※本稿は、牧田善二『すごく使える栄養学テクニック』(日本実業出版)の一部を再編集したものです。
■「白米をたくさん食べている村の人々は短命」
「和食はヘルシー」だからと、和食を選んだことはありますか?
油を多用しない低カロリーな料理、季節の食材をふんだんに使った料理のイメージから、そう思う人も多いのではないでしょうか。また、「ダイエット中には中華料理やイタリアンを避けることはあっても、和食なら食べても罪悪感がない」と思う人もいるかもしれません。
たしかに和食には、健康に良い影響を与えるといわれる魚や海藻類、野菜や発酵食品が多く含まれています。また、日本人は他国民に比べて肥満の人が少なく長寿の傾向にあることも、「和食はヘルシー」という印象の原因になっていると考えられます。
しかしながら、「和食はヘルシーだ」と単純には考えないでほしいのです。たとえば、糖質が多い白米や塩分が多い漬物は、残念ながら健康的な食べ物ではありません。漬物以外にも、味噌やしょうゆなどの調味料、干物などのおかずでも、簡単に塩分過多になります。
このことに早くから気づいていた、近藤正二氏というすばらしい研究者がいます。東北大学の名誉教授だった近藤氏は、1935年から36年間、リュックサックを担いで険しい山道を上り下りしながら990の町村を訪ね歩き、人々の生活習慣や健康状態を確かめていきました。
その結果、「白米をたくさん食べている村の人々は短命だ」という結論に行き着き、その研究内容を『日本の長寿村・短命村』(サンロード出版)という名著にまとめました。
■「和食はヘルシー」という幻想から抜け出す
当時は、白米を食べるのはぜいたくなことでしたが、そのおかずとして「ご飯がすすむ」塩分が強い漬物が主に食べられていて、魚などの脂質やタンパク質は一緒に食べられていませんでした。
脂質やタンパク質を一緒に食べずに白米を食べれば、急激に血糖値が上がります。その頃はまだ検査システムがなかっただけで、人々の体内では血糖値の急激な変動が起きていたことでしょう。
それに加え、塩分の摂りすぎによる高血圧もあったことでしょう。高血圧になれば、動脈硬化は進み、血管はボロボロになります。実際に、短命の村では脳卒中による死がとても多かったのです。
今は当時より、脂質やタンパク質を含むおかずの量が増えました。しかし、白米、味噌汁がセットになった和定食は、やはり糖質と塩分が多すぎます。なるべくおかずを中心に食べ、白米や味噌汁は少なめにするくらいで良いでしょう。
血糖値や血圧が高い状態は、糖尿病や高血圧だけでなく、慢性腎臓病など深刻な病気にもつながります。「和食はヘルシー」という幻想から抜け出しましょう。
■食事とは別に2Lのミネラルウォーターを
意識的に水を飲んでいますか? 夏場はともかく、冬になると水分補給をつい忘れがちになり、「今日はペットボトル1本ぶんも飲んでいなかった」と気づく人もいるかもしれません。
熱中症対策としてのみならず、水をしっかり摂ることは健康維持に欠かせません。
水分が不足すれば、血液が濃くなり血栓が生じやすくなります。その結果、心筋梗塞や脳梗塞のリスクも高まります。
就寝中にトイレに起きることを避けるために、寝る前に水分を摂らないのはとても危険な行動です。命を守るために、たとえ寝る前でもコップ1杯程度の水は飲みましょう。
そもそも、私たちは尿や汗として、1日に約2.5リットルもの水分を排出しています。あくまで平均値なので、汗を多くかく人はもっと水分を失っているはずです。
当然のことながら、失った水分は補給しなければなりません。
食事に含まれる水分とは別に2リットルほどのミネラルウォーターを飲むことを私はすすめています。ほかの飲み物ではなく、ミネラルウォーターが最適です。
砂糖の入っていない緑茶や紅茶、コーヒーを飲むこと自体は良いのですが、カフェインによる利尿作用があるので、体内に水分を保持する意味では向きません。もちろん、糖質の多い清涼飲料水はNGです。
■「のどが渇いてからの水分補給」では遅い
私たちが飲み慣れている日本の水はたいてい軟水ですが、ヨーロッパのミネラルウォーターには硬水も多く、飲んでみるとその個性を感じます。
水の「硬度」は、「1リットル中に含まれるカルシウムとマグネシウムの量(単位はミリグラム)」で示されます。日本では、0~100ミリグラムを「軟水」、101~300ミリグラムを「中硬水」、301ミリグラム以上を「硬水」と分類しています。
東京の水道水はだいたい60ミリグラム程度の軟水、「エビアン」は304ミリグラムで硬水となります。とくに硬度が高い「コントレックス」は1468ミリグラムもあり、そのため「飲みにくい」と感じる人も多いようです。ミネラルウォーターなら、軟水でも硬水でもかまいません。あなたにとって飲みやすい水を探してみてください。
