※本稿は、土肥優扶馬『賢者病 考えすぎて動けないがなくなる本』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
■知識を定着させる黄金比「インプット3割、アウトプット7割」
持っている知識を使える知識に変えるためには、どうすればいいのでしょうか。意識すべきは「インプットとアウトプットをセットにする」ことです。
精神科医・樺沢紫苑の『学びを結果に変えるアウトプット大全』(サンクチュアリ出版)では、知識を定着させる黄金比はインプット3割、アウトプット7割だと述べられています。脳科学的にも、知識は「人に話す」「書き出す」「行動に移す」といった外向きの活動によって長期記憶に残ることが明らかになっています。
では、この3:7の比率をどのように日常に取り入れればいいのでしょうか。
例えば本を読んだとき、読み終えてから感想をまとめようとするのではなく、気になった一文をスマホにメモするだけでもアウトプットになります。
料理のレシピを見たなら、その日の晩ごはんで1つ実践してみる。健康に関する本を読んだら、翌朝から1つだけ習慣に取り入れてみる。こうした小さな行動が、インプット3に対してアウトプット7を積み重ねることになります。
大事なのは「特別な準備をしなくてもできるアウトプット」を見つけることです。
学びを日常に溶け込ませることで、知識は「頭にあるだけのもの」から「生活の一部」へと変わっていくのです。
■本の内容を「全部試す」はNG、やるなら「1つだけ」
アメリカの組織行動学者デイヴィッド・コルブの「経験学習モデル」では、学びは「経験→省察→概念化→実践」という4つの流れを回すことで自分のものになるといわれています。これは難しい理論ではなく、日常の中で自然にできるシンプルな習慣です。
例えば、本を読んだときで考えてみましょう。
まずは「経験」です。読んで「いいな」と思ったら、小さく試してみます。健康の本を読んだら、翌朝はコーヒーの前に水を1杯飲んでみる。時間術の本を読んだら、今日だけは「やることを3つに絞る」と決めてみる。大切なのは「いきなり全部」ではなく「1つだけ」です。
次に「省察」です。やってみてどう感じたか、少し立ち止まって考えてみます。
「コーヒーを飲む前に水を飲んだら、意外と頭がスッキリしたかも」
「やることを絞ったら心に余裕ができたな」
そんな気づきをメモに残すのもおすすめです。逆に「これはちょっと合わなかったな」と思うことも大切な学びです。
■「小さな循環」を繰り返す
そこから「概念化」です。つまり、自分なりのルールや気づきにまとめていく段階です。「朝イチで水を飲むと調子がいい」「タスクは3つに絞ると集中できる」など、経験を通じて「自分なりの原則」が見えてきます。
そして「実践」です。見つけた原則を少しずつ生活に組み込んでみます。朝の水を習慣にしたり、タスク管理を毎日のルーティンにしたり、こうしてまた新しい経験が生まれ、再び省察に戻ります。
僕自身、読んだ本の内容をSNSで発信することでこのサイクルを繰り返してきました。アウトプットする中で「ここはうまく説明できないな」と気づき、もう一度本に戻る。そうすると理解が深まり、次の発信ではもっと自分の言葉で語れるようになる。経験から実践を繰り返しながら、少しずつ知識が血肉になっていきました。
学びは「一気にやること」ではありません。
小さく試してみる。ほんの数分でも振り返る。気づいたことを自分の言葉で残してみる。そしてまた試してみる。この小さな循環を繰り返すことが、知識を頭の中だけの情報から、現実を動かす力へと変えていき、知識を「わかったつもり」で終わらせず、あなた自身の一部にしてくれます。
■「読解力不足」は大きな不利益を被る
インプットとアウトプットをセットにする。この習慣を身につけたとしても、そもそも「正しく読み取れていない」としたら、すべてが台無しになってしまいます。だからこそ、知識を使える知識に変えるための土台として、「読解力を意識する」ことが欠かせないのです。
国立情報学研究所教授の新井紀子による『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)では、衝撃的な事実が明らかにされています。多くの人が、教科書レベルの文章すら正確に読み取れていないというのです。文字を追うことはできても、「誰が」「何を」「なぜしたのか」という要点をつかめない。
ここでいう「読解力」とは、単に速く読めることや難しい漢字を理解できることではありません。
文章の論理をたどり、書き手が本当に伝えようとしていることを正しく理解する力です。言い換えれば、書き手の心の奥に潜む思惑を見抜くのです。
例えば「糖質制限は効果的だ」という言葉を、「炭水化物を完全に断てば良い」と極端に解釈してしまう人がいます。しかし本来は「摂りすぎを控えると健康に良い」という意味だったりします。読解力が不十分だと、このように知識を間違った形で使ってしまうのです。
■「文章の基本構造」を意識すると、読み方が変わる
読解力は子どもだけでなく、大人も鍛え直すことができます。多摩大学名誉教授の樋口裕一の『「頭がいい」の正体は読解力』(幻冬舎)によれば、読解力はビジネスや人間関係など人生のあらゆる場面で必要とされる普遍的な能力です。
読解力は「語彙力」「文章力」「理解力」という3つの要素から成り立ち、文章を正しく理解し、自分の考えを整理して表現するための土台になります。
『「頭がいい」の正体は読解力』では「文章は問題提起→意見提示→展開→結論という基本構造で成り立つ」と説明されています。この流れを意識して読むだけで、ただ目で追う読み方から、意味をつかみ取る読み方へと変わります。
また、次のような訓練も効果的です。
・文章に何度も登場するキーワードを見抜き、その意味を正しく理解すること
・筆者の意図を推し量り、長い文章を「要はこういうことだ」と要約する力を身につけること
こうした訓練によって、知識が自分の中で再構築され、応用できる力へと変わっていきます。
■メール・読書・会話は“曖昧な理解で終わらせない”
では、この読解力を日常の中でどのように鍛えることができるのでしょうか。
ニュース記事を読むときには「これは事実なのか、それとも記者の意見なのか?」と区別するだけで、情報の受け取り方が変わります。事実を押さえ、意見を理解しつつ自分の立場を考える練習になるのです。
仕事のメールを読むときには、「依頼内容は何か」「期限はいつか」だけでなく「相手が本当に求めていることは何か」を意識して読むと、的外れな対応を防げます。単なる情報処理ではなく、相手の意図を理解する訓練になります。
本を読むときには、読み終えたら「この章の問題提起は何か?」「著者の結論はどこにあるのか?」と自分に問いかけ、1~2行で要約してみます。これを繰り返すと、理解の曖昧さが浮き彫りになり、読解力が鍛えられます。
文章だけでなく、人との会話でも同様です。相手の言葉をそのまま受け取るのではなく、「この人はなぜそう言ったのか」「どんな前提や意図があるのか」と考える習慣を持つと、表面的なやり取りを超えて理解が深まります。
こうした日常の場面で読解力のトレーニングを繰り返すことで、知識は誤解なく理解され、行動に直結する力へと変わっていくのです。
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土肥 優扶馬(どひ・ゆうま)
読書インフルエンサー
大阪府出身。大阪教育大学大学院 教育実践力コース修了。読書によって人生が変わった経験をもとに、SNSでの本の要約や学びの発信を開始。現在SNS総フォロワー数は20万人を超え、Instagram、TikTok、YouTube、Voicyなど複数のプラットフォームで発信を続けている。
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(読書インフルエンサー 土肥 優扶馬)

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