※本稿は、堀江昭佳『生命力を高めなさい』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■漢方の古典に書かれた「上手な年の取り方」
自分が思い描くように年を重ね、理想的な人生を歩むにはどうしたらいいのでしょう。
その答えのヒントは、自然の営みの中にあります。
今から約2000年前に書かれた漢方の古典『黄帝内経』には、四季や人生の流れに則った自然な暮らし方が詳しく書かれています。
そこで特徴的なのは、体と心がひとつのものとして捉えられていること。「身と心は一つの如し」という身心一如(しんじんいちにょ)の考え方が通底して流れ、食事や睡眠、運動といった暮らし方と合わせて、心のあり方も養生の一部として一緒に書き記されているのです。
そこでは時間の流れが三層で捉えられます。
まず1日の流れがあり、春夏秋冬の四季がめぐる1年があり、その積み重ねの上に人生という大きな時間の流れがある。この流れにどうやったら上手に乗ることができるのか、そして、どうしたら上手に年を重ね、いつまでも若々しくいることができるか。そのことが、一番初めに書かれています。それは、古代の医学書であるだけでなく、体が健やかで、心が康らかな「健康」を実現し、幸せな人生を生きていくための哲学書ともいえるものです。
■女性は7の倍数の年齢ごとに体が変化する
その中でとりわけ有名なのが、人生において「女性は7の倍数、男性は8の倍数で体が変化する」とした考え方です。ここでは女性の変化を詳しくみていきましょう。
7歳 生命力が盛んになり歯が生え変わる
14歳 初潮が始まる
21歳 生命力が安定し成熟する。体の成長もピークに達する
28歳 生命力が最も盛んな時期
35歳 胃腸力が弱ることで生命力に陰りが出て、外見の変化がはじまる
42歳 上半身へ生命エネルギーを運ぶ力が衰え、顔や髪の衰えがあらわれる
49歳 天癸(てんき)(ホルモンの力)が衰え、閉経する
この7の倍数の年齢に従った体の変化は、生命力が盛んになり、やがてゆるやかに衰えていく自然な過程を示しています。
■若い時に無理をすると40、50代になってガタが来る
20代は生命力が最も勢いがある時代です。振り返ると、元気だったなぁと遠い目をしたくなりますね。体力があって、夜通し遊んでから仕事に行ったり、土日は休まず全部出かけたり、そんな無茶が平気でできた年齢です。
ただし、ここで無理をするとあとあと影響して、40代、50代になってガタッと堪えてきます。若い頃にガングロに日焼けをしていたら、年齢を重ねてからシミに悩みやすいのと同じです。若く元気な時は生命力がクッションのような役割をして守ってくれますが、見えないところでそのダメージが蓄積しているのです。
これは、年齢を重ねてからも変わりません。まだまだ大丈夫と40、50代で無理をすると今度は60、70代になってダメージが出てきます。
しかし、もう年だから手遅れ、なんて考える必要はありません。
残りの人生で一番若いのは、いつだって今。
今からでも生命力を整え高めることで、このあとの人生をより健康に豊かにすることは十分に可能です。
人生に遅すぎるということはないのです。
■高齢出産に差し掛かり、胃腸力が弱りだす35歳
上がり調子だった生命力もピークを迎え、いつしか少しずつ下り坂にさしかかってくる。それが、35歳です。
生命力に陰りが出てきて、平気でできていたはずの無理が、利かなくなるのがこの頃。女性としての生殖力も弱りはじめます。
医学的にも35歳以上の初産は高齢出産と定義されていますが、それは実際に妊娠・出産のリスクが上昇することが理由です。
漢方の古典には「35歳に胃腸力が弱ると女性の生命力が陰りだす」と書かれていますが、科学的にもこれは非常に重要なポイントになります。ここでいう胃腸力とは、単なる胃腸だけでなく膵臓などの消化器全体と、そこから分泌される消化酵素やインスリンなども含んだ広いものだと捉えてください。
その中で特に注目したいのが、「インスリン抵抗性」。
血糖値を下げるインスリンが効きにくくなった状態を指して、これが本当に、「最悪!」と言いたくなるほど生命力を下げる、老化と病気の諸悪の根源なのです。
■老化、生命力低下の元凶は「インスリン抵抗性」の悪化
主だった影響だけでも、
・肥満促進:体が脂肪の分解ができず脂肪溜め込みモードになる
・高血圧促進:交感神経が活性化して高血圧になる
・動脈硬化促進:血管の炎症が進み動脈硬化が進む
