2025年11月に、プレジデントオンラインで反響の大きかった人気記事ベスト3をお送りします。ライフ部門の第2位は――。

▼第1位 これがないと孤独な老後が待ち受ける…60代からの人生の幸福度を高めるために持つべき"たった1つのもの"

▼第2位 だからスウェット、Tシャツで寝ると熟睡が遠のく…睡眠コンサルが「就寝時にはコレ」という"快眠の装い"

▼第3位 70歳になって初めて気づくことがある…定年退職者500人超の取材で判明「お金でも健康でもない」人生最大の転換点

落ち着いた気持ちで眠るには何をするといいか。睡眠コンサルタントの友野なおさんは「ぐっすり眠るために大切な『寝返り力』を高めるためには、スムーズに寝返りをうてる環境を整えることが必要だ。『敷き寝具・掛布団』『枕』『パジャマ』の選び方を見直すといい。寝具選びのポイントを紹介する」という――。
※本稿は、友野なお『新版 わたしを救う睡眠パーフェクトブック』(大和書房)の一部を再編集したものです。
■よく眠れる人は「寝返り力」が高い
ぐっすり眠れている人は、「寝返り力」の高い人です。
寝返り力とは、眠っているあいだにしっかり寝返りをうてるかどうか、その力のことをいいます。
個人差はあるものの、寝入りばなの姿勢に関係なく、私たちはひと晩に20~30回は寝返りをうっているといわれています。
寝返りをうつことは「眠りが浅い」「無意識に体力を使っている」というマイナスイメージを持つかもしれませんが、じつはその逆。しっかり寝返りをうてることは、就寝中のからだを健康に保ち、質のいい眠りにつながることなのです。
もしも眠っている数時間、同じ体勢で寝返りをうたずにいると、私たちのからだはさまざまなダメージを受けることになります。
たとえば、血液や体液も、寝返りをうつことによって滞ることなく循環がうながされます。

さらに、同じ姿勢で寝続けているとからだの重みがかかっている部分の筋肉が痛くなったり、骨格がゆがんだりするもの。ですが、これも定期的に寝返りをうち、適度に姿勢を変えることで防ぐことができます。ほかにも、無意識に寝返りをうちながら温度調節を行い、眠っている間の寝床内の環境をちょうどよく整えています。
■寝返り力を高めるための工夫
寝返りは、レム睡眠とノンレム睡眠が切り替わるスイッチの役割も果たしています。
ただし、暑さで寝苦しい夜など、寝入ってすぐの浅い睡眠から深睡眠へと移行するときに大きな寝返りをすると、逆に熟睡を遠ざけてしまうのです。そのため、夏場の敷き寝具は、背面が蒸れない素材のものを活用するなどの工夫も必要です。
とはいえ、自分が睡眠中にしっかり寝返りをうてているかを知ることはなかなかむずかしいこと。そこで、もしも「なぜかいつも眠りが浅いのに、原因がわからない」「起床時にからだが痛い」などの症状がある場合は、消去法で、うまく寝返りをうてていないことを疑ってみましょう。
睡眠上手になるための基本は、「上手な寝返り」にありです。
寝返り力を高めるための工夫は、これからご紹介します。
■寝返りをジャマしない「敷き寝具・掛布団」「枕」「パジャマ」
ぐっすり眠るために大切なのは「寝返り力」というお話をしましたが、それでは「寝返り力」を高めるためにはどうしたらいいでしょうか。
それは、スムーズに寝返りをうてる環境を整えること。

