※名字の「都」は正しくは旧字体。「土」、「ノ」の次にテン
※本稿は、宇都宮啓『要介護にならない! 自立と寝たきりの分岐点、「フレイル」を知る』(ワニブックス【PLUS】新書)の一部を再編集したものです。
■現役時代は「メタボ対策」が欠かせない
食生活において、健康寿命を延ばすために重要なこと。
それは、年齢に応じてギアチェンジをしていくことです。
60代前半までは、生活習慣病の予防と改善が重要となります。生活習慣病を防ぎ、改善していくことこそがフレイルを防ぐことにもつながっていくからです。
そのためには、まず、食べ過ぎ飲み過ぎに気をつけることが欠かせません。とくに、糖質や脂質の過剰摂取は、メタボリックシンドロームの原因になります。
メタボリックシンドロームとは、ご存じの通り、内臓脂肪型肥満に高血圧・高血糖・脂質異常症が重なって、心疾患や脳卒中の危険が高まる状態です。また、肥満の人は加齢とともに筋肉を減らし、体力を落としやすい傾向があります。
こうしたことから、フレイルの予防には、メタボの改善が不可欠となるのです。
だからこそ、60代前半までは、糖質や脂肪の過剰摂取を防ぐこと。加えて、減塩も、高血圧予防のためには必要です。
■食べたくても食べられなくなる年齢
しかし、65歳を過ぎたら、栄養に対するこの考え方を徐々に改める必要があります。
なぜなら、加齢とともに、私たちの心身の活力が落ちていくからです。とくに気をつけなければいけないのは、75歳以降。消化吸収能力や噛む力の低下によって食が細くなり、以前のようには食べられなくなります。また、ストレスやうつ状態などの精神的要因や、独居や孤立などの社会的要因なども絡んで欠食や食物の摂取不足を起こします。そのときに陥りやすいのが、「低栄養」です。
■たんぱく質不足はフレイルへ直結
低栄養とは、身体に必要不可欠なエネルギーやたんぱく質などの栄養が不足し、筋肉や体力が落ちてしまう状態。高齢者に多く、フレイルや要介護の重大な原因になります。
とくに注意すべきは、たんぱく質の不足です。筋肉や骨、血液など身体をつくる材料とるたんぱく質は、加齢とともにより重要性を増していきます。
また、ビタミンやミネラル、食物繊維もバランスよく摂ることが、消化吸収を助け、免疫力を維持するうえで欠かせません。
このように、65歳までは過栄養とメタボを予防していき、75歳を過ぎたら低栄養とフレイルを防ぐための食事が必要になっていきます。年齢を重ねても食への関心を持ち、必要な栄養を十分に摂っていく。そのことこそ、健康寿命を延ばし、フレイルを防ぐ最大のポイントとなるのです。
つまり、65歳から75歳までの期間は、栄養の考え方をギアチェンジしていく時期。自分が過栄養か低栄養のいずれかに偏っていないかを観察し、栄養バランスのよい食事を心がけることが重要です。
■特に高齢女性は「ビタミンD」摂取を
75歳を過ぎたら、たんぱく質の摂取と同じくらい重要になるのが、ビタミンDの摂取です。
なぜならビタミンDは、骨や筋肉を守るために欠かせない栄養素だからです。カルシウムの吸収を助ける働きがあり、不足すると骨がもろくなり、骨折しやすくなってしまいます。
高齢者の場合、足を骨折してしばらく動かさないでいると、さらに、筋力が弱まり、歩く力や立ち上がる力が落ちるなど、フレイルにつながるリスクも高くなります。
また、ビタミンDには免疫力を支える働きもあります。風邪や肺炎などの感染症から身体を守るためにも、重要な栄養素なのです。
■高齢者は食事で補うことを意識しよう
通常、ビタミンDは、紫外線を浴びると皮膚で合成されます。人体で合成される数少ないビタミンなのです。
ところが、高齢になると皮膚でビタミンDをつくる力が弱まっていきます。日光に当たっても十分な量を合成できなくなるのです。さらに外出の機会が減ることが重なれば、知らず知らずに体内量が不足していきます。
これを補うのが、毎日の食事です。
ビタミンDは、サケやサンマ、イワシなどの魚、卵黄、キノコ類に多く含まれています。こうした食品をバランスよくとり入れることが、健康寿命を延ばすことにつながっていきます。
