お土産に持って行って喜ばれるのはどんなお菓子か。国内外で2万個以上のスイーツを食べた製菓衛生師の宮本二美代さんは「有名パティスリーや老舗店舗の品は、ブランド自体に『品質保証』のような力があり、あげる人の誠実さやセンスのよさを示すことができる」という――。

※本稿は、宮本二美代『教養としてのお菓子』(Gakken)の一部を再編集したものです。
■「あなたを想って」が伝わるお土産
仕事帰りや旅先で、ふと目に留まったお菓子。「家族に食べさせてあげたいな」と思う瞬間は、何よりも温かい愛情の表れです。そんな気持ちがこもったお菓子の手土産は、家族との時間を豊かにし、日常に小さな幸せを届けてくれます。
「あなたのことを想って買ってきたよ」という心配りの証となるでしょう。家族にとっては味以上に、「覚えていてくれた」「気にかけてもらえた」という気持ちが嬉しいもの。ただし、“誰に”を意識した選び方が大切です。
①お子様に
・見た目が楽しい、キャラクター使用やカラフルなお菓子

・一口サイズや小分けでシェアできるもの

・季節イベントに合わせた限定パッケージ(クリスマス、ハロウィンなど)
※ 可愛い型抜きができるパズルのような、美味しくて遊び心のあるバウムクーヘンなど人気が高いです。

例)「カタヌキヤ」(https://www.katanuki-ya.com/
■高齢の両親には歯にやさしいお菓子を
②パートナーに
・一緒に味わえるちょっと贅沢なスイーツ

例)季節のショートケーキ、高級チョコレート、リッチなアイス

・コーヒーやお茶に合う焼き菓子

・「あなたと食べたくて買った」という、さりげない一言で特別感が増す
③高齢のご両親に
・甘さ控えめで食べやすい和菓子(羊羹、どら焼き、最中)

・柔らかく歯に優しいお菓子(抹茶プリン、ゼリー、わらび餅)

・食べやすさと健康を意識(例:柔らかい和菓子、米粉や抹茶のお菓子)
④家族みんなでシェア
各種詰め合わせタイプや、クッキー缶など
誰の笑顔を想像して選ぶかで、お菓子の意味も変わります。家族がお揃いの時は、あえて個包装ではなく、みんなで楽しめるクッキー缶や、ホールのバウムクーヘンなどもぴったりで、「美味しさ」と「時間を共有する楽しさ」も生まれます。
■特別感より「ほっとする味」が喜ばれる
お菓子は、言葉にしづらい感謝や想いを伝える最高のツールです。
「今日はちょっとだけ遅くなってごめんね」

「いつも家のことをありがとう」
なかなか照れ臭くて普段言葉にできない――そんな気持ちを、そっとお菓子に添えて渡すだけで、家族の心はじんわり温まります。

派手なお菓子よりも、家族には「ほっとする味」や「慣れ親しんだ味」が好まれます。
地元の老舗のお菓子、季節ごとの和菓子などは、話の種にもなり、家族の会話も弾むきっかけになります。
意外と知られていない、家族へ贈るお菓子の選び方のコツは、次の通り。
■「いまみんなで食べよう」が楽しい時もある
◎賞味期限も愛情のうち
家族がすぐに食べられない場合もあります。「日持ちするお菓子」「個包装」などは、気遣いの表れとして好印象です。
逆に、家族が揃っているとわかる日には、あえて日持ちのしない特別なお菓子を手土産にすると、サプライズ的で喜びも広がります。
◎原材料のチェック・アレルギーも考慮
せっかくの大切な家族へのお土産。なるべく、原材料に添加物が入ってない厳選素材のお菓子を選びたいもの。また、ナッツや卵、小麦など、家族の体質に合わせて選ぶことで「覚えてくれてたんだ!」と感動されることも。
◎“いつもの定番”も立派な贈り物
新しいものより、「うちではこれ!」という定番を守るのも家族ならではの美学です。贈る時に、こんな一工夫もあるといいでしょう。
・「家族の誰を想って選んだか」をそれとなく伝える

