血糖値が高くなると、主食の前にサラダを食べることを勧められる。消化器外科医の石黒成治さんは「いわゆる“ベジファースト”はやはり有効。
だが、サラダなどを作る余裕がないときもあるので、蒸し野菜の冷凍など“食事スターター”を用意しておくとよい」という――。
※本稿は、石黒成治『糖質リスク 自覚なき「食後高血糖」が万病を招く』(SB新書)の一部を再編集したものです。
■炭水化物を食べる順番で大きい違い
血糖値を安定させるためには、何をどの程度食べるかは重要です。しかし、それと同じぐらいどの食品をどの順番で食べるかも重要です。
メトホルミンという糖尿病薬で治療を受けている患者(平均HbA1cは6.5%)に行った研究で、炭水化物の摂取タイミングを変えることによって血糖値がどう変わるかを観察しました(Diabetes Care. 2015 26106234)。
食事順序はまず炭水化物(チャバタパンとオレンジジュース)を食べて、15分経って次にたんぱく質(皮なしの焼き鶏胸肉)と野菜(低脂肪イタリアンドレッシングのレタスとトマトのサラダ、バターを添えた蒸しブロッコリー)を食べます。そして、1週間後食べる順番を逆にして、たんぱく質と野菜を食べてから炭水化物を食べます。
それぞれ食後30分、60分、120分で採血検査を行ったところ、先にたんぱく質と野菜を摂取した方がどの時間帯でも血糖値を低く抑えることができました。食事開始から120分までの血糖値をグラフに書き、その面積を計算すると(iAUC0–120)炭水化物を後に摂取する方が、73%も低いという結果でした。この研究では同時にインスリン値も測定されていますが、同じく炭水化物を後に摂取する方がインスリン分泌量を低く抑えることができ、iAUC0–120は48%低い結果でした。
この血糖反応の違いの要因は主に食物繊維の働きおよびホルモン反応の違いによります。
■食事スターターを用意しておく
血糖コントロールを意識した食事を始める際、まず口にするメニューとしてサラダや蒸し野菜は理想的ですが、毎食用意するのは大変です。
そこで、手軽に保存できる「食事スターター」をいくつか用意しておくと便利です。そうすれば、洗ってカットしたレタスや刻みキャベツなどを用意するだけですぐにサラダとして食べられます。このようなスターターを準備しておくと、心理的な負担が軽減され、毎日の血糖コントロールをより簡単に、そして継続しやすくなります。
■食物繊維の多い野菜をストック
A)調理野菜、調理きのこの冷蔵保存
ブロッコリー、カブ、ニンジン、ナスなど野菜は多めに蒸しておいて冷蔵庫で保存します。あまり冷凍野菜は使用したくはないですが、食べないよりはましだと考えて活用します。私は電子レンジなどで解凍せずに、流水で解凍するか、冷蔵庫に入れておいて自然解凍させるようにしています。同じく食物繊維豊富なキノコ類もオリーブオイルなどで炒めて冷蔵庫に保存しておくと、取り出して野菜とともに摂取するだけでスターターになります。
生野菜でなくても、酢づけやぬか漬けなどの発酵野菜もスターターとしておすすめです。ぬか漬けは普段からやっている人は問題ないですが、かなりの手間なので無理はせずに。市販のぬか漬けは添加物が多いためおすすめはしません。刻んだニンジンやタマネギ、キュウリ、ピーマン、パプリカを酢に漬けておく酢漬けを多めに作っておくことはおすすめです。
これら冷凍冷蔵食品・漬物野菜は必要な分だけ使えるので毎日の継続に向いています。
あまりに微量の野菜や繊維では効果が限定的です。また食物繊維は摂取後すぐに糖質を摂るのではなく、十分に水溶性食物繊維が胃の中で抽出されてくるまで時間を空けて摂取するようにしてください。
■素焼きのナッツを食前に一握り分
B)ナッツ
食事の最初に必ずしも野菜を食べる必要はなく、食物繊維、たんぱく質、脂質が豊富なナッツも有効です。アーモンドやクルミなどのナッツを食前に一握り食べることで、血糖値の急上昇を抑える効果が期待できます。研究によると、約20g(一握り)のアーモンドを食前30分に摂取するだけでも、血糖値とインスリンの上昇を抑制できると報告されています(Eur J Clin Nutr. 2023 36732571)。ナッツを選ぶ際は、新鮮な生ナッツか、素焼きのものを選びましょう。塩味や油で炒めたものは避けてください。