ずばり、「敷き寝具・掛布団」「枕」「パジャマ」の選び方を見直すことです。実際にこれらを変えただけで、それまで夜中に何度も起きてしまっていた人が、朝まで気持ちよく眠れるようになったケースもあります。
そこで、「寝返り力」を高めるような、敷き寝具や掛布団、枕、パジャマの選び方のポイントをご紹介します。ご自身で愛用しているものと比べてみて、疑問を感じるようなら見直すタイミングかもしれません。
■冬の必要以上の掛布団は寝苦しさの原因につながる
・敷き寝具・掛布団
敷き布団やマットレスなどがからだに合っていないと、寝返りがうちにくくなります。
たとえば、やわらかすぎると背中やお尻が沈んでしまい、首や腰に負担がかかります。ふかふかの布団にからだが埋まってしまうため、寝返りをうとうと思ってもうてないこともあるでしょう。
反対に、かたすぎても眠っている間にからだが痛くなり、不快感からいい眠りは得られません。
敷き布団やマットレスは、適度な弾力とかたさがあるもの、寝返りをうてるだけの十分な広さがあるもの、からだの圧を分散してくれるものが理想的。
掛布団は、軽くて圧迫感がなく、保温機能と湿度調整機能があることが絶対条件です。中身の素材は、ダウン50%以上がおすすめ。
気をつけたいのは、冬場の掛布団についてです。
寒いからといって必要以上に重ねると、布団の重さで寝返りがうちにくくなってしまいます。すると、本来、背中から放出するはずの熱がこもってしまい、寝苦しくなってしまうことになります。
また、掛布団がからだのラインにフィットしていないと、肩口や足元に余分な隙間ができ、今度は寝返りのたびに冷気を呼び込んで不快感を招くことになるので、ドレープ性も大切です。
■枕と寝具は同じメーカーのセットがおすすめ
・枕
案外、自分のからだに合った枕を使っていない人は多いもの。枕が合っていないと、寝返りが妨げられるだけでなく、頭痛や肩こり、いびき、むくみなどの原因にもなります。
枕を選ぶポイントは、頚椎(けいつい)の自然なS字カーブを保てる高さと形であること、大きさ、かたさ、重さが適切であるということです。
それからもうひとつ、枕と寝具は同じメーカーのセットで揃えることもおすすめ。枕と寝具の相性や寝返りのしやすさを店頭で確認できるという利点もあります。可能であれば、専門のピローフィッターがいるショップで相談しながら選ぶとアドバイスがもらえるので安心ですね。
■パジャマは素材と一緒にデザイン選びも重要
・パジャマ
寝ている間に何を着るかによっても、睡眠の質は大きく変わります。
たとえば、スウェットやTシャツ、ルームウェアといったパジャマ以外のものを着て寝ると、寝具との間に不必要な摩擦が生じて、寝返りがうちにくくなってしまいます。
パジャマの素材として理想的なのは、吸水性や吸湿性が高く、肌ざわりのいい100%シルクかコットン。
シルクは天然繊維のなかでも、人間の肌成分にもっとも近い素材といわれ、肌に優しく、着るエステといえます。コットンは着心地が良く、安心感のある素材。耐久性もあるので、洗濯などの取扱いがラクなところも魅力です。
デザインで気をつけたいのは、半そで&短パンや襟ぐりが大きく開いたもの、フードつきのものは避けたほうがベター、という点です。露出度の低いパジャマを着ることで、首と手首、足首をいつでも冷やさないようにしておきたいのと、フードが首を圧迫して不自然な寝姿勢になるのを防ぐためです。
「寝るだけなのだから、着るものなんてなんでもいい」と考えているなら、それはとてももったいないこと。「何を着て眠るのか」は、明日のあなたのからだや心の状態を左右します。
「ただ横になっている無の7時間」よりも、「今日のダメージをなかったことにして、明日の元気ときれいをチャージする7時間」にしたほうが、時間の有効活用だと思いませんか?
パジャマはあなたを美しく健康にするとっておきのアイテム。大切な自分への投資だと思って、お気に入りの1枚を選んでみましょう。
■熟睡できる寝室づくりの「温度」と「湿度」
朝までぐっすり眠れる人と、浅い眠りになってしまう人――同じ時間ベッドにいても、睡眠の質に差がついてしまうのはなぜでしょう?
その理由のひとつは、「寝室」の環境にあります。毎晩、熟睡できている人は、寝室を「心からリラックスして眠る場所」にするために、居心地のいい空間づくりにこだわっています。ひとり暮らしの人も、家族と暮らしている人も簡単に実践できる、寝室づくりのポイントをご紹介します。

・温度
熟睡しやすい寝室の温度は、1年を通して16~27℃といわれています。また、寝室の温度とは別に、からだと寝具の間にできる空間の環境を「寝床内気候」といいます。この寝床内気候にもよく眠るための適切な温度があり、1年を通じて33℃前後です。
夏や冬はエアコンを上手に活用し、暑すぎず寒すぎない寝室温度管理を心がけること。
冷たい空気は下に、あたたかい空気は上にたまりやすいので、空気の循環をうながすためにサーキュレーターを使うのもいいでしょう。
・湿度
温度と同様、湿度にも快適に眠るための目安となるものがあり、寝室は55%前後、寝床内気候は50%前後といわれています。
湿度管理はむずかしいので、ベッドの高さに温湿度計を置いておくと確認しやすく、おすすめです。冬場など空気が乾燥しているときは加湿器、夏場で湿気が多いときは除湿器をそれぞれ活用して寝室の湿度を調整しましょう。
■眠りを誘うカーテンの色はこれ
・カーテン
スムーズな眠りを誘うカーテンの色もあります。
交感神経を刺激して、眠りを妨げる働きがあるとされるのが、赤や黒などコントラストの強い色。これらは色彩心理学的に寝室にはふさわしくない色だと思ってください。
そのかわり、淡いパステルカラーやブルー系、ベージュといった色のカーテンにすると、落ち着いた気持ちで眠れるようになります。

(初公開日:2025年11月25日)

----------

友野 なお(ともの・なお)

睡眠コンサルタント

行動療法からの睡眠改善、快眠を促す寝室空間づくりを得意とし、全国での講演活動、企業の商品開発やコンサルテーション、執筆活動などを行う。現在、先進予防医学の博士(医学)課程に在学中。

----------

(睡眠コンサルタント 友野 なお)
編集部おすすめ