※本稿は、長谷川智也『中学受験で後悔したこと 失敗しない「頭・時間・お金」の使い方』(講談社)の一部を抜粋したものです。
■全国トップレベルだったわが子が学年最下位に
「息子は某御三家の高校2年生。放任系の学校だったためか、親である私たちも合格した安堵で目を離したためか、入学後は全く勉強しなくなり、今はすっかり学年最下位グループに定着してしまいました。大学受験どころか、進級が危ういという状況です。中学受験の時は、全国模試でもトップレベルだったのに、どうしてこんなことになったのか……」(Kさん)
現在、中高一貫校は大きく3つのタイプ、[1]自由放任系[2]規律・お世話焼き系[3]バランス系([1]と[2]の中間)に分かれます。
偏差値が同じでも、タイプが全く異なることはよくあることです(タイプについてより詳しく知りたい場合は前著『中学受験 自走モードにするために親ができること』参照)。
例えば関東で御三家といわれるような学校(開成、麻布、女子学院、桜蔭、フェリスなど)や、関西の灘、甲陽、神戸女学院、東大寺学園などは、いわゆる「自由放任系」といわれています。海城、浅野、聖光学院、豊島岡、洗足のような「お世話焼き系」の学校とは、かなりやり方に違いがあります。
「放任系」の特徴は、カリキュラムがオリジナルプリントである率が高く、小テストなどがない、もしくはあっても追試まではない、しかし進度は速く、面談なども少ない(または一切ない)などがあります。概してフォローが少なく、良くも悪くも生徒を「大人扱い」します。もちろん、あの激戦を突破してきたのですから、当然それだけのポテンシャルを期待されているし、それで何十年もうまくいってきた歴史があるのです。
■「放任系」「管理系」共通の落とし穴
しかし最近の子は、頑張って入った学校が放任系だったがゆえに不具合を起こすパターンが多くなっているのも事実です。
ちなみによく聞く、
「学校が超放任系で、全く勉強しなくなってしまった」
「学校がバキバキ管理系で、不登校気味になってしまった」
という二つの悩みは相反するようですが、この根っこにある要因は同じだ、と感じます。それは、親に「子どもの自主性」を上手に育てる視点がないから起こる、ということ。中学受験時を含めて、子どもの人生にあれやこれや親が関わりすぎていることによります。
あえて過激なことを申し上げますが、中学受験で重課金(塾などで多額のお金を使ってしまう)をしたあげく、親の世話焼きで受験勉強を進めて放任系名門校に行くというパターンを、僕は最も危惧し、最大の愚行だと感じています。憧れの名門校を一心不乱に目指すのは良いですが、入学してから、さらには社会人になってから後悔しないように、悲惨な未来の可能性をここでお話ししておきたいと思います。
■中学受験が「幼児教育化」している
このネット社会では、どういう塾に行き、どういう順序を踏めば名門校に行きやすいかが、情報としては出ています。誰でも少し調べればわかるので、熱心な親御さんほどそれを調べては、我が子に実行していきます。
中には、子ども4人を東大理三に合格させた佐藤亮子さん(愛称・佐藤ママ)の圧倒的な物量作戦&効率化のノウハウに学び、塾のテキストや問題集をすべてコピーし、デカいノートに貼っている方もおられます。子どもがつまずいた問題をすべて集積し、進捗をエクセルで管理し……などなど、手をつくして我が子の管理をとことんしています。
このような学習スタイル自体は決して悪いことのようには思えません。
ですが、子どもに失敗させての学びがなく、自分で計画を組んで勉強をするという自主性を育めません。さらに、子どもにとって受験が自分ごとにならないままです。
言い方を変えれば、中学受験が「幼児教育」的になってしまっているのです。
■高学年になっても「子離れ」できない親
小さなころの子どもはかわいいもの。つまずきそうなら先に石を取り除いてしまうことも仕方がない部分はあるでしょう。
しかし小4を過ぎたなら、受験の必要性を話せば(なんとなくでしょうが)理解できます。小6の受験直前期には、たいていの子がさすがに「受かりたい」と自分で思うようになります(もしならなければ、本人がまだそういう段階であった、ということです)。
もちろん、子どもはまだ10年そこそこしか生きていないので、判断やビジョンも未熟です。それでも、本人なりにいろいろ意見があり、本当は「こうしたい」「ああしたい」があるはずです。
しかし「幼児教育化」しているご家庭ほど、子どもの意見を無視しています。親への反対を一切許さず、子どもの声にも聞く耳を持ちません。子どもは何を言っても聞いてもらえず、フラストレーションが溜まり、それが高じて、ささやかな反抗として受験勉強をサボっている、という事態に陥りやすくなります。
こうなると当然成績は上がりませんし、親もお金をかけているわりには成果が出ず、誰も得をしない状況になってしまいます。
■失敗への耐性が最大のプレゼントになる
僕はいろいろな親子関係を見てきて、子どもにはしっかり失敗させて、失敗への耐性を10代のうちにつけてあげるのが、親としての最大のプレゼントになる、という確信を持っています。
むしろ失敗の数が多ければ多いほど、経験値によって人生の正解に近づいていく世の中です。ですから、あらゆるトライ&エラーを、10代のうちにこそ経験させてあげるべきなのですが、そうはなっていないのが今の中学受験の風潮であり、その先にある大学受験の流れです。
親も、子離れを意識して実践しないといけない時代になったともいえます。残念ながら子離れが全然できない、幼稚な親が増えているのも事実だと思います。
ネットで手に入る情報を集め、最良のカリキュラムを手に入れ、良い塾、良い学校に入る、というのはいいでしょう。しかし最終的には、「子どもが自分で選び、できるようにする」というのが、受験という関門を超えた先にある、子育ての最終目標のように思います。
■「受験で無双した子」が社会に出ると…
