※本稿は、鈴木洋仁『社会人1年目の社会学』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
■敬語が使えない=仕事のデキない人材?
【若手社員】敬語なんて、いらなくね? だいたい、英語には敬語ないっしょ。グローバルには通用しない、ガラパゴス日本の代表なんじゃね?
【鈴木洋仁】たしかに、英語には敬語はありません。でも、丁寧な表現や、敬った言い方はあるから、ほとんど同じだよね。とすると、やっぱり、日本でも必要なのかな?
ビジネスマナーといえば敬語、そんな時代がありました。いまもそうかもしれません。
また、敬語についての本は、毎年、いや、毎月のように出ていますから、多くの人にとって、敬語は鬼門なのでしょう。
敬語「が」使えない、それどころか、敬語「も」使えない=使えない人材、と思われるのは、癪ですよね? ここで、あらためて敬語の役割について考えてみましょう。
仲間だと確かめ合うため(だけ)のかたちが、敬語にほかなりません。もちろん敵ではないけれども、家族や友人、恋人ほど近くはない。同じ組織に属している仕事仲間である、その確認をわざわざするよりも、敬語を使えば済みます。
敬語が求められるのは「上司が偉いから」でも「年長者を敬うため」でもありません。
■会話や交わり「そのもの」が目的
あなたが、上司や先輩をどう思っていようといまいと、敬語によって表面の敬意さえ見せておけば、何ら文句は言われません。逆に、あなたがどれだけ上長を尊敬していたとしても、タメ口で接していると、説得力はゼロです。
そこで役に立つのが、ドイツの社会学者ゲオルク・ジンメルが重視した「社交」という概念です。ジンメルは、「社交」は、何か特別な目的があるわけではなく、会話や、交わりそのものが目的なのだ、と説きました。
敬語こそ、この「社交」そのものと言えるでしょう。
ただ、注意しなければなりません。あくまでも、「社交」を、生活のリアリティと結んでいる糸=つながりを、完全に断ち切ってはいけないのではないでしょうか。
あなたも私も、上司もみんな人間だから、いくら割り切ろうとしても、生身の肉体と感情をもっている以上、さまざまな思いを押し殺せません。好き嫌いはもちろん、体調や機嫌の良し悪しは、コントロールできません。
裏を返せば、ひとりの人として、形式をきれいにしようとすればするほど、かえって、あなたらしさを隠せない。もし、あなたが敬語をうまく使いこなせるなら、実は、そこに秘められた魅力があるはずです。
■あえて、難しい言い回しを使ってみる
あなたは、あくまでも付き合いのルールとして、敬語を使うだけでいい。そこには、いかなる感情も必要ありません。心をこめるのでもなければ、反発するのでもない。粛々と、「そういうものだ」と流すだけです。
思えば、上司や先輩をはじめとする年長者との付き合いは、それ以上でもそれ以下でもありません。とはいえ、求めなくてもかまわない。
いっそ、敬語をきわめてみませんか? たとえば、「賜(たまわ)る」(「もらう」の謙譲語)なんて、使ってみたら、どうでしょう。あるいは、「ご如才(じょさい)なきことながら」は、いかがでしょうか。「すでにご存じだとは思いますが、念のため」を伝える外務省用語と教わりました。
謙譲語と丁寧語がわからない、なんていうところで止まるのではなく、反対に、めったに聞かない表現を使い倒せばいいのです。「拝承(はいしょう)」や「ご高承(こうしょう)の通り」など、珍しい言い回しはたくさんあります。
■社長を尊敬したほうがいいワケ
【若手社員】社長って、暇なだけじゃね? 昔は頑張っていたのかもしれないけど、いまはイスに座っているだけで、会社でいちばん給料が高いなんて納得できないっす。
【鈴木洋仁】社長は謎だよね。本当なら、いちばん働いたり、いちばん稼いだりしている人が高給取りのはずなのに、逆に、いちばんヒマそうに見えるかもしれない。どうしてなのか、考えてみよう。
社長は、過去の栄光だけでも、人柄だけでも成り立ちません。
その人にしかない何か、つまり、カリスマ性がなければなりません。そもそも、オーラというか、無条件に尊敬できる要素がなければ、社長になれません。会社や組織は、トップに立つ人を信じなければ、簡単に崩れてしまうでしょう。
カリスマ性は、身につけようとして身につけられるものでもない。では、いったい、どうすれば、あなたは、社長を尊敬できるのでしょうか?
