日本人の主食である白米は糖質が多く、食後血糖値を上げるというのはもはや常識だ。糖尿病などの治療・研究をしている消化器外科医の石黒成治さんは「米の調理法であるていど急激な血糖値上昇は抑えられる。
ウコンやサフランを使ったメニューもおすすめだ」という――。
※本稿は、石黒成治『糖質リスク 自覚なき「食後高血糖」が万病を招く』(SB新書)の一部を再編集したものです。
■主食のお米をヘルシーに食べたい
日本人にとって、お米は切っても切れない食材になります。しかし米は、高GI食品に分類され、事実CGMで血糖測定すると、食べた後の血糖値の上がり方は想像以上に高いことがわかります。お米をどのように食べるのか? についてはよくよく考える必要があります。
食品中の炭水化物量が同程度でも調理の違いによって血糖上昇は異なります。すなわち白米のご飯とお粥では、同じ量の炭水化物を摂取しても血糖値の上昇のし方が大きく異なることが報告されています。
お米はブドウ糖75gエネルギー量に相当する量で、お粥(水分82%)とご飯(水分62%)で、血糖反応とインスリン反応を測定しました(糖尿病37、1994)。お粥の量は409g、ご飯196gを早朝空腹時に食べてもらいます。水分を多く含み軟らかく調理したお粥の方が、粒のまま炊いたご飯よりも消化吸収が速く、食後血糖値の急上昇を招きやすい傾向を示しました。この差はデンプンの消化速度(調理によるデンプンの糊化度合い)に起因すると考えられます。
同様にお粥の方が、インスリン反応が高く、GI値(グリセミック指数)を測定すると、白米ご飯を100とした場合のお粥のGI値は146と高い値を示しています。
なるほど、そうなると水分は少ない方がよりよいということであれば、米を硬めに炊くといいのかな? と思うかもしれません。この研究で示されている結果は逆で、硬飯(水分54%)の方が通常炊飯で炊いた米と比較してGI値が122と高い結果を示しました。
■炊飯の柔らかさについての誤解
この理由は咀嚼(そしゃく)の回数にあります。デンプンの消化酵素であるα-アミラーゼによる分解能は実際通常の米飯よりも硬飯の方が分解されにくく、理論上は血糖上昇効果が低くなります。ご飯の咀嚼を一口あたり15回 vs 30回でコントロールした試験では、30回よく噛んだ場合の方が、食後血糖応答が有意に高く、ピーク血糖値が増大し、結果としてGI値も68から88へと上昇しました(Eur J Clin Nutr. 2014 24219890)。この研究での咀嚼回数をみてみると、無意識に硬飯の方が、回数が多くなっていました(一口10gあたり、お粥で10回、飯で20回、硬飯で35回)。
咀嚼回数が多くなると口の中でα-アミラーゼに接触する時間が長くなり、この研究では糖の生成量は通常のご飯よりも硬飯の方が多くなるという結果になったと推察されます。よって血糖コントロールのため、ご飯を硬くすることにはあまり意味がありません。
■高血糖を防ぐには「噛まずに飲み込め」
ちなみにトウモロコシ、ジャガイモ、リンゴなどもよく咀嚼することで食後血糖は上がることが、「食後高血糖を減らす簡単な方法は噛まずに飲み込むことである」という論文に記載されています(Br J Nutr. 1986 3311145)。もちろん、血糖が上がりやすいかもしれませんが、よく噛むことの利点は数限りなくあります。
白米ではなく玄米なら血糖値をコントロールする効果が高いのではないか? と考えるかもしれません。実際玄米には食物繊維と脂質が含まれており、デンプンだけの白米と比べると血糖をコントロールする効果が理論上は高いことになります。
2012年に報告されている研究結果では白米のGI値が67.4に対して玄米は61.5です(Evid Based Complement Alternat Med. 2012 23304216)。さらに発芽させた発芽玄米では56.9であることが示されています。しかし話はそれほど単純ではありません。
■玄米も血糖上昇は白米と変わらず
玄米であっても、すりつぶしてしまえば血糖上昇効果は白米と変わりません(Am JClin Nutr. 1980 6987860)。通常の水分量ではなくて多めの水分量で炊くとかえって血糖値が高くなります。2倍の水分で玄米を炊飯するとその血糖上昇効果は白米と変わらないことが研究で示されています(食糧:その科学と技術55、2017)。先述したように硬めのご飯はよく咀嚼する傾向になります。同じく玄米も口当たりが白米より悪いために咀嚼する回数が多くなります。さらに玄米は十分に水分を含ませて炊飯すれば白米と同程度に軟らかくなりますが、付着性(ねばり)が白米より低いため、噛むと粒がバラバラに崩れやすく、α-アミラーゼなどの酵素が各粒子に浸透しやすくなります。
繰り返しになりますが、よく噛むことが血糖コントロールに必ずしも悪いわけではありません。噛むという行動そのものは、GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)の分泌を促進する効果があります(Endocr J. 2013 23138354)。GLP-1には、膵臓に働きかけてインスリン分泌を促進する効果や、血糖を上昇させるホルモンであるグルカゴンの分泌を抑制する効果があります。