■水煮や缶詰の豆類を常備する
C)豆類(大豆製品、ミックスビーンズ)
豆類は「畑の肉」と呼ばれるほど栄養豊富で、糖質が少なく食物繊維とたんぱく質を同時に摂れる優秀な低GI食品です。食事の最初に蒸し大豆やひよこ豆(水煮パックや缶詰)をつまんだり、枝豆を一握り食べたりするのも良いスターターになります。特に枝豆は冷凍で売られているものを流水で解凍するだけで食べられ、食物繊維とたんぱく質が豊富で血糖値上昇を緩やかにします。市販のミックスビーンズ(豆の水煮パウチ)もそのままサラダ感覚で食べられるため便利です。
■納豆はご飯にかけずそのまま
さらに納豆も優秀な発酵大豆食品です。
ご飯にかけて一緒に食べるのではなくて、納豆だけ先に食べるようにすれば、後から摂る糖質の吸収を穏やかにする効果が期待できます。もちろん糖質の入った市販のタレを使用せずに、自宅の醤油や酢、好みでオリーブオイルを入れて食べるとよりよいスターターになります。大豆製品は比較的日持ちするものが多く(蒸し大豆のレトルトや豆腐、納豆のパックなど)日々の食卓に取り入れやすいスターター食品です。
■カロリーが低いこんにゃくも活用
D)こんにゃく・寒天製品
こんにゃくや寒天(寒天ゼリー)も食物繊維の塊のような食材で、極めて低糖質・低カロリーです。例えば市販の刺身こんにゃくに酢味噌をつけて少量食べれば、ほぼノーカロリーで満腹感を先に得ることができます。こんにゃくに含まれるグルコマンナンという食物繊維は水分を含んで膨らみ、胃腸での糖質吸収を遅らせてくれます。
刺身こんにゃくは真空パックで常温保存できる商品もあり、手軽に利用できます。同様に、ところてんも昔ながらのヘルシーな前菜です。酢醤油や黒酢などをかけて食べると風味よく、酢の効果も相まって血糖値の上昇を抑制します。寒天そのものも乾物で長期保存できますので、粉寒天でコーヒー寒天や野菜ジュース寒天を作り置きしておき、食事前に少し食べるといった工夫もできます。
こんにゃく・寒天はゼロに近いカロリーで食物繊維を補給できるため、無理なく継続しやすいスターター食材です。
■糖の吸収を緩やかにする海藻
E)海藻類(乾物・酢漬け)
海藻は水溶性食物繊維が豊富で低糖質な優秀食材です。
乾燥わかめや干しひじきなどは常温保存でき、水で戻すだけで使えます。戻したわかめをポン酢で和えた酢の物や、市販のもずく酢・めかぶ酢は少量でも食物繊維と酢酸を同時に摂れるためおすすめです。コンブ・ワカメ・ヒジキなど褐藻類の細胞壁多糖であるアルギン酸は糖の吸収を緩やかにし、血糖値上昇を抑えてくれます(Int J Food SciNutr. 2016 27352777)。海藻の加工品は日持ちがよく手軽に取り入れやすいため、常備して積極的に活用してください。
外食する場合、お店にサラダなどの適切なスターターがない場合もあります。そのときは自宅で外出前にブロッコリーなどを食べておいたり、ナッツを用意したりしておくなどの対策も立てられます。

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石黒 成治(いしぐろ・せいじ)

消化器外科医 ヘルスコーチ

1973年生まれ。1997年名古屋大学医学部卒。国立がん研究センター中央病院(当時)で大腸がん外科治療のトレーニングを受け、名古屋大学医学部附属病院、愛知県がんセンター中央病院、愛知医科大学病院に勤務。現在は予防医療を目的とした健康スクールを主宰。Dr IshiguroのYouTubeチャンネルは登録者数24万人超。著書に『医師がすすめる 太らず病気にならない 毎日ルーティン』(KADOKAWA)ほかがある。


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(消化器外科医 ヘルスコーチ 石黒 成治)
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