■「支配」の視点から考える
働くとは、「支配」だ、と言ったら、驚くかもしれません。私たちは、自分の労働力(スキル)や時間と引き換えに、給料をもらいます。等価交換であり物々交換です。
では、社長が社長でいられるのもまた、この原理=能力(や時間)と賃金のやりとりで解釈できるかと言えば、そうではありません。強いて言えば、社長の能力のなかに、先に挙げたカリスマ性が含まれているものの、断言しにくい。
そこで、このカリスマ性を、「支配」の視点から考えるとわかりやすい。ドイツの社会学者マックス・ウェーバーは、生前最後に残した原稿=『支配について』で、長い歴史のスパンと、綿密なロジックで「支配」を考察しています。
ウェーバーは、まず「権力」を「自分の意志を他者の行動に押し付ける可能性のこと」と定義しています。無理やり何かをさせる、という意味です。その上で、「支配」とは、命令によって影響を及ぼす事態だと説きました。
社長のもつ「経営権」は、この「権力」です。雇っている人たちに、社長の思いを押し付け、そして、動かしている=「支配」なのです。ウェーバーは、この「支配」について、合法的、伝統的、カリスマ的、の3つに分けていますが、ここでは、それよりも、「支配」そのものにとどまりましょう。
社長は、いわゆるサラリーマン社長、すなわち、入社して出世した人であれ、世襲であれ、どんなかたちであれ、その立場によって「権力」をもち、「支配」できます。
■トップの「人格」を敬う必要はない
人格を敬え、と言うのではありません。社長の地位は、無条件に「権力」があり、あなたを「支配」できる以上、尊重しなければ、あなたは拠りどころを失います。あなたの働く目的が、お金であれ、自己実現であれ、そこには、社長(トップ)の「権力」が働き、「支配」されているのではないでしょうか。
その仕組みを受け入れられなければ、あなたが、その組織で働く理由はありません。どこでもよくなります。組織に所属しないなら、それでかまいませんし、事実、フリーランスであれば、その業務に応じた分だけの関係です。
もし、あなたがその集団で働き続けるのなら、社長を無条件に尊敬できないと、しんどい。なぜ、あんな(無能な)奴が社長なんだ、と疑ったり、恨んだりすると、モチベーションは保てません。
裏を返せば、社長の立場(だけ)を見れば済みます。性格に難があろうと、容姿が好みでなくても、その時点では、その人が社長なのだ、と(渋々)認めておけば、それで十分なのです。
実際には、平の、特に社会人1年目のあなたが、社長と接する機会は、ほとんどないかもしれません。入社式での挨拶や、せいぜい「社長とランチ」のような、ぎこちないセレモニーぐらいでしょう。
ベンチャー企業であれば、まだ少し距離が近い時もあるものの、あなたにとって社長とは、その程度に過ぎません。偉い人も大変なんだな、と、心のなかでエールを送ってあげておけば十分です。
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鈴木 洋仁(すずき・ひろひと)
神戸学院大学現代社会学部 准教授
1980年東京都生まれ。東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(社会情報学)。京都大学総合人間学部卒業後、関西テレビ放送、ドワンゴ、国際交流基金、東京大学等を経て現職。専門は、歴史社会学。著書に『「元号」と戦後日本』(青土社)、『「平成」論』(青弓社)、『「三代目」スタディーズ 世代と系図から読む近代日本』(青弓社)など。共著(分担執筆)として、『運動としての大衆文化:協働・ファン・文化工作』(大塚英志編、水声社)、『「明治日本と革命中国」の思想史 近代東アジアにおける「知」とナショナリズムの相互還流』(楊際開、伊東貴之編著、ミネルヴァ書房)などがある。
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(神戸学院大学現代社会学部 准教授 鈴木 洋仁)

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