■全国高校駅伝3連覇なるか、「日本一厳しい」佐久長聖
全国高校駅伝で4度の優勝を誇る佐久長聖高(長野)。両角速監督(現・東海大駅伝監督)から指揮官の“タスキ”をつないだのが、高見澤勝監督だ。
高見澤監督は、佐久長聖高が初めて全国高校駅伝に出場したときのメンバーで、山梨学大でも中心選手としても活躍。実業団生活を経て、2008年にコーチとして母校に戻ってきた。そして2011年に恩師から監督の座を引き継いだ。
全国高校駅伝は2017年にチームとして2度目(監督としては初)の栄冠に輝くと、2023年と2024年に連覇を達成。毎回恒例の舞台となる京都・都大路で一昨年にマークした「2時間1分00秒」は日本高校最高記録となる。
佐久長聖高駅伝部が素晴らしいのは高校卒業後も大活躍している選手が多いことだ。箱根駅伝は2000年からの出場ながらOBが59人出場(※2000年以降に限定すればダントツトップ)。そのなかには男子マラソンの日本記録を3度塗り替えた大迫傑、男子1万mの日本記録保持者・鈴木芽吹らがいる。
■なぜ圧倒的に強いのか、その秘密
佐久長聖はなぜ強いのか?
高見澤監督は「日本一厳しいのが強さの秘密です」という。
佐久長聖高の選手たちは寮生活を送りながら、トレーニングに励んでいる。朝は5時10分に起床。朝練習で10km弱を走り、学校の授業を受けて、本練習という流れだ。消灯は21時10分(※ストレッチや補強など、ひとりで静かに過ごすのはOK。食堂では22時50分まで勉強できる)。高校生が手放すことができないスマホを使用できるのは本練習が終わって消灯までの2時間ほどしかない。
現代の高校生としてはかなり「ストイックな生活」を過ごしているが、そこにこそ佐久長聖の「強さ」があるという。
「入学前の選手には、『佐久長聖高校駅伝部は日本一厳しいよ』という話をしています。走るための能力は日々のトレーニングで鍛えることができます。しかし、メンタル面は日々の練習だけでは強化できません。『我慢する力』や『あきらめない心』は日々の生活や取り組みのなかで育てていくものだと思っています。
選手たちに自由時間はほとんどない。しかし、高見澤監督はあえてタイトなスケジュールを組んでいるという。
「暇を与えないのではなく、これが『鍛える場』なんです。時間がないのであれば、常に先を考えて、前倒しで準備していく。効率よく過ごす方法を子供たち自身で見いだしてほしいと思っています。窮屈な生活ですが、慣れてしまえば、『時間がない』ではなく、『時間は自分で作るもの』に変わっていくんです。事前準備はどんなことをすればいいのか。先輩から学ぶこともありますが、自分たちでも考えないといけません。日々のタイトな生活のなかで、我々は鍛えていると自信を持って言えます」
■「伸びる選手」と「伸び悩む選手」の特徴
17年の指導歴で高見澤監督は、「伸びる選手」と「伸び悩む選手」がわかってきたという。その目安のひとつが“整理整頓”ができているかどうかだ。
「これまでの選手を見ていても、部屋が汚い選手は伸びません。
そのため佐久長聖高の選手たちは通学前に15分、就寝前にも20分の「掃除」の時間が設けられている。駅伝部寮の共用部分を部員全員で清掃するのだ。
「朝・夜2回掃除をしてきれいな状態を保つのは、きちんと継続すること。レースでいえばペースを維持するのと同じだと思っています。また一心不乱に掃除をすると『無』になれるんです。
■「1番」にこだわった大迫傑
佐久長聖メソッドで多くの選手が活躍しているが、なかでも強烈な個性を放っていたのがオリンピックに3度出場して、12月7日のバレンシアマラソンで日本新記録となる2時間4分55秒を打ち立てた大迫傑だ。
「大迫はとにかく『1番』にこだわる選手でした。その気持ちが普段から“ダダ漏れ”していましたね。とにかく1番じゃなきゃダメ。練習では1学年上の村澤明伸、千葉健太らに常に挑んでいました。練習では村澤に負け続けましたが、常に『勝ちたい』『1番になるんだ』という熱い気持ちが伝わってくるんです」
ポイント練習だけでなく、朝練習でも大迫の挑戦はとまらなかったという。そして寮の下駄箱も「1番」を使用するほどのこだわりを持っていた。
「練習に行くのも1番だし、帰ってくるのも1番。食事を食べ終わるのも1番で、風呂に入るのも1番なんです。高校卒業後に使っていたメールアドレスにも『1番』が入っていました。
■全国高校駅伝で3連覇に挑む
全国高校駅伝を連覇中の佐久長聖高だが、前回Vメンバー6人が卒業。戦力の大幅ダウンがささやかれていた。夏のインターハイは入賞者を出すことはできなかったが、今年も強力なチームに仕上がりつつあるようだ。
「春先から夏にかけては大丈夫か? という雰囲気でしたが、ここに来て、だいぶ上がってきました。他チームも非常に強いですけど、『3連覇』を目標にできるのは我々だけです。そういったことを口に出しながらやらせていただいてきました」
当初、選手たちは13年連続となる「5位以内」という目標を掲げていたという。
しかし、過去2年は「日本一」を目指してきただけに、「取り組みや意識レベルが下がった」と、高見澤監督は目標を「3連覇」に上方修正。チームに危機感が生まれたことで、選手の意識が変わったという。
今年の全国高校駅伝(12月21日)は、仙台育英高(宮城)、学法石川高(福島)、鳥取城北高、西脇工高(兵庫)などが上位候補に挙がるなか、ディフェンディング王者はどんなレースを見せるのか。
「今年は絶対的なエースが不在です。1区は30~60秒くらい(差が)ついちゃうかなと考えていますが、追いかける展開を想定してきました。慌てず、じっくりと追い上げていきたいなと思っています。我々の強みは選手層です。後半区間は自信を持っていますので、区間賞を独占するぐらいの気持ちでやっていきたい。序盤で大差をつけられても、『絶対に追いつくぞ』『逆転するぞ』という気持ちを持って大会に臨みたいと思っています」
また来年正月に開催される第102回箱根駅伝は、吉岡大翔(順天堂大3)、小池莉希(創価大3)、永原颯磨(順天堂大2)、山口竣平(早稲田大2)、佐々木哲(早稲田大1)、濵口大和(中央大1)らが選手登録された。出身高校別では佐久長聖高が13人で最多となる。
年末年始の駅伝では佐久長聖高駅伝部の「日本一の厳しさ」を耐え抜いてきた選手たちが魂の継走を披露する。
----------
酒井 政人(さかい・まさと)
スポーツライター
1977年、愛知県生まれ。箱根駅伝に出場した経験を生かして、陸上競技・ランニングを中心に取材。現在は、『月刊陸上競技』をはじめ様々なメディアに執筆中。著書に『新・箱根駅伝 5区短縮で変わる勢力図』『東京五輪マラソンで日本がメダルを取るために必要なこと』など。最新刊に『箱根駅伝ノート』(ベストセラーズ)
----------
(スポーツライター 酒井 政人)

![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 昼夜兼用立体 ハーブ&ユーカリの香り 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Q-T7qhTGL._SL500_.jpg)
![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 就寝立体タイプ 無香料 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51pV-1+GeGL._SL500_.jpg)







![NHKラジオ ラジオビジネス英語 2024年 9月号 [雑誌] (NHKテキスト)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Ku32P5LhL._SL500_.jpg)