なお、「のどが渇いた」と感じる前に水を飲むことが大切です。夏場において、のどの渇きを感じたときは、すでに熱中症になりかけている危険性があります。
たとえば1時間ごとにコップ1杯の水を飲むと決めてしまうのも良いでしょう。飲み忘れないように、スマホのタイマー機能などを使えばベストですし、時間ごとにメモリがついたボトルなども活用し、水分補給しやすい仕組みをととのえることをおすすめします。
■「スポーツドリンクで熱中症予防」の落とし穴
暑さが厳しくなると、「水分補給をして熱中症予防をしよう」とスポーツドリンクに手が伸びることも多くなるのではないでしょうか。
しかし、それも適量であることが大前提。たくさん飲めば、塩分も糖分も摂りすぎます。しかも液体ですから、消化の時間がかからず、血糖値の急上昇につながります。健康のために良かれと考えてガブガブ飲んでいた結果が、糖尿病につながりかねないのです。
また、それら市販の飲み物には、味をととのえるさまざまな添加物も入っています。よけいな添加物を摂ることは、健康維持のためにマイナスです。
最近では、学校の部活動でスポーツドリンクを多飲していた中学生が高血糖のためにめまいで倒れ、救急車で搬送された事例が報告されています。こうしたケースを「ペットボトル症候群」(医学的には清涼飲料水ケトーシス)と呼び、専門医の間で問題視されています。
血糖値は、少しくらい高いくらいでは痛くもかゆくもありませんが、300mg/dL(ミリグラム・パー・デシリットル)を超えるようになると、意識障害が起きる危険ラインです。
この中学生の場合、倒れたときには、すでに重症の糖尿病を発症していることになり、大変に憂慮される状況です。スポーツドリンクで熱中症予防はできないばかりか、別の問題も引き起こすことになります。
■500mlの「炭酸水」を水代わりでもOK
前述の通り、熱中症予防の飲み物では、ミネラルウォーターが一番。夏場に限らず、私は1日に2リットルくらいのミネラルウォーターを飲むことをおすすめしています。
水をたくさん飲むことで、「血液ドロドロ」が避けられることは、多くの人が知っています。
血液ドロドロは血管の詰まりやすさにつながりますし、血液中の水分が少なくなれば、その分、ブドウ糖濃度なども上がり健康リスクが生じやすいのです。
なお、清涼飲料水のシュワシュワした刺激が好きな人は、砂糖などで味つけされていない「炭酸水」を水代わりに飲んでもOKです。
ただし、炭酸水は胃腸を刺激するので、飲みすぎればお腹が張ってしまいます。1日に500ミリリットルのペットボトル1本くらいに留め、ミネラルウォーターか浄水器を通した水で水分を補給しましょう。
塩分を補給したい場合は、塩分を含む清涼飲料水や塩あめよりも、梅干しなどの自然な食材から摂るようにしましょう。
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牧田 善二(まきた・ぜんじ)
AGE牧田クリニック院長
1979年、北海道大学医学部卒業。地域医療に従事した後、ニューヨークのロックフェラー大学医生化学講座などで、糖尿病合併症の原因として注目されているAGEの研究を約5年間行う。この間、血中AGEの測定法を世界で初めて開発し、「The New England Journal of Medicine」「Science」「THE LANCET」等のトップジャーナルにAGEに関する論文を筆頭著者として発表。1996年より北海道大学医学部講師、2000年より久留米大学医学部教授を歴任。
2003年より、糖尿病をはじめとする生活習慣病、肥満治療のための「AGE牧田クリニック」を東京・銀座で開業。世界アンチエイジング学会に所属し、エイジングケアやダイエットの分野でも活躍、これまでに延べ20万人以上の患者を診ている。
著書に『医者が教える食事術 最強の教科書』(ダイヤモンド社)、『糖質オフのやせる作おき』(新星出版社)、『糖尿病専門医にまかせなさい』(文春文庫)、『日本人の9割が誤解している糖質制限』(ベスト新書)、『人間ドックの9割は間違い』(幻冬舎新書)他、多数。 雑誌、テレビにも出演多数。
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(AGE牧田クリニック院長 牧田 善二)

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