■1日3回、「主菜」を欠かさない
くり返しになりますが、フレイルを防ぐために、もっとも大切な栄養素がたんぱく質です。
筋肉や骨、血液、皮膚、内臓にいたるまで、私たちの身体はたんぱく質によってつくられています。
加齢に伴い、食欲の低下や消化・吸収機能の衰えが進むと、必要な栄養素を十分に摂ることが難しくなります。とくにたんぱく質は、高齢期ほど必要量が増すにもかかわらず、摂取不足に陥りやすい栄養素です。
その結果、筋肉量の減少によるサルコペニアや身体機能の低下、さらには免疫力の低下を招きやすくなります。これらはすべてフレイルへと直結していく問題です。
つまり、フレイルを予防・改善していくためには、たんぱく質が欠かせないのです。
そこで、毎日の食事では「主菜を欠かさない」ことを大事にしましょう。
主菜とは、ご存じの通りメインのおかず。肉や魚、卵、大豆製品などのタンパク源をしっかり摂取すること。それが健康寿命を守る第一歩になります。
たとえば朝は卵料理、昼は魚、夜は肉を食べるなど、1日の中でバランスよく多様なたんぱく質食品を摂っていくことが理想的です。
さらに高齢期に入ると食が細くなりやすく、一度にたくさん食べることが難しくもなります。
■高齢者は「たんぱく質から」で良い
みそ汁に豆腐や油揚げ、あさり、しじみを加える、煮物に厚揚げや鶏肉を入れる、サラダにチーズやゆで卵を添えるなど、ふだんの料理に少しずつたんぱく質を加えていくと、摂取量を確実に増やせます。
もしも、「たくさんは食べられなくなってきた」という場合には、メインのおかずから食べるようにしましょう。かつて、「ベジタブルファースト」という食べ方が流行したことがありました。「野菜を先に食べることで、血糖値の急上昇を抑えたり、食後の満腹感を得やすくしたりする」という研究があり、食事法の一つとして注目されたのです。
しかし、「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、「食べる順序」に関する記述が削除されました。公式な基準の中で「ベジタブルファーストを推奨する文言」がなくなった、ということです。
とくに高齢の方の場合、野菜から先に食べてしまうと、おなかがいっぱいになって、肝心のたんぱく質を満足に摂取できない、ということも起こりがちです。
フレイルを防ぐためにも、まずはメインから食べていくなど、たんぱく質を確実に摂れるよう意識することが大切です。
なお、おやつにもたんぱく質食品を取り入れましょう。おやつにぴったりの「きなこ汁粉」を紹介します(図表2)。
こうして毎日しっかりとたんぱく質を意識して摂っていくと、筋肉や体力を保つことが可能になります。
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宇都宮 啓(うつのみや・おさむ)
医師
一般財団法人日本食生活協会代表理事、公益財団法人日本建築衛生管理教育センター理事長。1960年、北海道生まれ。1986年、慶應義塾大学医学部を卒業後、厚生省に入省。1991年、チュレーン大学公衆衛生・熱帯医学大学院へ留学し、翌1992年よりカリフォルニア大学サンフランシスコ校保健政策研究所客員研究員。その後、厚生省保健医療局地域保健・健康増進栄養課課長補佐(「健康日本21」策定に従事)、厚生労働省大臣官房厚生科学課主任科学技術調整官などを経て、岡山県保健福祉部長、厚生労働省老健局老人保健課長、保険局医療課長、成田空港検疫所長、大臣官房生活衛生・食品安全審議官などを歴任。2008年と2014年の診療報酬改定や2012年の介護報酬改定に携わり、2018年、厚生労働省健康局長に就任し、翌年退官。
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(医師 宇都宮 啓)

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