お墓参りや清掃を代行するサービスが注目を集めている。ふるさと納税の返礼品としても広がっているという。
葬儀・お墓・終活ビジネスコンサルタントの吉川美津子さんの著書『墓じまい 何をすればいいのか、教えてください!』(WAVE出版)から、お墓管理のポイントを紹介する――。
■行けない墓参りは「代行サービス」
夫婦それぞれの家のお墓がどちらも遠方にあるうえに、近くに墓掃除をしてくれる親戚もいない、体調的に定期的な掃除やお参りが難しいという、やむを得ない事情で1年に2回の掃除も難しい方がいます。
そんな方には、墓参り代行サービスの利用も選択肢のひとつです。このサービスでは、墓参り代行の専門業者や石材店などが依頼者に代わって現地に赴きます。そして、内容はさまざまですが、主に、次のような作業を行ってくれます。
・墓地の清掃(敷地内の草むしり・ゴミ拾い、お墓の掃除)

・花のお供え

・線香をあげてのお参り
多くの代行サービスは、作業前後の様子を撮影し、写真で報告付きのため、遠方にいてお墓の状態を確認できて安心です。費用はサービス内容や墓地の規模によって異なりますが、相場としては1万~2万円程度が一般的です。定期的な契約が可能なプランを用意している業者もあり、定額プランを選んだ方が費用は抑えられます。
また、最近ではインターネットで個人が墓参り代行を請け負っているケースもあります。こうした個人のサービスは、企業の代行業者とは異なり、サービスの質や対応にばらつきがあるため、利用の際は注意が必要です。信頼できる相手に任せたい場合は、実績のある専門業者や企業に依頼するのが安心です。
■お掃除のプロ、墓にも出張
近年は、ダスキンやおそうじ本舗などの大手清掃業者も墓掃除代行を行っています。
料金やサービス内容がホームページに明記されているため、初めての方でも安心して利用できます。
料金の目安は、1坪あたり1万5千~2万円程度。例えばダスキンの場合、1坪・墓石と墓誌が各1基・作業時間約1時間という条件で、基本料金が2万円(税抜)となっています(2025年8月時点)。ただし、墓石の数や敷地の広さ、汚れ具合によって金額が変動するため、最終的には個別に見積もりが提示され、正確な料金が確定します。
ただし、清掃業者にはお墓に詳しい専門の知識がありませんので、汚れが除去できなかったり、石材の種類によっては清掃によって石を傷めてしまったりすることもあります。心配な場合は、石のプロである石材店にお任せするのが安心です。
■ふるさと納税で墓がピカピカに
墓参り代行サービスは、今ではふるさと納税の返礼品のひとつとなっています。このような墓清掃付きの墓参り代行メニューがふるさと納税に登場したのは2015年からで、その翌年に急増し、今では全国の自治体が返礼サービスのメニューに加えています。
内容は、一般的な墓参り代行サービスと同様に、お墓の清掃後に花・ろうそく・線香を立てて墓参りを行います。また、墓参り代行前後の写真を郵送してくれるものもあります。石材店が代行をするものが多く、稀に生花店やシルバー人材センターのサービス代行も見られます。
ふるさと納税の墓参り代行は、その地域にお墓がある人のための返礼サービスです。
寄付額が高いものには、1年間で複数回の掃除・墓参り代行が含まれることが多く、遠方で墓参りに行けない人に利用されています。
落ちない汚れが気になる場合は、無理をせず、専門業者に依頼するのがおすすめです。
墓石の汚れを落とすクリーニングは、石材店や石に特化したクリーニング代行業者が請け負っています。費用相場は、サービスの内容や汚れの程度、墓石の大きさや敷地面積によって異なりますが、3万~5万円程度といわれています。ただし、業者によって価格設定が異なることもあるため、墓地・霊園から石材店を指定されていなければ相見積もりを取って比較・検討することをおすすめします。
また、墓石クリーニングのほかに、植木の剪定や玉砂利の交換など、さまざまなオプションサービスを用意している業者もあります。
■墓も「耐震」「免震」の時代に
墓の修理は「リフォーム」とも呼ばれます。墓石を長く維持していくためには、経年劣化や地震・台風などの自然災害に備えたリフォームが必要になることもあります。墓石のひび割れや傾き、外柵の崩れなどは放置せず、早めの対応が求められます。
そして、最終的には修理の方が建て替えよりも費用を抑えられるケースが多いのもポイントです。どうしても老朽化が進み、維持が難しい状態になった場合は、建て替えを検討するのもひとつの選択肢ですが、定期的な手入れや部分的なリフォームを重ねることで、お墓を長く保つことは十分可能です。
近年では、自然災害に備えて「耐震」と「免震」を組み合わせた施工が主流になりつつあります。
例えば、墓石の中心にステンレス芯を通して補強したり、L字金具で石材同士をしっかり固定するのが「耐震工法」。一方で、ゴムやゲル状の素材を石と石の間に挟み、揺れの力を吸収させるのが「免震工法」です。
ただし、地盤が弱ければ、いくら耐震構造でもお墓が倒れてしまう可能性があります。そのため、可能であれば地盤の状態を見直し、改良を行うのが理想です。
過去の大地震では、倒壊や破損、中には数十メートル飛んでしまう墓石もありました。古い墓石の場合は耐震・免震構造にリフォームすることをおすすめします。気になる方は、一度石材店に相談してみるとよいでしょう。
■知らぬ間に墓が沈むことも
地震や台風などでお墓が損傷した場合、石材店によっては5~20年の保証があることもありますが、自然災害は対象外となるケースがほとんどです。墓石の組み直しには平均相場で15万~30万円程度かかることもあり、被害を防ぐためには定期的な点検と備えが欠かせません。お墓のメンテナンスも、承継者が担う役割のひとつです。
お墓が傾いてしまう主な原因は、地盤の基礎工事がしっかり行われていなかったことにあります。お墓は大きさにもよりますが、重さが1トン近くになることもあり、時間の経過とともに少しずつ沈んでしまうケースがあるのです。