例)「お母さんが好きそうだったから」「子どもたちに喜んでほしくて」

・渡し方に遊び心を

テーブルに置いて「どれにする?」と選んでもらうと、ちょっとしたイベント感が生まれます

・メッセージを添える

「ありがとう」「お疲れさま」の一言が、ただのお菓子を“心のギフト”に変えます。

お菓子の手土産は、単なる食べ物ではありません。それは「時間」と「思い出」を分かち合う、かけがえのない“贈り物”となります。
「お父さんが買ってきたあのお菓子、美味しかったね」「また、あれを一緒に食べたいな」。そんな何気ない会話の中に、家族の温もりと絆が育まれていきます。
お菓子は口にするたびに、心の中にそっと記憶を刻み、家族の歴史のページを彩ってくれるのです。
■お菓子がコミュニケーションのきっかけに
また、誕生日や記念日などの“特別な日”ではなく、あえて何でもない普通の1日に、さりげなく手渡された甘い贈り物は、深い感動を呼び起こします。「今日はどうだった?」「これ、好きだったよね」。そんな一言とともに差し出されたお菓子は、“気にかけてくれている”という想いが伝わり、日常に優しい彩りを添えます。
ほんのひと箱のお菓子が、家族の会話を生み、笑顔を生み、心を温めてくれる。それこそが手土産に込めることのできる、何よりの価値なのです。
家族への手土産は、金額や豪華さよりも思いやりが一番のスパイス。甘いお菓子は、日常に小さな幸せを届ける“家庭のコミュニケーションツール”です。
「これを渡したら、家族がどんな顔をするかな?」と想像しながら選ぶことが、一番のコツかもしれません。
小さな一口が、大きな信頼と絆を育てるきっかけになるのです。ほんの少しの気遣いで、日々の暮らしに豊かさが増し、絆が深まります。
ぜひ、次にお菓子を手に取る時には、「誰の笑顔を想像したか」を大切にしてみてください。きっとそのお菓子は、口にする前から家族の心を温かく包んでいるはずです。
■センスのいい人は「確かなブランド」を選ぶ
信頼できるブランドのお菓子を選ぶことは、あなた自身や企業の「安心感」「誠実さ」「センスのよさ」を示す有効な手段になります。ブランドには、それまで積み重ねてきた信頼と品質の証があり、そのブランドを選ぶという行為自体が、相手への敬意や配慮の証となるのです。
有名パティスリーや老舗店舗の品は、それだけで「品質保証」のような力を持っています。
「この会社は細部まで気を配っている」

「センスのよい選択をする人だ」

「安心して付き合える」
といった印象につながります。
例えば、「とらや」の羊羹や京都「鼓月」の千寿せんべい、「ピエール・エルメ・パリ」や「ラデュレ」のマカロン。ブランド名を聞いただけで、多くの人に「確かに間違いない」と思わせる力があり、品格ある印象を残せるでしょう。
■「これを選んでおけばハズレなし」ブランド
そもそも、なぜ“ブランド”が重要なのか? 大きく3つあるかと思います。

1) 品質と味の安定性
一流ブランドは、どの商品も一定の品質と味を保っています。
失敗が許されないビジネスシーンでは、味の当たり外れがないという安心感は大きな強みです。
2) パッケージや洗練された演出
百貨店でのギフト対応や包装の丁寧さは、贈る側の「気が利く」印象を後押しします。
3) 相手の記憶に残りやすい
「この間いただいた○○のフィナンシェ、美味しかったね」と、話題のきっかけになることも。印象に残るブランドのお菓子は、名刺以上の効果を持ち得ます。
信頼されるブランド例を、シーン別に挙げましょう。
・初対面・商談前……「ヨックモック」シガール、「アンリ・シャルパンティエ」マドレーヌやフィナンシェ→万人に人気のお菓子。誰もが知る安定感

・年配の方へ……「豊島屋」鳩サブレー、「満月」の阿闍梨餅→老舗の威厳と信頼感
・女性ウケ・おしゃれ系……「ピエール・エルメ・パリ」や「ラデュレ」のマカロン、「ゴディバ」のチョコレート&クッキーアソートメント→パッケージも華やかで、特別感あり
・謝罪・フォロー時……「とらや」の小形羊羹、「文明堂」のカステラ巻→食べ応えがある、歴史と重厚感を感じるお菓子
■商品の「物語」まで調べておけば…
さて、信頼できるブランドのお菓子には、必ず「物語」があります。
・数百年続く老舗が守ってきた伝統

・地域の素材を活かしたこだわり

・海外で愛され続ける洗練された味わい
こうしたストーリーを手土産とともに伝えることで、会話が弾み、場の空気が和みます。お菓子がただの「食べ物」から「話題の種」へと変わるのです。
ブランド菓子を選ぶ際には、次のポイントに気をつけましょう。
・相手の年代や嗜好に合うか

例)甘さ控えめを好む方には和菓子、若い世代には華やかな洋菓子。


・食べやすさ

職場なら個包装、家庭ならカット済みやシェアしやすい形状が便利。

・ブランドイメージと贈り手の立場

高級すぎると気を遣わせることも。適度な上質感が大切。

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宮本 二美代(みやもと・ふみよ)

製菓衛生師

保有資格は、製菓衛生師(国家資格)、フードコーディネーター、ラッピング認定講師。東京都出身。多数のお菓子教室や専門学校で学ぶ。卒業後は、都内近郊の製菓店やホテル、カフェにてパティシエールとして従事。その後、フランスへお菓子留学「ル・コルドン・ブルー」パリ校卒業 製菓ディプロム取得。卒業後は、パリのパティスリーにて研磨を積む。帰国後は専門学校・カルチャースクール、企業イベントなどで製菓・ラッピング講師として活動。指導した生徒様は1万人以上。世界20カ国以上を食べ歩き、食べたスイーツは2万個以上。
2010年「ビスキュイ・セック」お菓子とラッピング教室開校。現在は、心と身体が整う「未来健康アカデミー」主宰/週末カフェ「未来アリスカフェ」オーナー。焼き菓子ネットショップ運営。

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(製菓衛生師 宮本 二美代)
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