※本稿は、石黒成治『糖質リスク 自覚なき「食後高血糖」が万病を招く』(SB新書)の一部を再編集したものです。
■糖質の過剰摂取はなぜ危険なのか
糖質がリスクである。このイメージは、現代では非常に認知されているのではないかと思います。糖質の過剰摂取は糖尿病や肥満につながります。そして糖尿病および肥満は心臓病や脳卒中、腎臓病、認知症、がんのリスクを上げることは周知の事実である。だからこそ糖質を摂取することは控えるべきだ、糖質制限をすることが健康につながるという考え方は、広く一般に受け入れられています。しかし本質的な糖質のリスクというものを理解している人は少ないのが現状です。
どうして糖質が健康のリスクとなるのか?
糖質を摂取すると、血液の中でブドウ糖濃度が上昇します。このブドウ糖の濃度は体内では一定の値にするようにホルモンの働きによってコントロールされています。しかしこのコントロールは年齢を重ねるにつれて、その能力が低下していきます。糖質摂取量が多く、頻回の人は例え20代、30代であっても血糖値をコントロールする能力が失われていることも珍しくありません。
■甘いおやつは、食事の直後に食べる
元も子もないことを言えば、甘いデザートを摂らない方が血糖値は最もコントロールしやすくなります。
現実的な第一の解決策として、どうしても甘い物を食べるなら、単独ではなく食事と一緒に「デザートとして」食べてください。本来、食後のデザートは糖質をただ追加するだけなので、通常はおすすめしていません。しかし逆説的ですが、どうしても食べるなら、先に食物繊維・たんぱく質・脂質を胃に入れておき、最後にケーキや和菓子を少量にとどめましょう。
デザートを食べたいなと思う場合は主食(ご飯やパン)を控えてください。これが最低限のルールです。そして食べ終えたらすぐに動く、ここは「必死になんとかする」パートです。外食なら店を出てから10~15分の早歩きや階段の上り下り、自宅なら洗い物・片づけ・掃除など、できることをその場で積み上げて、食後の血糖ピークを下げにいきましょう。座ってしまうと台無しです。
「食べたら、立ち上がる→歩く→こまめに体を使う」。
■ケーキより果物の方が「まだマシ」
2つ目の対策は、おやつに果物を選ぶ方法です。果物には砂糖(ショ糖)や果糖などの糖質も含まれますが、その代わりにポリフェノールや食物繊維が豊富なので、市販のケーキやクッキーに比べれば血糖値への影響が「まだマシ」なおやつと言えます。
ポリフェノールには糖質の消化・吸収を穏やかにする作用や抗酸化作用があり(Nutrients. 2016 26742071)、果実に含まれる色素成分(例えばベリー類のアントシアニンなど)が食後血糖の急上昇を抑える一因と考えられています。実際、ベリー類をパンなど炭水化物主体の食品と一緒に摂取すると、同じ炭水化物量でも食後のインスリン分泌が抑えられ、血糖応答が改善したという報告があります(J Nutr. 2013 23365108)。
果物は生のまま適量を食べることが大切です。ジュースや市販のカットフルーツは避けてください。カットフルーツは日持ちをさせるために消毒処理が行われることが多く、ビタミンやポリフェノールの一部が損なわれる可能性があるためです。さらにジュースでは食物繊維が減り、糖の吸収が速くなってしまいます。
なお、果物はできれば食後ではなく単独のおやつとして摂りましょう。
■ナッツ、チーズは間食におすすめ
3つ目の対策は、そもそもおやつを低糖質のものに変えることです。つまり、最初から血糖値が上がりにくいおやつを選ぶようにしましょう。アーモンドやクルミなどの糖質をほとんど含まない食品であれば血糖値への影響はごく小さいため、おやつとして取り入れやすいです(Int J Environ Res Public Health . 2021 34682735)。チーズやゆで卵なども優れたおやつと言えるでしょう。
このように、たんぱく質や脂質を主体としたおやつは、炭水化物を主体としたおやつよりも血糖値を上げにくいため、安心して摂取できます。市販の高たんぱく・低糖質スナックなども販売されていますが、加工食品であるため、添加物が多いものもあります。そのため、成分をよく確認することが重要です。手作りの低糖質スイーツ(例:寒天ゼリーやプリンなど)であれば、市販の商品よりも砂糖含有量を抑えられ、甘い物を楽しみながら血糖コントロールすることも可能です。
■カカオは糖の消化・吸収を緩やかに
その他、血糖値が上がりにくいおやつの例としてよく挙げられるのが、高カカオチョコレート(ダークチョコレート、カカオ70%以上)です。ダークチョコレートに豊富なポリフェノールであるカカオフラバノールは、それ自身が炎症を抑える作用を持つと同時に、小腸における糖の消化・吸収を部分的に阻害します。
また、カカオフラバノールは大腸まで届き、腸内細菌によって代謝されます。その際に短鎖脂肪酸が増加し、これにより肝臓や筋肉の糖代謝が改善されます。同時に善玉菌(ビフィズス菌、乳酸菌など)も増え、腸内環境を介した耐糖能改善効果も期待できます(Nutrients. 2020 32605083)。
25gの特別に調整された高ポリフェノールチョコレート(成分的には100%カカオに近い)と50gのブドウ糖を服用した健康成人の血糖反応を見てみると、50gブドウ糖単独と比較してピークの血糖値に大きな変化はありませんでしたが、120分間全体のAUC(曲線下面積)は低く、ポリフェノールが糖質をより早く処理する能力を持つことが示されました(Nutr Metab Insights. 2022 35153489)。もちろん、市販のダークチョコレートよりも、ステビアやラカンカなど砂糖を使わずに手作りのダークチョコレートにした方が、血糖コントロール効果はより高くなります(Nutr Metab Insights. 2022 35153489)。
市販の商品では、ケトバー(糖質をほぼ含まず、ナッツ・ココナッツオイル・プロテインなどを主体に作られている低糖質バー)や亜麻仁チップス(食物繊維とオメガ3脂肪酸が豊富な亜麻仁で作ったスナック)なども血糖コントロールを意識したスナックとして注目されていますが、添加されている成分をよく確認して選ぶことが重要です。
以上のように、おやつの内容や食べ方を工夫することで、甘いおやつでさえも完全に我慢しなくても、血糖値の急上昇を緩やかに抑えることが可能です。
■食べ方を工夫して将来の健康を守る
このように、新書『糖質リスク』の中で紹介している様々な実践方法を日常生活に適宜取り入れながら、極端な血糖スパイクを引き起こさないように自らの血管を守ってください。ほんのわずかな意識と行動の変化であっても、これまで知らず知らずのうちに生じていた血糖スパイクの高さが低くなったり、その頻度が減ったりすることは、5年、10年といった長期的な視点で見れば、血管の健康度において計り知れない大きな違いとなって現れることでしょう。
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石黒 成治(いしぐろ・せいじ)
消化器外科医 ヘルスコーチ
1973年生まれ。1997年名古屋大学医学部卒。
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(消化器外科医 ヘルスコーチ 石黒 成治)

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