いよいよ中学受験の本番が近づいてきた。直前期の子供に親はどう接するのがいいのか。
プロ家庭教師集団名門指導会代表の西村則康さんは「親が不安になるのは当然だが、それを直接子供にぶつけてはいけない。気持ちを伝えるうえで、おすすめのフレーズがある」という――。
■直前期にやるべきことはたった1つ
年が明けて、いよいよ中学受験本番の時期に入った。たった1回のテストで合否が決まると思うと、心穏やかではいられなくなるが、この時期の焦りは禁物だ。もし今もなお苦手単元の克服をしようとあがいているなら、ただちにやめるべきだ。中学受験では満点を取って合格する子はほぼいない。テストの得点が低くても、合格点に達してさえいれば合格できる。
直前期の今やるべきことはたった1つ、その学校を受ける子なら誰もが正解できるような基本問題を絶対に落とさないことだ。それさえ押さえておけば、あえて苦手に向かう必要はない。むしろ、苦手を深掘りすればするほど、合格から遠ざかる。
1月は得意科目を中心に勉強を行い、「これはもう大丈夫」「これももう大丈夫」と、できていることを確認しよう。そうすれば、気分もいいし、自信も付く。
この「自信」こそが、入試本番で重要になる。
■「そんな勉強では合格できない」と言ってはいけない
とはいえ、小学生の子供と違って、数々の失敗や試練を経験してきた大人の目からすると、「さすがに今のこの状態では、第一志望には合格できないだろう」と思うかもしれない。すると、つい「そんな勉強では合格できないわよ」と発破をかけたくなるだろう。だがこの言葉は、直前期に絶対に言ってはいけない。
親の不安は子供にも伝わるもので、子供の中にはこの時期すでに「どうせ僕は第一志望校に受かりっこない」とあきらめている子もいる。実際、現時点での学力と志望校のレベルがあまりにも乖離している場合は、逆転合格は望めない。よく塾の合格体験記などで「逆転合格」が紹介されているが、それは極めて例外であると思っておいたほうがいいだろう。
受験校を選ぶ際、第一志望校合格にこだわりすぎたり、偏差値の高い学校ばかりをチョイスしたりするとうまくいかないことが多い。中学受験の勉強は小学校生活の約半分を費やすため、その努力が報われるようにと偏差値の高い学校を選びがちだ。
高い目標を掲げて努力することを否定するつもりはないが、現実と大きくかけ離れている志望校選びは避けたほうがいい。でも、モチベーション維持のためにどうしても第一志望校を受験したいのであれば、挑戦したほうがいいだろう。ただし、その場合は、第二志望校以降の併願校をうまく組み合わせる必要がある。

■親は励まし続けることが大事
たとえ第一志望が雲の上にあっても、親は不合格をイメージさせるような言葉は封印し、合格を予感させるような言葉を選んでほしい。「そんな勉強では合格できないわよ」と、できていないことを指摘するのではなく、「これさえ押さえておけば、合格も夢じゃないかもよ」と、本当に伝えたいことだけに絞って、あとは何の根拠がなくても合格を予感させるような言葉を渡す。
そして、今すでにあきらめモードになっている子供には、「大丈夫! 今からが本番だよ」と明るく励まそう。今の時期はそれを言い続けることが大事だ。なぜなら、前向きな言葉を言い続けてあげないと、第一志望校だけでなく、第二、第三志望校の受験までネガティブな気持ちが引っ張られてしまい、本来受かるべき学校も不合格になってしまうことがあるからだ。
■「最後の10日間」でも伸びる可能性はある
1月に入ると、関西地方を筆頭に、首都圏では埼玉、千葉入試がスタートする。東京・神奈川の受験生にとっては、本番前の「肩慣らし受験」になるが、ここでの受験校選びが非常に重要になる。理想は2校受けて、1勝1敗。もちろん、2勝できるに越したことはないが、子供によっては「あれ? もう2つも合格しちゃったよ。俺、案外楽勝だったり?」と気を大きくして、その後、手を抜いてしまう子がいるので要注意だ。
1勝1敗であれば、「合格」という安心を1つ手に入れつつ、受験にはやっぱり合否があるのだということを、身を以て知ることができる。そして、「このままでは第一志望校に合格できないかもしれない。
もっと真剣に頑張らないと!」とお尻に火が付いたように頑張り出す子もいる。特にこれまで受験に対して、どこか他人事だった男子が変貌するケースは多い。
そういうモードに入ったとき、最も効果が期待できるのが、理科・社会の勉強だ。これまではただなんとなくテキストを眺めているだけだったのが、「これは絶対に覚えるぞ!」とものすごい集中力を発揮することが少なくない。また、算数はこの際、難問には手を出さず、定型的な基本問題を確実に解く練習をさせると、それだけで簡単に20点くらいはアップする。
つまり、1月の埼玉、千葉入試が終わった後の10日間ほどで大きく伸びる可能性は十分にあるということだ。実際に、それで合格した子供は何人もいる。
■親が不安を隠しきれないときの“最強フレーズ”
だが、中学受験専門のプロ家庭教師である私がどれだけ伝えても、直前期の親の不安を取り除くことは難しい。「不安に思う必要はない」と言っても、不安になるのは当然だろう。だが、その不安を直接子供にぶつけてはいけない。
では、子を思う気持ちをどう表現したらいいのだろうか?
おすすめのフレーズがある。例えばこんな感じだ。

「お母さん、試験が近づいてドキドキしてきたわ。あなたも不安だろうと思っていたけど、しっかり落ち着いて勉強してたいしたもんだわ~、感心する。この調子でいけば大丈夫ね!」
隠したくても隠せない自分の気持ちを伝えつつも、子供の頑張りを肯定する。同じ不安な気持ちを伝えるにしても、この言い方であれば、子供を不安にさせることはないし、褒められて嬉しいと思うに違いない。そして、「そうか、僕も不安だったけど、意外と落ち着いて勉強できているんだな。よし、この調子で頑張ろう!」と、自分に自信を付けながら、最後まで頑張ることができるはずだ。
春はもうすぐそこまで来ている。

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西村 則康(にしむら・のりやす)

中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員

40年以上難関中学受験指導をしてきたカリスマ家庭教師。これまで開成、麻布、桜蔭などの最難関中学に2500人以上を合格させてきた。新著『受験で勝てる子の育て方』(日経BP)。

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(中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員 西村 則康 構成=石渡真由美)
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