また胃から腸への食物の移動を遅らせることで満腹持続効果を発揮し、間接的に食事量を減らし、血糖コントロールには良い作用を示します。
なお大麦(押し麦)などをご飯と一緒に炊く雑穀米はβ-グルカンなど水溶性食物繊維の作用で食後血糖の上昇を緩やかにする効果が期待できます。玄米にする場合は、水分量を通常量でいつも程度によく噛むこと、白米の場合は雑穀などを入れることはおすすめです。
■ウコンやニンニクを混ぜて炊くと…
ご飯を炊く際に特定の食品成分を加えることで、デンプンの消化吸収速度を抑え血糖値上昇を緩和できる可能性が指摘されています。例えば、スパイス類ではウコン(ターメリック)を炊飯時に加えることで、デンプンの消化率が低下することが報告されています。ウコンを加えたご飯は通常のご飯に比べて急速消化デンプン(RDS)の割合が有意に低下し(41.5% vs 57.6%)、ゆっくり消化されるデンプン(SDS)や消化されず残るレジスタントスターチ(RS)の割合が増加しました。これによりご飯がブドウ糖に変換されにくくなります。
同様にニンニク粉末を加えた場合も消化性の低下が認められ、これらの香辛料の添加は米デンプンの酵素消化を阻害し食後血糖応答を抑制しうる素材と考えられます(Transactions on Science and Technology 2021)。
■サフランにも血糖上昇抑制効果
ウコンと一緒にお米を炊くと黄色いご飯になりますが、同じく炊飯すると黄色いご飯が出来上がり、スペイン料理のパエリアなどに使われるサフランもまた、血糖上昇抑制効果があります。サフランにはクロシン、クロセチン、サフラナールといった生理活性成分が含まれ、古くから抗糖尿病作用が注目されています(Sci Rep. 2016 27122001)。
クロシンはサフランに含まれる赤色の水溶性カロテノイドで、動物実験で血糖降下や脂質低下効果が報告されています(Phytother Res. 2013 22948795)。サフランに含まれるフラボノイド類やテルペン類には、小腸のα-グルコシダーゼを阻害する作用が認められ、デンプン分解を阻害します(Front Nutr. 2022 36583211)。
クルクミン同様にポリフェノール含有量の高いお茶と一緒にご飯を炊くと、米の構造が安定化し、容易に消化されにくくする効果があることもわかっています。(Food Funct. 2020 33094308)。
また油を添加して米を炊くことも有効です。油脂がデンプンを包み込んで消化を遅らせる効果があります。特にココナッツオイルやギー(澄ましバター)などを用いた報告では、炊飯時に少量の油を加えることで米のデンプンと脂質が複合体を形成し、消化されにくいデンプンが増えることが示唆されています(J Food Sci. 2015 26352188)。
■「油を加えて炊飯」や炒飯も有効
例えば、米に対し数%のココナッツオイルを加えて炊いた後に冷却する調理法では、通常の炊飯に比べレジスタントスターチが大幅に増加し、結果として吸収されるカロリーや血糖上昇が低減することが報告されています。実験的な検討では、ギーバターを用いて白米や赤米を炊飯した場合、消化速度が遅く、血糖応答が穏やかになる傾向が認められました(J Food Sci. 2015 26352188)。
特に調理の工程で油を加えるタイミングによって効果に差があり、米を煮る段階で油を加える、もしくは生米を油で炒めてから炊くピラフ調理では食後血糖値の上昇を抑えレジスタントスターチ量を増やす効果が期待できるとされています。
同様に、油でご飯を炒めるチャーハンはカロリーが高そうで不健康なイメージが伴いますが、血糖を安定させるという意味では白米よりも血糖は安定します。米を油と一緒に加熱すると、米中の直鎖デンプン(アミロース)と油脂が結合してアミロース―リピド複合体(耐性デンプンの一種)が形成されます。この複合体はデンプン分解酵素によって分解されにくく、小腸での消化が遅延します。
さらにチャーハンでは米粒表面が油でコーティングされるため、酵素がデンプンにアクセスしにくくなり、結果として消化速度が低下します(Crit Rev Food Sci Nutr. 2022 33499662)。
これにより油で炒めた米は、通常の炊飯米より消化がゆっくりでGIが低いことが報告されています(Foods. 2023 37835312)。

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石黒 成治(いしぐろ・せいじ)

消化器外科医 ヘルスコーチ

1973年生まれ。1997年名古屋大学医学部卒。国立がん研究センター中央病院(当時)で大腸がん外科治療のトレーニングを受け、名古屋大学医学部附属病院、愛知県がんセンター中央病院、愛知医科大学病院に勤務。現在は予防医療を目的とした健康スクールを主宰。Dr IshiguroのYouTubeチャンネルは登録者数24万人超。著書に『医師がすすめる 太らず病気にならない 毎日ルーティン』(KADOKAWA)ほかがある。

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(消化器外科医 ヘルスコーチ 石黒 成治)
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