立案、および広告運用の統括を担当。2015年、シンガポールに移住しIMJ-IP(現Spiral Ventures)に参画、ベンチャーキャピタリストとして活動開始。東南アジアで投資、バリューアップ、ファンドレイズを担当。
2017年に帰国後、スパークス・グループで未来創生ファンドに参画し、世界中のAI/ロボティクスベンチャーへの投資業務に従事。2018年に当社を設立し代表取締役に就任、現在に至る。2021年4月より東京大学で学術専門職員、2025年4月より立命館大学で客員准教授も務める。

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(アリストル 代表取締役CEO 宮崎 学 )
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