■深刻な相談が増える年末年始
不登校ひきこもり専門カウンセラーのそたろうです。
年末年始が近づいてきました。世間では「家族団欒」「帰省ラッシュ」などの言葉が飛び交いますが、不登校やひきこもりのお子さんがいるご家庭では、複雑な心境を抱えている方も多いのではないでしょうか。
「実家に帰る時、子供を連れて行った方がいいのか」「行きたがらない子供を置いていっていいのか」「孫に会いたがっている祖父母に、なんて伝えたらいいのか」「親戚が集まったとき、不登校のことを聞かれたらどうしよう」
あるいは、「家に親戚が来ることになったけれど、子供は部屋から出てこられるだろうか」「挨拶もせず閉じこもっていたら、親戚にどう思われるだろう」
そんな不安から、せっかくの休みも気が休まらず、親子関係がギクシャクしてしまう……。
実は、年末というのは、カウンセラーである僕のもとに「取り返しのつかないことになってしまった」という深刻な相談が急増する時期でもあります。
ここで対応を誤ると、どのようなことが起きるのか。
僕が過去に相談を受けたあるご家庭では、親御さんが「親戚の手前、顔だけは見せなさい」とお子さんを無理やり居間に連れ出してしまいました。その結果、お子さんは「家の中にも安全な場所がない」と絶望し、それまで少しずつ回復していたのに、再び完全に部屋に引きこもり、数カ月間、親と一切口をきかなくなってしまった――そんな「悲劇」が、毎年のように繰り返されています。
逆に言えば、この年末年始は、親子の信頼関係を劇的に深めるチャンスでもあります。周りの目や世間体よりも、「子どもの心」を守り抜くことができれば、「親は自分の味方なんだ」という強烈な安心感をお子さんに与えられます。
これは、単なる「年末年始あるある」の悩みではありません。お子さんの未来を左右する、重要な分岐点なのです。今回は、こうした具体的なケースに対して、どのような心持ちで、どう対応していけば、悲劇を回避し、親も子も穏やかに過ごせるのか、一緒に考えていきましょう。
■ケース① 実家・義実家への帰省
お正月、実家に親族が集まり、お年玉をもらったり食事をしたりするのは毎年の恒例行事。親御さんは帰省するつもりだけれど、お子さんは「行きたくない」と言っている。まだ親戚に不登校のことを伝えていない場合、さらに悩みは深くなります。
「お年玉もらえるから行こうよ」「おじいちゃんもおばあちゃんも楽しみにしているよ」
そんなふうにメリットを伝えて誘っても、お子さんの気持ちが動かないことはよくあります。悩んでいる時点で、お子さんはお年玉のことなんて分かっていますから、それでも行きたくないほどエネルギーが低下している、あるいは人に会うのが怖い状態なのかもしれません。
もし、お子さんが中学生以上などで、ある程度お留守番ができるなら、「子どもは家に置いていく」というのも、非常に良い選択肢です。無理に連れて行って、親戚から質問攻めにあったり、プレッシャーを感じてさらに塞ぎ込んでしまうリスクを考えれば、家でゆっくり休ませてあげる方が、お子さんにとってもプラスになることが多いからです。
親戚への伝え方
とはいえ、「孫が来ないなんて」と親族がガッカリしたり、納得しなかったりする不安もありますよね。
「実は今、学校に行けていなくて、あまり人に会いたがらないんだ」「本人は行かないって言っているから、今回は私(たち夫婦)だけ行くね」
当日になって「来ないの?」とガッカリされるより、事前に伝えておいた方が、親族側も心の準備ができます。「無理に連れてきて暗い雰囲気になるより、大人は大人で楽しく過ごそう」と割り切ることで、親御さん自身の精神的負担も軽くなります。
■ケース② 家に親戚がやってくる場合
逆に、自宅に親戚が来るケースもあります。
「せっかく来てくれたんだから、顔くらい見せなさいよ」と言いたくなる気持ち、とてもよく分かります。
しかし、ここでも「無理強いしない」ことが鉄則です。お子さんにとって、自分の部屋は唯一の「安全基地」かもしれません。そこから無理やり引きずり出されて親戚の前に出されたら、「家の中にはどこにも安全な場所がない」と絶望し、さらに心を閉ざしてしまう恐れがあります。
親戚への伝え方