失敗や挫折、葛藤がないまま「最短コース、最大効率で育った子」は、一番人生に挫折しやすいように感じます。中学受験界の一例でいえば、「フォトン→サピックス→御三家&鉄緑会→東大や海外大」という、ある種の超王道コースを地でいくような子です。
このパターンでうまくいった子は、一見順調に思えるでしょう。中学受験、大学受験と無双状態になることも多いです。
これからの時代は、高度情報化時代であり、今までの職業観や人生観も崩れ去っていきます。人類史上最も激変する社会の中で、「これが好きだ」「自分はこういう人間だ(キャラだ)」という軸が自分の中にあるかないかが、ものすごく人生を左右していきます。
そのうえでさらに鍛えられた知性があれば、社会がどうなろうと人生は盤石になることでしょう。
しかし、こうした自分軸や知性は、たくさんの問題を最大効率化して対応してきた子にはなかなか芽生えません。たとえ芽生えたとしても非常に弱いものであり、せっかくの高い学力も学歴も、本人の人生を幸せにはしてくれないでしょう。
■「最短コース、最大効率で育った子」の末路
さて、この背景をお伝えしたうえで、学校選びの話に戻りましょう。
「最短コース、最大効率で育った子」が、まず前段階として、放任型の名門校に行ったとします。すると学校は入学時から「親は手を離してください」と言ってきます。親も学習内容が難しくなって小学校時代のようなフォローはできませんから、いきなり手を離してしまうご家庭も多いです。
こうなると、「強制されないとできない」という姿勢がしみついてしまっている子ほど、本当に勉強をしなくなってしまいます。とんでもなくサボる、定期テストも小テストもノー勉強で受ける、宿題も課題も一切しない、などの事態が起きます。
また今はスマホやゲームなど、中毒になりやすいアイテムはいくらでもありますから、事態も深刻になることが多いでしょう。
学校選びにおいて、放任系が良いのか、お世話焼き系が良いのか、我が子に合うタイプを見極めて、賢くチョイスしてほしいと思います。しかし、どんなに合った学校を選んでも、親が子離れの意識を持てないと、結局お子さんは良い方向へ導かれないでしょう。
中学受験への熱狂が高まるほどに、光と影の、“影”の部分が濃くなっています。親御さんは闇に取り込まれないように、今一度、長い目で見て、お子さんの未来を考えていただければと思います。
■放任系も管理系も過ごし方次第
放任系名門校に入って後悔している方も、お世話焼き系・管理系の学校に入って後悔している方もいらっしゃいます。しかし、どちらに入学しても、勉強をしなくてはならないことに変わりありません。
どのくらい勉強すれば良いかというと、大学受験までのカリキュラムにも通じる僕の視点では、
●中学の英語・数学をはじめとする超基本は、サボってはいけない
●逆に計算が速く、そこそこ読書量があるなら、小6時の半分以下の勉強量でOK
だと考えます。
ただし、中学受験が終わって間もないのに、休息も与えず、すぐに勉強勉強! ではさすがに息が切れてしまいますのでご注意を。中学以降、進学校でのおすすめの過ごし方は次の通りです。
(1)遊びも部活もする中で、定期テストの勉強はそこそこやる
(2)テストの2週間前か1週間前から頑張って「7割程度」の正解を目指す(最低5割くらいあればOKとする)
(3)サボってしまった科目や授業中に寝てしまった科目があるなら、友人に助けを求める練習もする
このバランスのうえで、最終的には「高3の大学入学共通テストにおいて8割前後の学力」に、到達していることがポイントです。
■大学受験で挽回するハードルは上がっている
先ほどの3点が達成されていれば、最終学年の1年間だけでも、このレベルに達することは可能です。
といいつつ、このレベルに到達するのは決して甘くありません。昔の大学入試センター試験時代とは、要求される能力が大幅に様変わりしているからです。全教科で読む量が増え、英語は長文&リスニングのみ、資料や図表の分析(国語や英語でも)ができなくてはなりません。
昔なら記憶事項や暗記しまくりで、半年くらいあればなんとか8割くらいはいったと思います。しかし今の形式では、ちょっと気合を入れたくらいでは、1年そこそこではなかなか挽回が難しいな、というのが僕の近年の大学受験指導の実感でもあります。
どの学校に行ったとしても、一朝一夕には身につかない長期的な能力を、できれば高2の後半までに育てておくこと。それを第1の目標とするべきです。努力している子は知性もどんどん伸びる時期でもありますので、参考にしていただければ幸いです。
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長谷川 智也(はせがわ・ともなり)
プロ家庭教師
1980年兵庫県明石市出身。高卒の両親のもとに育つもハードな中学受験を経験。白陵中学校・高等学校を経て、東京大学現役合格。卒業後、大手塾に勤務、人気講師となる。2009年独立してフリーランスの「プロ家庭教師」に。既存の固定観念にしばられない、生徒個人を見つめた指導で数々の実績を上げる。独自のプログラム「究極の受験セカンドオピニオン・スーパーコンサル」は年間300件を超える申し込みが殺到する。甲冑メタルバンド「武士メタルAllegiance Reign」のベーシストとしても活動中。
著書に『中学受験 論述でおぼえる最強の社会』『中学受験 論述でおぼえる最強の理科』(エール出版社)、『中学受験 自走モードにするために親ができること』『自考モードにする 中高6年間の過ごし方』『中学受験 奇跡を引き出す合格法則』(講談社)などがある。
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(プロ家庭教師 長谷川 智也)

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