最近の施工では、機械で地盤をしっかり締め固め、鉄筋コンクリートなどで基礎をつくるのが一般的です。しかし、数十年前に建てられたお墓のなかには、そうした基礎工事が十分にされていないものもあり、長年の風雨や地震の影響で傾いてしまうことがあります。
お墓の傾きを直すには、墓石を解体し、地盤を掘り起こしてから再度しっかりと基礎工事を行う必要があります。ある程度の規模と費用をともなう工事となるため、専門の石材店に相談して計画的に進めることが大切です。
■損をしないために、「相見積もり」を
お墓の修理を検討する際は、まず石材店に相談するのが基本です。例えば、拭いても落ちない頑固な汚れ、墓石のひび割れ、お墓全体の傾き、石畳の間から雑草が生えたことで起きた破損などは、専門的な対応が必要になるケースです。
お墓の修理を依頼する際は、複数の石材店から相見積もりを取ることをおすすめします。というのも、修理費用には明確な相場がなく、価格や施工内容にばらつきがあるのが実情です。仕上がりの品質や提案内容も業者ごとに異なるため、内容と費用を比較・検討して選ぶことが大切です。ただし、寺院墓地や民間霊園のように、石材店があらかじめ指定されている場合は、相見積もりが難しいこともあります。
また、四十九日や一周忌など、法要の節目にあわせて墓石に戒名や俗名、命日、年齢などを彫刻するのも石材店の仕事です。相場は、一人分につき3万~5万円が平均です。
新しい文字を彫っていく際に、墓石を取り出す場合もありますが、最近では現地に機材を持ち込んで作業をすることも増えてきました。
そして、彫刻文字の色が薄くなった際の塗り直しも石材店に依頼できます。平均相場では1万~3万円程度といわれています。彫刻作業は墓地に機材を持ち込んで行われることが多く、完成後には依頼主が現地で仕上がりを確認する必要があります。

----------

吉川 美津子(きっかわ・みつこ)

葬儀・お墓コンサルタント

葬儀業界向けのコンサルティングを手がける葬儀ビジネス研究所代表。著書に『葬儀業界の動向とカラクリがよ~くわかる本』。

----------

(葬儀・お墓コンサルタント 吉川 美津子)
編集部おすすめ