親戚には事前にこう伝えておきましょう。「今こういう状況だから、もしかしたら顔を合わせるのは難しいかもしれない」「部屋から出てこないかもしれないけど、そういう時期だからそっとしておいてね」
ハードルを下げておけば、もしお子さんがふらっと降りてきて顔を出した時に、「あら、元気そうじゃない」と自然に接することができるかもしれません。会えなかったとしても、それはお子さんが自分の心を守るために必要な選択だったのです。その選択を尊重してあげることが、親子の信頼関係を守り、将来的な回復につながっていきます。
■「親自身」も“いい子”を演じていないか
ここまで、お子さんの対応についてお話ししてきましたが、実はもっと根本的な問題があります。それは、「親御さん自身が、ご自身の親(祖父母)に対して“いい子”を演じ続けていないか?」ということです。
不登校に悩む親御さんの多くは、非常に真面目で責任感が強く、ご自身も子どもの頃から「親の期待に応えるいい子」として生きてこられた方がたくさんいらっしゃいます(参考記事)。もしかすると、あなたとお母さん(お子さんから見た祖母)との関係において、ずっと「お母さんを悲しませないように」「お母さんに認められるように」と、自分の本音を押し殺して生きてきませんでしたか?
年末年始の実家への帰省は、そんな「親子の呪縛」が最も強く発動する場面です。「孫の顔を見せないと母が悲しむ」「ちゃんとした家庭を見せないと心配される」。そうやって、大人のあなたがお母さん(祖母)の顔色を伺い、無理をして「いい娘」を演じようとすればするほど、その重圧はドミノ倒しのように、あなたのお子さんへとのしかかります。
「お母さん(私)がおばあちゃんのために我慢しているんだから、あなたもちょっとくらい我慢してよ!」言葉にしなくても、そんな無意識の「犠牲の強要」が、お子さんの「行きたくない」という悲鳴を封じ込めてしまうのです。
この「我慢の連鎖」を断ち切れるのは、あなたしかいません。あなたが「親のために」ではなく「自分のために」行動を選べた時、初めてお子さんも「誰かのため」ではなく「自分の人生」を歩めるようになるのです。
■「行かない」「短縮する」という選択肢
親御さんが「本当はどうしたいか」を一番に考えてみてください。「今年は疲れているから、家でゆっくりしたい」と思うなら、「今年は帰らない」という選択も立派な決断です。
あるいは、「3泊はしんどいけど、1泊なら行けるかな」「顔を見せるだけの半日滞在にしよう」と、滞在時間を短くするのも良いでしょう。
親御さんが「自分は無理しなくていいんだ」と自分を許し、自分の心を守ることができれば、お子さんに対しても「あなたも無理しなくていいよ」と心から思えるようになります。この「親の余裕」こそが、家庭の安心安全を作り、お子さんの回復を支える土台になるのです。
■本当はどうしたいか考えてみよう
最後に、今年の年末年始を後悔なく過ごすために、自分の本音を知るワークをご紹介します。ぜひ、下記(画像1)のワークシートを印刷して、書き出してみてください。
自分や子どもにとって無理度が高すぎるなら、「1泊に減らす」「夫だけに行ってもらう」など、数値を下げる調整ができないか考えてみてください。
「親族を喜ばせること」よりも、「自分たち家族の心を守ること」を優先してもいいのです。親御さんが穏やかな気持ちで新年を迎えられること。それが結果として、お子さんの心を安定させ、本質的な解決へと導く一番の近道になります。
どうぞ、ご自身を大切に、良いお年をお迎えください。
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そたろう(そたろう)
不登校ひきこもり専門カウンセラー
20代の頃、理学療法士として働く傍ら、夫婦関係や仕事に行き詰まったことをきっかけに自分が心の問題を抱えていることに気づき、心理学を学び始める。その過程で自己受容の大切さを知る。
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(不登校ひきこもり専門カウンセラー そたろう)

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