・がん:全身の炎症反応を起こし、がんのリスクを高める
・性機能障害促進:女性では多嚢胞性卵巣症候群、男性ではEDリスクを高める
・認知症促進:脳機能を低下させ認知症やアルツハイマー病のリスクを高める
これが、最悪と言わずしてなんと言ったらよいのでしょう。しかもこれらの症状が、さらにインスリン抵抗性を悪化させ、病状をひどくしていく恐怖のスパイラルを生み出します。とどめに、生命エネルギーを生み出すミトコンドリアの劣化までも促進。
当然、生命力は急速に衰えます。
そのため現在では、インスリン抵抗性は老化と生命力低下の根本メカニズムだと考えられるようになりました。
そもそもインスリンは消化器の膵臓が出す、血糖値を下げる唯一のホルモンです。血糖値を上げるホルモンは複数あるのですが、血糖値を下げてくれるのはインスリンしかありません。
その役割を一言でいうと、血液中の糖を細胞でエネルギーや貯蔵物に変えることです。
運動不足、食べ過ぎ、ストレスや肥満、加齢などの影響で、このインスリンは効き目が悪くなります。効き目が悪くなると血糖値が下がらなくなり、膵臓はがんばってインスリンをたくさん出すようになる。
最終的には膵臓が疲れ切ってインスリンを出せなくなり、糖尿病(II型糖尿病)に至ります。
■不妊、更年期、やせにくさの原因にもなる
これまでインスリン抵抗性は、単に糖尿病になる前の状態とだけ考えられてきました。しかし、現在では糖尿病に限らず、老化や生活習慣病などを含むさまざまな病気につながる、非常に深刻な状態であることがわかってきたのです。
また、インスリン抵抗性は不妊症や更年期の症状とも関連性が報告されています。
インスリン抵抗性がひどいと、卵子が育ちにくくなったり、排卵や着床を邪魔して、妊娠しにくくなります。また、ホットフラッシュの頻度、強度が高くなり、睡眠障害や、うつ、不安、疲労感なども重くなることがわかっています。
更年期になると、やせにくくなるのを実感される方も多いですが、ここにもインスリン抵抗性は関係します。インスリンが血液中にたくさんある状態だと、とにかくやせません。インスリンが脂肪の分解を邪魔して、どんどん脂肪の蓄積をサポートしてしまうからです。ダイエットの大敵でもあるのです。
現代医学的にも、このインスリン抵抗性が問題になってくるのは、35歳以降と言われます。
■午後3時以降は食事をとらない「夕食断食」
インスリン抵抗性を改善するために最も効果が高いのが食事方法の改善です。
胃腸力の弱り、特にインスリン抵抗性に焦点をあててみていきます。
まず、夕食断食をすると空腹時間が長くなります。
何も食べないと血糖値は上がりません。そのため、血液中のインスリンが減り、細胞のインスリンへの反応が良くなります。午後3時までに食事を摂り、以降は食べないスタイルの夕食断食をすると、体重の変化がなくてもインスリン抵抗性が改善することがわかっています。
また、夕食断食は内臓脂肪を減らし、脂肪肝が改善して肝機能が正常化することも報告されています。1日中食べるマウスと1日8時間だけ食べる断食をしたマウスを比べた実験では、同じカロリーを摂っても、1日8時間だけ食べる方が肥満、脂肪肝、臓器脂肪を予防する効果が高いことが明らかになりました。
脂肪肝がなくなると同時に、膵臓の脂肪も取れます。夕食断食もこれと同じです。
たとえ同じ食事、同じカロリーでも食べ方を変えるだけで、より健康に、より生命力を高めることができます。
■遅い食事は「体内ヘドロ」を作る
なぜ朝食断食ではなく、夕食断食がインスリン抵抗性を改善し、胃腸力を高めるのに効果的なのでしょうか。
それは体内時計のリズムに合った食べ方だからです。
人間の体の代謝は朝に最も高く、夜にかけて下がるようになっています。夜間は糖分の代謝が悪くなるため、夕食を控えることで高血糖やインスリン過剰を避けることができます。インスリンが低い状態で眠ることができるため、夜間の脂肪燃焼が促進されるのです。
特に、更年期が近づくと脂肪肝になる方が増えますが、同様に膵臓にも脂肪がつきます。
これは女性ホルモンの減少がインスリン抵抗性を悪化させるためです。
膵臓に脂肪がつくと脂肪膵と呼ばれる状態になるのですが、これが膵臓からのインスリンの分泌に悪影響を与えます。そして、老化を加速するインスリン抵抗性をここでもまた悪化させてしまうのです。
膵臓の異常はとても見つかりにくいので、健康診断ではほとんどわかりません。
急速な老化を防ぐためにも、早めに内臓脂肪を取り除く行動をとりましょう。
漢方では、過食や遅い時間に食べることは、胃腸力を弱め、体内ヘドロを作ると言われてきました。代謝が休む時間に食事をしないことが鍵になり、体内時計のリズムと一致させることを古来、大切にしてきたのです。研究結果との一致は、自然のリズムにのっとった暮らしをすることが重要だという、なによりの証明ともいえます。
夕食断食をすることで胃腸力を高め、老化へのブレーキを踏みましょう。
■胃腸力低下にブレーキをかける2種のスパイス
夕食断食がいいことはわかったけど、やっぱり食事を抜くことは難しいかも……。
そんなふうに感じてしまう方のために、胃腸力の低下にブレーキをかけてくれるスパイスがあります。スパイスと言っても生薬として漢方薬に配合されるほどなので、しっかりとした効果も期待できます。漢方・薬膳では単独の生薬・スパイスではなく、組み合わせて使います。ですので、サプリメント的に飲むよりは、料理や薬膳茶などで素材とミックスして使いましょう。
シナモン
南インド、スリランカが原産とされるスパイスで、紀元前2000年頃にはエジプトで使用されていた記録もあります。アップルパイ、ホットワイン、八ツ橋など様々な食物や飲み物によく使われているので、好きな方も多いのではないでしょうか。ぼくも大好きです。
漢方では肉桂、桂皮の名前で古くから使われた歴史があり、「長く服すれば身を軽くし、老いに至らず」「百病に効あり」などと書かれた記録を古代の薬草書にも見ることができます。胃腸を元気にするのはもちろんのこと、アンチエイジングをしたり、冷えや月経不順によかったり、下痢を治したりと大活躍。ほかの生薬と組み合わせることで温めて流す効果を高めるのが特徴で、有名なところだと葛根湯にも配合されています。
現代医学的にもシナモンはインスリンの効き目を高める効果があり、インスリン抵抗性を改善するという研究結果が出ています。
シナモンには大きく2種類あります。
香りがよくお菓子作りに向くセイロン種と、生薬などに使われ薬効の高いカシア種です。効き目を優先したい時はカシア種を使うとよいでしょう。一般の食品レベルでは通常問題ありませんが、大量にサプリメントなどで摂ると肝臓に強い負担をかけるので、摂りすぎには注意してください。1日あたり0.5~2g程度までがよいので料理やお菓子に使ったり、白湯に入れたり、薬膳茶にして飲んだりするのがおすすめです。
■インドでは数千年の歴史がある「スパイスの女王」
カルダモン
スパイスの女王の別名もあり、カレー、チャイには欠かすことができません。紀元前数千年頃からインドで使用されてきました。ギリシャ、ローマでも治療に使われ、ヒポクラテスが消化促進薬として推奨した記録が残っています。
漢方でカルダモンの仲間は砂仁、白豆蔲の名前で古くから使われ、胃腸を元気にし、ストレスを軽くする代表生薬のひとつでもあります。
現代医学的には、血糖値、コレステロール、炎症マーカー改善の報告があるほか、抗酸化作用でミトコンドリアを守ったり、胃腸全体の働きを高めることでインスリン抵抗性を改善する働きがわかっています。
これまで長く使われてきた歴史もあり安全性が高いスパイスです。1~3g程度までを料理に使ったり薬膳茶で飲むのがおすすめ。ただ、胆汁の出を良くして消化を助ける働きがあるので、胆石がある方は慎重に使ってください。
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堀江 昭佳(ほりえ・あきよし)
漢方薬剤師
島根県出雲市出身。出雲大社参道で100年続く老舗漢方薬局・堀江薬局の4代目漢方薬剤師、一般社団法人日本漢方薬膳協会代表理事。薬学部を卒業後、薬剤師となったのち方向転換し、本場中国の漢方医から学ぶ中、不妊に悩む友人の相談を受けたところ、漢方で妊娠したことに感動し、婦人科系の分野、なかでも不妊症を専門とするようになる。体の不調の解消だけではなく、本人の抱えている常識や執着といった束縛からの「心の解放」を終着点としている漢方薬剤師。著書にシリーズ60万部を突破した『血流がすべて解決する』(サンマーク出版)がある。
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(漢方薬剤師 堀江 昭佳)

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